Onlineとーきんぐ
No.116 「SSTVミーティングと筑波宇宙センターの見学」
3月14日、15日の両日、茨城県の筑波山(877m)のロープウェイ・つつじヶ丘駅に近い筑波山京成ホテル(つくば市筑波1番地)で「1エリアSSTVミーティング」が開催されました。このホテルは関東平野を眺望できる立地にあり、電波の飛びが抜群のところとしてアマチュアの間に広く知られています。かつてJAIA(日本アマチュア無線機器工業会)の会合でたびたび訪れたことがあり、友人たちと移動運用に利用したこともあります。最近、大浴場と露天風呂をリニューアルしたと聞いて期待が高まりました。
出かける前の準備としてスカイラインにSAGANTのCM-144Wホイップに14MHzと21MHzの2本のエレメントを付けました。ホイップの全長が約1.5mですから50MHz帯の4分の1になるため1本のアンテナで14/21/50MHzの3バンドに対応します。トランシーバーは10年ほど使い込んだICOM の小型HFトランシーバーIC-706MKIIGMとオートアンテナチューナーAT-180を装備してあります。各バンドのSWRが1.0に近いことを確認して出発!外環自動車道の和光ICから入り、三郷JCTで常磐自動車道に進路をとりました。
筑波山・女体山山頂の眺望(877m)
モービリングが楽しい!
常磐自動車道を走行中に21.200MHz付近を探るとJI1FGX/DU9のコールサインを受信しました。信号は弱く交信できるかどうかぎりぎりの感じです。友人から聞いていた上野さんと気付いて、コールのタイミングを計っていると次第にフェードアウトしてしまいました。残念!上野さんは日本では7MHz帯の移動運用やパケット通信、ファクシミリ通信、1200MHzの自作などでアクティブでしたが、2008年12月1日フィリピンのミンダナオ島へ永住を決意して移住されました。詳しくはQRZ.COMでコールサインを入力すると写真がご覧になれます。
ここでバンドを50MHz帯に変えて50.200MHz前後で山岳移動局の交信を聞きながら走行。千葉県の移動局が遠ざかる方向なのでコールせずに終わる。50.300MHzにダイヤルを回すと強力な信号が入感しました。筑波山からSSTVを運用するJN1VNW江森さんです。交信が終わるのを待ってコールするとすぐに応答があり、RS59/59のレポートを交換、SSTV(スロースキャンTV)を運用中と伺い「会場で会いましょう」とファイナルを送りました。JASTAコンテスト1位、QTC-Jコンテストで3位に入賞の有名なコンテスターです。
この後、1298.××MHz FMモードでCQを出すと筑波山神社付近を走行中のJA1CVFモービルが呼んできました。岡田さんも参加者の一人ですから近くに来ている予感がありました。道路の混雑状況を交わしながらホテルへ。おかげで梅まつりの渋滞が気にならずモービリングを堪能できました。昔は車を連ねて大勢の仲間と遠出したものですが、最近はそうした機会がめっきり少なくなりました。
車に高性能の無線機を搭載してHF帯のアンテナを装備しているのにモービリングの機会が減ったのはなぜでしょうか?サイクル23からサイクル24のはざまにあってハイバンドが静まり返っているのがその主な原因と思われ、いずれHF帯ハイバンドのコンディションが上がるとにぎわいが戻ると期待してモービル局を整備しておきたいと思います。
関東のSSTVミーティング
「1エリアSSTVミーティング」は関東のSSTV愛好家が一堂に会して技術交流と親睦を図るのを恒例にしています。参加者の顔ぶれを見ると、JASTA(日本アマチュアSSTV協会)の事務局JA2HYD、JA1XVY、コンテスターのJN1VNW、雑誌のコラムを持つJH1JHN、EMEのJA7ND、移動運用のJA1CJBのようなすごい人のコールサインが並んでいました。
中でもJH1JHN瀬沼さんはレーザーポインターにATV(アマチュア・テレビジョン)の信号を乗せて交信していると珍しい話を披露しました。レーザーポインターは色々なタイプがあり、組立キットも出回っているようです。ただし出力の規制があり取扱に注意が必要です。面白い世界があるものだと感じ入るとともに、探究心が旺盛な方が日本にもおられると知り嬉しくなりました。因みにオーストラリアではLEDによる光通信の報告もあります。
JA7AGL相沢さんはEMEに凝っていて、リニアアンプやアンテナを手作りしていると伺いましたし、JA1EO小林さんから西山さん(JA1OBY、元JMHC神奈川)の消息(09年サイレントキー)がもたらされました。恒例のオークションやお土産交換会、筑波宇宙センター見学の20名のチケットをめぐる抽選会で盛り上がりました。参加者は30名でした。
