イメージセンサーはCCDとCMOSどちらが優れているか?

デジタルカメラを購入する場合、どんなイメージセンサーが搭載されているのかをまずチェックする人が多い。カメラメーカーのパンフレットにおいても総画素数1,000万画素、有効画素数800万画素などと画素数の多さと、それにともなう画質の良さをアピールしている。後は、ズーム倍率や本体のサイズ、重さ、デザイン、価格などがチェックポイントとなっている。コンパクトデジタルカメラや携帯電話、スマートホンユーザーの場合は、画素数イコール高画質と判断する傾向がある。一方、デジタル一眼レフやデジタル一眼ユーザーの場合は、画素数だけでなくCCDイメージセンサーなのかCMOSイメージセンサーなのかをチェックする。さらに、イメージセンサーのサイズを重視している。

めまぐるしく発展するイメージセンサー技術の中で、CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサーのどちらが優れているかを決め付けることは難しい。発展の歴史の中でCCDイメージセンサーがリードしたり、CMOSイメージセンサーがリードしたりしており、また用途、価格によって、どちらが適しているかも変わってくる。ひところ、一般的な見方としてCCDイメージセンサーの方が高画質との認識があり、CMOSイメージセンサーは感度が低く、ノイズも多いという認識があった。

技術革新がセンサーの欠点を改良し、長所を伸ばす

しかし、「欠点を改良し、長所を伸ばす」という技術革新は、エレクトロニクス技術者の得意とするところであり、イメージセンサーメーカーは社をあげて取り組んでいった。例えば、CMOSイメージセンサーでは、原理的に画素毎にアンプが有り、バラツキによりノイズが発生しやすい欠点は、A/D変換を新しい技術を開発することで低ノイズ化を実現した。また、裏面照射型CMOSイメージセンサーが開発され、従来型に比べ大幅に低ノイズ化が図られた。

ソニーが高感度、低ノイズの裏面照射型CMOSイメージセンサーを開発

2008年6月、ソニーは従来比約2倍の感度および低ノイズで高画質を実現した裏面照射型CMOSイメージセンサーを新開発したと発表した。民生用のデジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ向けにSN比+8dBを実現した裏面照射型CMOSイメージセンサーを新開発、CMOSイメージセンサーの用途を広げる画期的な技術だった。

従来のCMOSイメージセンサーの画素構造(表面照射型)とは異なり、シリコン基板の裏面側から光を照射することで、約2倍の感度や低ノイズなどの撮像特性を大幅に向上させた。画素サイズ1.75um角、有効画素数500万画素、60フレーム/秒の試作開発に成功した。

これによりCMOSイメージセンサーの低消費電力、高速性といったメリットはそのままに、感度の向上やノイズの低減を実現している。 従来の表面照射型では、受光部(フォトダイオード)を形成した基板表面側の上の配線やトランジスタがオンチップレンズで集光した入射光の妨げになり、画素の小型化や光の入射角変化に問題が有った。裏面照射型は、シリコン基板を反転させた面(裏面側)から光を照射させることで、配線やトランジスタの影響を受けることなく単位画素に入る光の量を増大させるとともに、光の入射角変化に対する感度低下を抑えることが可能になった。しかし課題は、裏面照射型では通常の表面照射型と比較して、その構造や工程に起因したノイズ、暗電流、欠陥画素、混色など、イメージセンサーの画質低下につながり、SN比を低下さることだった。

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表面照射型と裏面照射型の構造比較(ソニーHPから) ※クリックすると画像が拡大します。

裏面照射型に最適化したフォトダイオード構造とオンチップレンズを新たに開発

これを解決したのは、裏面照射型に最適化したフォトダイオード構造とオンチップレンズを新たに開発したことだった。さらに、列並列カラムAD変換技術とデュアルノイズリダクション技術を用いた"Exmor"など、CMOSイメージセンサーの高画質化/高速化技術を開発。新構造の裏面照射型CMOSイメージセンサーの開発に成功したことで、高感度化および低ノイズ化を実現した。また、将来的には配線層の多層化や自由なトランジスタ構成が可能で、より高速化、高ダイナミックレンジ化などへの進化の可能性を秘めている。

世界初の裏面照射型CMOSセンサー搭載デジタルハイビジョン"ハンディカム"発売

そして、2009年2月に世界で初めて裏面照射型CMOSセンサーを採用し、暗所でもノイズの少ない高画質撮影が可能なAVCHD HDDデジタルハイビジョン"ハンディカム"『HDR-XR520V』『HDR-XR500V』の2機種発売した。「裏面照射型構造」を採用したCMOSセンサーを搭載することにより、感度を従来比の約2倍に高め、暗所でもノイズの少ない高画質なハイビジョン撮影を実現するとともに、手ブレ補正の領域を従来比約10倍に拡大することで、歩き撮りなどで撮影する際の手ブレを防ぎ、見やすい映像を撮影できた。静止画モードで最大1,200万画素相当(4:3撮影時)の高精細な静止画記録と、動画撮影中に最大830万画素相当(16:9撮影時)の静止画を同時に記録できた。また、世界初のGPS機能の搭載で映像に位置情報を記録でき、旅行などでの思い出の映像が撮影場所を確認しながら楽しむことができた。また、ビデオカメラ本体に搭載された地図上で現在地の確認なども可能となり、大容量のHDDを内蔵することでハイビジョン映像の長時間記録が可能だった。

参考資料:JEITA・HP、ソニーHP、ソニー歴史資料館、東芝HP、パナソニックHP、シャープHP、Wikipedia他