監視カメラなど広がるビデオカメラ&デジタルカメラの用途

旅行や運動会などを撮影する家庭用ビデオカメラ、デジタルカメラの普及は成熟期に達したものの、様々な用途に特化したカメラの需要はこれからも大きく成長が見込まれている。近年、凶悪な事件が頻発しているが、その際、犯人逮捕に役立っているのが街頭に設置されている監視カメラ。テレビニュースなどで通りやATMに設置された監視カメラに犯人とおぼしき人物が写っている映像が報道されている。万引き被害に悩んでいる書店やスーパーなどの小売業、銀行、駅、ホテル、レストラン、マンションなどの防犯用、さらにはテロなどが心配される空港などあらゆるところに監視カメラが設置されている。成田国際空港や関西国際空港には、より進化した顔認識システム付きの監視カメラが設置されている。この他、新幹線にも監視カメラが設置されるなど交通機関にも設置されるようになってきた。

繁華街の防犯対策として監視カメラを設置

各都道府県の警察では、繁華街の防犯対策として監視カメラを設置している。警視庁では「街頭防犯カメラシステム」と呼ばれる監視カメラを都内の繁華街や人が大勢集まるところに設置している。 新宿区歌舞伎町地区、渋谷区渋谷地区、豊島区池袋地区、台東区上野2丁目地区、港区六本木地区などでは既に運用開始しており、各カメラが撮影した映像は、警察署と警視庁本部に送られている。監視カメラで撮影された映像は、24時間体制でモニターされており、110番通報に基づく事件・事故への対応や客引き、違法露店などの排除に活用されている。さらに、映像はハードディスクなどに録画され、1週間保存される。運用に関しては、個人の肖像権やプライバシー保護など、微妙な人権問題がからんでくるで、国民の権利を不当に侵害しないよう慎重を期すとともに、街頭防犯カメラの設置区域であることを標示板により明示している。

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警視庁の監視カメラ「街頭防犯カメラシステム」(※クリックすると画像が拡大します。)

人が近づけない場所へ監視カメラを設置

防犯用以外では、工場の製造ライン、原子力発電所、ダム、河川、火山などの監視や記録に使用されている。東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故では、放射能のため人が入れないところでも監視カメラが設置され、状況を常に把握できるようにしている。こうした人が近づけない場所へ監視カメラを設置するメリットは大きく、ダム水量監視、危険な道路の監視、火山活動の監視などに監視カメラが利用されている。さらには、スピード違反取締りにも自動速度違反取締装置にカメラが使用されている。また、インターネットなどで画像をリアルタイムに撮影し、公開しているライブカメラがある。国道の混雑や積雪の状況を見ることが出来、ドライブの際には便利なシステムだ。この他、港に設置されているライブカメラもあり、釣りに行く時など波の状態を見ることが出来、出かける前に現地の状況を確認できるので有り難い。

急増する車載カメラ需要

自動車へのカメラ搭載も増えてきた。いわゆる車載カメラ需要は、安全性追求、防犯用として急増している。自動車へのカメラ搭載は車庫入れ、駐車などで後方確認用として採用されたのが始まりだった。さらに、タクシーやトラック業者が交通事故の裁判に証拠として映像が使えるとしてドライブレコーダーを採用していった。交差点での事故原因は、どちらかが信号無視、見落とし、したケースが多く、フロントガラス越しに撮影した映像を常時記録して置き、事故が発生した時刻から遡って録画記録を保存できる仕組みになっている。意外にも車載カメラの威力をまざまざと見せ付けたのは、ロシアに巨大隕石が落下した時に、その様子を克明に映し出した映像がテレビに流れたことだ。車載カメラでフロントガラス越しに隕石が強い光を放ちながら横切っていく様子が映し出されている。ちなみにロシアで車載カメラの採用が増えているのは、広い国土にまばらな人口のため事故発生の際、目撃者がいないことが多く、裁判で相手方の過失を証明する証拠として必要なためと言われている。

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パナソニックのリアビューカメラ

将来は1台の車に4〜10台のカメラを搭載

車載カメラの台数は、1台だけでなく複数台数設置されることが多くなってきた。後方確認だけでなくフロント部の確認のため前方にもカメラを搭載したり、3〜4台のカメラを搭載し、360度映し出したりする車も出てきた。トヨタ自動車では"パノラマビューモニター"により360度映像で確認できるシステムを搭載している。この他、車載カメラとしては、車上荒らし監視などセキュリティ用、ドライバーの運転をアシストする車間距離確認、白線検知、居眠り運転防止、後部座席確認など様々な用途に使われ始め、将来は、1台の車に4〜10台のカメラが搭載されることも予想されている。また、2008年に発売された「スバルレガシー」には、日立と富士重工が共同開発した"新世代ステレオカメラシステム"が搭載され、車間距離や歩行者の確認などで危険な状況になると警報を出したり、ブレーキが自動でかかるなど、交通事故防止を支援する仕組みとなっている。また、自動車メーカーのライン装着以外に市販の車載用カメラも増えており、価格も数千円程度からとリーズナブルになってきており普及は一段と加速しそうだ。

医療用、家電品、ロボットなど多岐に渡るカメラ需要

この他、カメラの用途としては胃カメラや手術用カメラを初めとする医療用、ドアホン用、隠しカメラなど意外な用途にも普及している。医療用では、ソニーとオリンパスが業務・資本提携、今後成長が見込まれる医療事業において協力することになった。オリンパスのレンズ・光学技術と、ソニーのデジタルイメージング技術を組み合わせ、新たな製品を開発するのが狙い。この他、家電品では、エアコン、照明システム、冷蔵庫などにもカメラが搭載されてきた。また、ロボットの目としてカメラが採用されるなどその用途は多岐に渡る。そして、さらに進化する4K、8Kテレビなど映像の高画質化に合わせてカメラのさらなる高画質化が求められてきた。これからもカメラ技術は日本のエレクトロニクス技術発展を担うだけでなく日本経済発展の力強い原動力となるだろう。

参考資料:警視庁HP、トヨタ自動車HP、富士重工HP、日立HP、コニカミノルタホールディングスHP、キヤノンHP、ニコンHP、エプソンHP、富士フイルムHP、カシオ計算機HP、ソニーHP、ソニー歴史資料館、東芝HP、パナソニックHP、シャープHP、JEITA・HP、他