SSTVミーティング(3月14日)
2人のモービルシャック
ホテルの駐車場に「7388」「8873」「595」の車を見つけました。一目でアマチュア局の車とわかるナンバーです。中でも「7388」のワゴン(トヨタGRANVIA)はフロント・フェンダーにHFマルチバンド・アンテナを付けたモービル局です。中をのぞくとこじんまりしたデスクに固定局用のトランシーバーとパソコンがセットしてあり、本格的移動運用局と見ました。リアウインドウにJM1VWQ のコールサインを見つけて、参加者名簿からミーティングの幹事、霜田さんの車とわかりました。
主な運用バンドは3.5MHzと7MHz帯 のSSB、SSTVモードとのこと。これからCQ編集部の取材を受けると言うので撮影を遠慮しようと思っていると、「車を見ますか」と誘ってくれましたので、渡りに船と車と自作のアンテナを見せてもらい、お許しをいただいてモービルシャックを撮影しました。移動運用のアンテナは垂直系にこだわっていると言い、ワイヤーアンテナやビームアンテナを使わずに大小の自作ホイップアンテナを使っていると語っていました。
JM1VWQ 霜田さんと自作のモービルアンテナ
固定局並みのモービルシャック(JM1VWQ)
もう一人、顔見知りの関谷さんJI1XBCがモービルシャックを見せると言うのでついて行くと日産バネットバンのリアを開けて5.6GHzのパラボラアンテナ見せてくれました。道路に立てるカーブミラーを改造したもので、ミラーを外して湾曲した形状をパラボラとして利用しています。アイデア次第でなんでも使えるものだと感心しました。5.6GHzの運用は山頂や高台に移動して交信することが多く、はじめにVHF/UHF帯で連絡しながらビームを合わせるのだそうです。パラボラを支える支柱や車への積載についていろいろな工夫を披露いただき、器用さがうかがえました。
JI1XBC 関谷さんとバネットバンに収納したパラボラ
道路用カーブミラーをパラボラアンテナに改造
筑波宇宙センター
翌朝、8時30分ごろ約20台の車を連ねて筑波宇宙センターへ移動しました。ロープウェイつつじヶ丘から登山道を下り、筑波山神社を経由して県道14号、国道125号を走行しました。先頭車両のJA1BBI野口さんの誘導を受けて午前9時45分過ぎに筑波宇宙センターに到着しました。全車両が同一周波数で受信しているため、迷うことなく入場できたのはモービル局の効用でした。
広報・情報棟の広場に巨大なH-IIロケットの実物が展示してあり、大きさに圧倒されました。入場許可証を着用して見学が始まりました。はじめに施設のビデオを見た後、展示室を通り40人乗りの小型バスに乗って施設内の見学に出発しました。[展示フロアガイド]では1975年に打ち上げたN-Iから最新のH-IIBまでの歴代ロケットが1/20サイズで勢ぞろい、本物のロケットエンジンの展示もあり、その大きさに圧倒されました。1977年に打ち上げたひまわり1号の予備機や宇宙飛行士が実験を行う船内実験室など迫力満点でした。
巨大なH-IIロケットの実物が展示(筑波宇宙センター)
[宇宙ステーション試験棟]では、見学通路から船内実験室、船内保管室、船外実験プラットフォーム、船外パレットなどを遠目に見ることができました。宇宙で何かあった時は、この施設で検証して的確な情報を指示できると伺いました。続いて[宇宙飛行士養成棟]に移動し、宇宙飛行士の基礎訓練、健康管理、体力トレーニングなどを行う施設を見学。ここでガイドから「宇宙飛行士にもっとも要求されることはなにか?」と問われました。体力、英会話、技術力などと考えていると、答えは「協調性」とのこと。ガイドからそれ以上の詳しい説明がありませんが、宇宙空間での共同作業がスムーズに運ばなければ長時間の無重力環境に耐えられない、地球への帰還すらおぼつかないのだろうと想像しました。
宇宙ステーション試験棟の内部
[無重力環境試験棟]の大型プールは直径16m、深さ10.5m、実物大の模型を沈めて水中用宇宙服を着た宇宙飛行士が、船外活動に向けた訓練を行う施設です。ここも見学通路から遠目に確認するにとどまりました。[「きぼう」運用管制室]と「ロケット音響体験」は今回の見学ツアーに入っていませんでした。筑波宇宙センターの見学は事前に電話(029-868-2023)で空き状況を確認して所定の申込用紙で予約します。電話受付時間(午前9時30分〜午後5時)、ツアー見学は1日5回、入場料は無料。つくばエクスプレス線「つくば駅」からバス15分。常磐自動車道・桜土浦ICから3.5キロ、約7分。(以上)
本物のロケットエンジン