エレクトロニクス工作室


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No.158 基準レベル発振器

1.はじめに
数年前ですがサイテックの内田さんと話をした時に、レベルメータの校正用に使うような基準レベルがない、という話題がありました。レベルメータですので1Wとか10Wではなく、0dBm以下のようなマイクロワットのレベルの事です。確かに周波数の精度はアマチュアレベルでも「ほぼ」完璧に近いところまでに向上しています。GPSDOやルビジウム発振器などの出現により、電波法の規定値など時代の遺物に思えてしまいます。実際に放送局並みの精度を持ったアマチュア局も多いようです。ところが高周波のレベルに関しては、信頼のおける基準が見つかりません。もちろんオシロスコープで波形の電圧を測るような方法もありますが、私のイメージでは0.1dB程度の精度を持つ基準が目的です。オシロスコープでは少し難しいでしょう。
そこで同じ部品を使えば、「ある程度」は同じレベルになるという写真1のような基準レベルを作ってみました。基準と言っても、誤差を保証するものではありません。もちろん公的に通用するはずもありません。しかも、まだまだ試作レベルですので、とても「決定的」と言えるものには全く達していません。

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写真1 試作した基準レベル用発振器です。

2.回路
図1のように、XOの出力を470Ωでプルアップして電流が多く流れるようにし、コンデンサで直流をカットするようにしてみました。抵抗を切り替える事で出力レベルを切換え、LPFで10MHz以上をカットします。切り替える抵抗の値で出力のレベルが変わります。LPF側には51Ωを入れて一応インピーダンスを合わせていますが、アッテネータとしてはかなりいい加減なものです。この程度で十分と思います。

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図1 回路図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

出力は方形波ですので、スプリアスを減らしサイン波に近づけなくてはなりません。スペアナのような選択性のある測定器と、選択性のないメータ等の測定器で差が出ないようにするためです。簡単な1段のLPFですが、測定結果1のように×2と×3がおよそ-30dBcとなりました。目的からすると、高調波はこの程度抑えられれば十分と思います。

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測定結果1 出力のスプリアスです。-30dBc程度とれていますので、高調波が測定レベルに影響する事はありません。(※クリックすると画像が拡大します。)

発振器には秋月電子で入手した写真2のような、金属のケースに入っている10MHzのクリスタルオシレータ(以下XO)を用いました。このXOは3個入手しましたが、どれも0.1dB単位で同じ出力となりました。最初は今後ともに入手しやすいだろうと考え写真3を試しました。ところが、使ってみると基準としたキーサイトのレベル計の表示が振動してしまい、測れない事が解りました。APB-3のスペアナモードで見たところ、測定結果2のようにC/Nが極めて良くないものでした。このような使い道に問題があるとは思っていませんでした。純度が問題となる理由は良く解りません。写真2のXOは測定結果3のように、C/Nに全く問題がないという事ではありませんが、問題無く測れました。そこでこのXOを使う事にしました。もちろんXOのC/Nについては、CPU等のクロックなら問題ありません。製造メーカからすれば、このような想定外の使い方をしてはNGなのでしょう。

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写真2 使用したXOです。

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写真3 使う事ができなかったXOです。

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測定結果2 写真3のXOですが、このような出力でした。(※クリックすると画像が拡大します。)

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測定結果3 写真2もPLCで作られているようですが、まずますの出力です。レベルの基準には使えるようです。(※クリックすると画像が拡大します。)

3.作製
最近、秋月電子で売られるようになった、写真4の基板を用いました。部品面がアースになっていますので、このような用途には都合の良い基板です。もう少し大きいCサイズの基板も入手できるようになりましたので、それでも良いと思います。図2のような実装図を作製してからハンダ付けを開始しました。

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写真4 このような部品面がアースの小型基板を使いました。

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図2 実装図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

XOはハンダ付けで固定せずに、ICソケットを使っています。もちろん機械的、高周波的にはリスクになりますが、色々なXOで試すには好都合です。正方形のも長方形のも、8ピンDIPのICタイプも使う事ができます。但しこの回路では5V仕様ですので、3.3Vの場合はレギュレータICを変えて下さい。出力レベルは当然下がります。
出力には写真5のようなBNCコネクタの変換キットを使い、ユニバーサル基板に合わせています。DC入力にも写真6のような変換キットを使いました。直接ユニバーサル基板に乗せられるものもありますので、それで十分と思います。これらをアルミ板の上に載せ、完成したところが写真1です。

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写真5 出力にはBNCコネクタの変換キットを使っています。

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写真6 DC入力も変換キットを使っています。

4.調整
抵抗やLPFの値によって出力が変化します。5%の抵抗を用いましたので、計算上は最大で1.3dB程度の誤差が出ます。LPFのCやLの誤差もありますが、一応通過帯域ですので、抵抗ほどの影響はないと思います。出力は実測値でH側が-2.45dBm、L側が-14.1dBmでした。これは校正済の信頼できる測定器で確認したものです。もちろん、それを解消するのが最初の目的ですので、これでは作った意味がありません。しかし、最終的に行き着く先は今のところこれしかありません。今のままでは自己矛盾してしまいますので、今後も試行錯誤を行い進化させるつもりです。
蛇足ですが、一般的には「校正」ですが、電波法的には「較正」です。私は使い分けをせずに校正を使っています。

5.おわりに
この発振器だけでは、ほとんど使い道がないと思います。その通りなのですが、次の作品への布石という意味を持っています。実はこの先に作ろうとしている、マイクロワットメータの基準にしようという考えがあります。この先に大活躍する事になるでしょうし、このままで終わらせるつもりもありません。まだ試作レベルで、本来はXOを交換しても常に安定して同じレベルを出力させたいところです。
そのような意味では10MHzだけでは不十分で、1,3,10,30,100MHzなどで基準を作っておくべきと思います。それではSGを作った方が早いという事になります。ここが難しいところです。


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