国内パソコン出荷、2000年度には1千万台、2兆円を突破

パソコンの国内出荷台数は、Windows95が登場した1995年あたりから急増して行く。1994年度に334.9万台、9,249億円(JEITA集計)だったものが、1995年度には570.4万台と500万台の大台を突破、金額ベースでも1兆円を突破し1兆3,916億円となった。さらに、Windows98が発売された1998年度には、753.8万台、1兆6,327億円に、2000年度には、1,210.2万台と1千万台を突破、金額ベースでは2兆円を突破し2兆1,442億円となっている。

2000年に突入するにあたり「2000年問題」が起きると、世界中を騒がせたが、実際には大きなトラブルもなく無事新しい世紀へと移行した。これは、1980年代以前に開発されたプログラムで、そのころまだ少なかったメモリ容量を節約するために、年号を下二桁で表すことにより節約するのが普通だった。このため2000年には下二桁が内部的には00年となり、1900年とみなしてしまい誤作動につながる可能性があった。特に問題となるのは電力関係や、鉄道、航空管制など交通機能の停止、金融関係や医療関連機器の機能停止、ミサイルなどの誤発射まで、民間から軍部まで広範囲にトラブル発生の原因となると予想されたからである。しかし、こうした分野では、事前に対策が打たれたこともあって大きな問題とはならずに済んだ。

Windows XPの発売でパソコンの使い勝手が向上

また、2000年にはWindows2000、Windows Meが発売された。そして2001年にはWindows XPの発売と急速にOSの改良が進み、パソコンのフリーズや異常動作が減ってきた。Windows95やWindows98あたりまでは、パソコンのフリーズや異常動作が時々発生して、その修復との戦いでもあった。まだ、本当の意味でのパソコンの大衆化とは言えなかった。しかし、Windows XPの登場によって大幅に改善されフリーズや異常動作が減ってきた。このあたりからパソコンは特殊な技能や知識が無くても使いこなせるようになって行った。

2000年度にデスクトップパソコンとノートパソコンの台数比が逆転

JEITAの統計によると、2000年度以降パソコンの出荷台数は、安定需要期を迎え1,000万台〜1,200万台で推移しているが、集計投票に参加していないパソコンメーカーの数も多く、実際の国内出荷台数はもう少し多い。さらに、デスクトップパソコンは、マニアがパーツを集めて自作するものも多いので、実数はさらに多いと推定される。しかし、平均単価は1993年度の30万円をピークに、年々低下する傾向にあり1999年度には20万円を切り、2000年度には7万7千円となっている。そして、デスクトップパソコンとノートパソコンの台数割合は2000年度にデスクトップパソコン49%、ノートパソコン51%と逆転し、その後はノートパソコンの割合が年々増して行き2008年度には3対7にまでノートパソコンの割合が増えている。

内部メモリ、外部メモリの大容量化進む

なお、Windowsは、2006年にWindows Vistaが発表され2007年にリリースされた。さらに、2009年にWindows7が発売されている。一方、ドライブはFDD、HDDからDVD対応のマルチドライブ化が進み、メディアの多様化が進んで行った。その中で、FDDは徐々に採用されなくなり、SDカードなどのメモリカードやUSBメモリなど、より小型で持ち運びに便利な外部記憶装置が普及してきた。

これら半導体メモリの大容量化、低価格化のスピードはめざましく、始めは容量も小さく、高価だったものが、わずか数年で大容量化、低価格化が進んで行った。むろん内部メモリの大容量化もめざましく、メモリは数GBとなりHDDは数100GB〜数TB(テラバイト)が普通となってきた。中にはHDDの代わりに高速SSD(Solid State Drive)を採用、起動時間の短縮を図ったモデルも登場してきた。光ディスクもDVDからブルーレイディスクへと大容量化が進んでいる。

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東芝の最新ノートPC。高速SSD(Solid State Drive)を採用したdynabook R631/28D

インターネットの普及がパソコンの利用を一層便利に

パソコンがその能力を発揮するのは、事務処理やゲームばかりではない。外部との情報交換を手軽に行えるようになったインターネットが普及し始めたのが大きい。インターネットでEメールやWebを楽しめるようになったことがパソコンをより便利で身近な存在とした。また、政府も「e-Japan計画」を打ち出しインターネットの普及を目指した。CATV事業者が定額制の高速インターネット接続サービス(ブロードバンド)を開始するとともに、NTTもADSLによるサービスを開始したこともインターネットの普及に貢献した。さらに、2003年ごろからは月額数千円で光回線やCATVにより高速な常時接続サービスが一般向けに始まり、利用者の経済的負担は大いに軽減されたのである。

テレビチューナー搭載も進む

パソコンにテレビチューナーが搭載されてきたことも、パソコンの使い勝手を向上させた。液晶表示の大画面化、高画質化、ワイド化が進むと同時に、テレビチューナーを搭載することでテレビとしても楽しめるようになったことは、住環境の狭い単身者世帯や個室で使用するユーザーにとってはスペースをとらず経済的にも安く済むので人気を呼んだ。2011年7月24日からはアナログ放送から地デジへ移行したのにともない、地デジ対応チューナー搭載モデルが発売されている。

一国の政治を左右する存在となったパソコンとインターネット

インターネットは、先進国はもとより発展途上国でも普及しつつあり、その存在は一国の政治を左右するほどの存在となってきた。中国や中東諸国の民主化の動きはパソコンとインターネットを抜きには考えられない。我が国でも、インターネットを利用した、いわゆるIT企業が急成長している。パソコンが我が国のエレクトロニクス発展に果たした役割は非常に大きく、国の経済までも左右する存在となっていると言っても過言でないだろう。

参考資料:東芝HP、ソニーHP、富士通HP、シャープHP、JEITA・HP、社団法人情報処理学会、NEC・HP、コンピュータ博物館ほか