エレクトロニクス工作室


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No.156 ワイドバンドアンプ

1.はじめに
ワイドバンドアンプは、測定の補助などに良く使います。周波数カウンタの入力レベルが低ければ高くできますし、SGの出力が低ければ高くできます。このような用途にはMMICが便利で、入力と出力に多少のアッテネータを入れてレベルの調整と安定化をします。
MMICの周波数は1GHz程度など当たり前で、数GHz程度までの製品が安く入手できます。ところが、逆に低い周波数ではゲインが下がり、ちょっと使い難い設定になっています。10MHzで何とかゲインはあってもダラ下がりの下端という感じになり、自作で使いたい周波数がカバーできません。
そこで見つけたのがJK1XKP貝原さんのHP(http://www.saturn.dti.ne.jp/~khr3887/)です。10kHz~250MHzのSGの記事中に、このようなアンプのアイデアがありました。さっそく追試を行い、ワイドバンドアンプとして写真1のようにまとめてみました。

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写真1 このような小型ケースに入れた広帯域のアンプです。

2.XKP式アンプ
使っているMMICはμPC1677Cです。このICのデータシートでは、出力に0.1μH程度のコイルを付けて5Vに接続するようになっています。100MHz以上ならこれで良いのですが、10MHzでのリアクタンスは6Ωと低くなってしまいます。1MHzでは0.6Ωですので、ほとんどショート状態です。これではゲインが下がるのは当然です。そこで、このコイルに流れる電流を測り、電圧を12Vとして抵抗に置き換えるというワザをJK1XKP貝原さんがHPで披露されました。インピーダンスが直流まで安定しますので、出力は低周波まで下げられます。周波数特性はこのコイルではなく、むしろカップリング用コンデンサの影響が出てきます。
つまり、この出力の5ピンはオープンコレクタになっており、本来はコイルを通して5Vを加えるようになっています。それをコイルではなく抵抗を通して12Vを加え、この抵抗で7V下げて5ピンを5Vにするというアイデアです。ここには60mA流れるので110Ωを使えば6.6V下がって5.4Vになります。120Ωなら7.2V下がって4.8Vになります。従って出力のトランジスタに余分な負担はかかりません。ICの最大定格は6Vですので、何があっても超えないようにしなくてはなりません。
なるほどと思いました。確かに等価回路を見ても、その通りです。早速試してみました。今まではコイルのインダクタンスを大きくして写真2のようなものを作っていたのですが、それほど周波数は下げられませんでした。異常発振を起こしそうで、あまり大きなコイルは使えなかったためです。今ひとつの改造と思っていたのですが、これなら一気に解決する上に安定動作が期待できます。他の同じようなMMICにも応用できそうです。

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写真2 過去には、このようなアンプも作っています。

3.回路図
図1のようになります。私が標準的に使っている電源は12.5Vに設定しています。従って110Ωでは5ピンの電圧が5.9Vと最大定格寸前になってしまいます。そこで少し大きめの120Ωを使う事にしました。ここには60mA流れますので、7.2V電圧が下がり、ICには5.3Vが加わる事になります。この時120Ωでは0.43Wが熱になりますので、いつも標準として使っている1/6Wの抵抗では全く使えません。そこで1Wを通販で入手しました。多少大きめになりますが問題はないでしょう。もちろん、巻線型のものではNGで、金属皮膜等を使用します。

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図1 回路図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

