カメラのキーデバイスはイメージセンサー

テレビCMに「インテル入ってる?」と言うパソコン搭載のCPUに関するインテル社のCMがあった。搭載しているCPUによってパソコンの性能が決まってしまうという訳である。それは、ビデオカメラやデジタルカメラにおいてもキーデバイスであるイメージセンサーによって性能が決まってしまうのと似ている。

ビデオカメラやデジタルカメラは、アナログ系の光学技術であるレンズ技術と、デジタル技術である半導体技術の融合であり、とりわけ半導体技術のイメージセンサーによるところが大きい。どんなイメージセンサーを使うかでビデオカメラやデジタルカメラ設計の基本コンセプトが決まってしまう。そして搭載したイメージセンサーの性能を最大限引き出すことの出来るレンズを組み合わせることで優秀なカメラが誕生する。

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ソニーの最新イメージセンサー(ソニーHPから)

撮像管から固体撮像素子へ

映像を電気信号に変換する撮像素子は、テレビ放送の実用化とともに進化してきた。その歴史は、電子管の一種である撮像管からスタートしている。世界初の撮像管は1927年にフィロ・ファーンズワースが開発したイメージディセクタだった。しかし、原理的には証明されたものの感度が低くすぎて使い物にはならなかった。そして、実用的な撮像管として発明されたのがアイコノスコープだった。

1933年にウラジミール・ツヴォルキンが開発に成功したもので、アイコノスコープは約5000ルクスで撮影が可能だった。このアイコノスコープはアメリカでのテレビ放送で活躍することになる。そして、その後開発されたイメージオルシコンに取って代わられるまで10年間ほど使われた。次にアイコノスコープに代わって登場したのがイメージオルシコンである。性能の良さからテレビ放送普及に大きく貢献し、1960年代まで広く使われていった。

テレビ放送が世界的に普及するにつれて、より高感度、高S/N、高解像度で、かつ取り扱いの簡単な撮像管の開発が求められビジコンやプランビコンなどが開発されていった。また、NHKと日立製作所が開発したサチコンは、プランビコンと比較して安価で高性能な撮像管として放送用・業務用ビデオカメラに幅広く採用されるようになって行った。

しかし、電子管の一種であることから、その性能維持や調整に手間がかかるのが欠点だった。テレビ放送用として充分な性能だったものの、やがて普及が始まろうとしていた家庭用ビデオカメラ用としては、価格、操作性、大きさなどにおいて問題が有った。そのため後に登場した固体撮像素子(solid state image sensor)が撮像管に取って代わるようになる。

材料や構造、また電荷の転送方式などによって様々な製品が

そこで今回は、家庭用ビデオカメラやデジタルカメラ、携帯電話等に搭載されている固体撮像素子(イメージセンサー)について、その発展の歴史を見てみたい。固体撮像素子は、半導体製造技術を用いて集積回路化された光電変換素子で、構成する材料や構造、また電荷の転送方式などによって様々な製品がある。

また、画像の読み取り方式によってファクシミリや複写機に使われている棒状のラインイメージセンサーと、ビデオカメラやデジタルカメラに使われているエリアイメージセンサーがある。今回は、二次元の面として読み取り、静止画や動画などを撮影できるエリアイメージセンサーを対象としていきたい。

CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーが主流に

現在、主に使われているイメージセンサーとしてはCCD(電荷結合素子)イメージセンサーや、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサーがある。いずれも光を検出して電荷を発生させるフォトダイオードで構成されているのは同じだが、違いは変換された電荷の転送方式にある。CCDイメージセンサーでは水平CCDと垂直CCDを使って電荷を出力部に転送してから増幅するのに対して、CMOSイメージセンサーではフォトダイオードごとに変換された電荷を増幅して出力する。

CCDイメージセンサーは、1969年にアメリカ電信電話会社ベル研究所のウィラード・ボイルとジョージ・スミスによって発明された。その後、二人は2009年にノーベル物理学賞を受賞している。また、初めてCCDイメージセンサーを製品化したのはフェアチャイルドである。

日進月歩で進んでいるイメージセンサー技術開発

CCDイメージセンサーの名称は、画像を電気信号に変換する際に、受光素子であるフォトダイオードが光から発生した電荷を読み出す為に電荷結合素子 (CCD:charge-coupled device)と呼ばれる回路素子を用いて転送を行う、いわゆるバケツリレー的な動作に由来する。特徴は、他の撮像素子に比べて感度が高く、S/N比に優れていることだ。これは、増幅用のアンプが1つで済むためで、各フォトダイオードで増幅するCMOSイメージセンサーに比べて有利である。

一方、CCDイメージセンサーを動作させるために入力電圧は高いプラス電圧とマイナス電圧を含む複数の電圧を必要とする。そのためCCDの消費電流は比較的高いものになり必要な電力も大きい。同時に数種の電圧を生成するための電源LSIが別途必要になる。このためCMOSセンサーに比べて構造が複雑で、生産コストも高くなりがちだ。しかし、両者とも欠点を克服するための技術開発が日進月歩で進んでおり、一概にどちらかが優れているとも言えない。

CCDイメージセンサーをビデオカメラ用として使うためにはテレビと同期させるのに毎秒30〜60回の露光・転送・読み出しを行う必要がある。インターライン型CCDイメージセンサーは、受光部のフォトダイオードと電荷転送部の垂直転送CCDを一列ごとに交互に配置し、垂直CCD列の端部を水平転送CCDの各素子に接続して全体として櫛形に配置した構造となっている。各転送用CCDは光電変換を行わないように遮光膜で覆ってある。

この他にも垂直転送CCDの各素子で直接光電変換を行うフルフレームトランスファ型や、受光用CCDと転送用CCDを持ち、垂直帰線期間に受光用CCDから転送用CCDに転送を行うフレームトランスファ型もある。フルフレーム型は転送用CCDが不要なため開口率を大きくできるので高感度のものを作りやすい。反面、電荷転送中は受光しないように機械的シャッターが必須となるため動画撮影は難しくなる。

参考資料:JEITA・HP、ソニー歴史資料館、東芝HP、パナソニックHP、シャープHP、Wikipedia他