入力には3dBのπ型アッテネータを入れています。出力にはT型の2dBのアッテネータを入れています。ここは普通の1/6Wの抵抗です。アッテネータの値は安定に動くように祈りながら、大き過ぎないようにしただけです。値にさしたる根拠はありません。但し120Ωの抵抗が5ピンに入りますので1.6dB減衰させ、またインピーダンスを下げてしまいます。この120Ωはアッテネータの一部とした方が、インピーダンスは50Ωに合うと後々になって気が付きました。まあ他の条件もあるので、そこまで気にする事もないとは思います。なお、製作する上では後述のようにT型が使いやすくなります。μPC1677Cのゲインは22~26dBですので、アッテネータを入れたトータルのゲインとしては15.4~19.4dBとなります。結果としては下限に近い15.5dBになりました。
カップリング用のコンデンサには0.22μFを使っています。さしたる根拠があるわけではなく、手持ちのチップコンデンサで一番大きい値を使っただけです。一応下側の周波数が下げられるようにしています。チップコンデンサとは言え、本来は0.01μF程度をパラにするべきでしょう。10μFでも使えば更に下げられるはずですが、50Ωのアンプですので意味はないと思います。

4.製作
まず図2のように実装図を作成し、シールド付きのユニバーサル基板に組み立てました。グランドは全て部品面のシールド部分にハンダ付けします。図2の緑の点がグランドです。この基板は次のケースへの入れ方を考えて、サイズを決めています。写真3のようにBNCコネクタを仮付けし、この状態で動作チェックをしておきます。

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図2 基板の実装図です。緑の点は部品面のシールド部分にハンダ付けします。出力の5.6ΩはBNCコネクタに直付けしています。(※クリックすると画像が拡大します。)

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写真3 組み立てで、テストをしている様子です。BNCコネクタには仮付けです。

ケースはタカチ電機工業のYM-65を写真4のように穴あけをします。入出力のBNCコネクタ間に基板を入れ、基板のグランド部分をBNCコネクタのアース側に直接ハンダ付けしています。もちろん入出力もハンダ付けします。このために基板のサイズがケースに合うようにしていますが、ヤスリで削って調整は必要でした。基板のハンダ面が万一ケースに接触しても問題が起こらないように、カプトンテープを写真5のように貼って絶縁しています。

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写真4 YM-65の穴あけを行ったところです。

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写真5 少し細目のカプトンテープを用い、ケースと基板間を絶縁しています。

アッテネータはπ型よりもT型の方が扱いやすくなります。写真6のように、抵抗を直接BNCコネクタにハンダ付けできるからです。入力のアッテネータはπ型なのでスズメッキ線で配線しましたが、BNCコネクタに抵抗を2本付けしても良かったと思います。

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写真6 出力側はT型のアッテネータですので、直接コネクタにハンダ付けします。

完成したケース内の様子が写真7です。ICが多少熱を持ちますので、クールスタッフを使ってケースに熱を伝えてみました。ほとんど気分的なものです。

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写真7 完成したケース内の様子です。

5.測定結果
基本的に調整はないのですが、思ったようなゲインと周波数特性がでているかのチェックを行います。その上での調整ですので、コイルを回すとかではなくアッテネータの値の調整になります。実際には写真3の段階でざっと行い、ケースに入れてから最終的に測定するのが良いと思います。
スペアナとTGで周波数特性を測ってみました。測定結果1は0~1000MHzです。500MHz以上から少しずつゲインが下がるようです。測定結果2は0~100MHzで、ほとんどフラットです。測定結果3は0~100kHzですが、さすがに20kHz以下でゲインが下がっています。

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測定結果1 0~1000MHzです。こんな高い周波数まで使うつもりはありませんが、一応測定しておきました。(※クリックすると画像が拡大します。)

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測定結果2 0~100MHzです。ここが重要になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

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測定結果3 0~100kHzです。試しに測っただけですが、低い周波数まで十分に増幅しています。(※クリックすると画像が拡大します。)

低周波で使うつもりはないので、下は1MHz程度で使えれば十分ですし、上は300MHzもあれば十分過ぎです。ゲインのピークは450MHzで16.5dBとなりました。100MHz以下では15.5dBです。ICのスペックからすると低い方ですが、これで十分とします。PCでシールに特性等を印刷して貼り付けています。

6.終わりに
私の自作する周波数にマッチした広帯域アンプができました。他のMMICでも応用できそうです。このようなアイデアを公開されているJK1XKP貝原さんに感謝したいと思います。


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