ソニーが世界初の積層型CMOSイメージセンサー"Exmor RS"開発

デジタルカメラの高画質化、小型化が進むと同時にスマートホンやタブレットなどに搭載されるカメラも高画質化と高機能化・小型化が要求されるようになってきた。ソニーは、裏面照射型CMOSイメージセンサーの開発で先行し、市場をリードしていたが、スマートホンやタブレットに搭載するカメラ用のイメージセンサーでも一歩リードした。2012年8月に、世界初の積層型構造を採用したCMOSイメージセンサー"Exmor RS"(エクスモア アールエス)を商品化し、同年10月から出荷を開始した。商品化したのは、積層型CMOSイメージセンサー"Exmor RS"3モデル、及び各イメージセンサーを採用したイメージングモジュール3モデル。

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積層型CMOSイメージセンサー

"Exmor RS"は、裏面照射型CMOS イメージセンサーの支持基板の代わりに信号処理回路が形成されたチップを用い、その上に裏面照射型画素が形成された画素部分を重ね合わせた独自の「積層型構造」を採用している。撮影時に同一画面内で2種類の露出条件を設定、そこで得た画像に適切な信号処理をすることで、ダイナミックレンジの広い画像を生成し、逆光でも色鮮やかに撮影できる「HDR(ハイダイナミックレンジ)ムービー」機能を搭載している。

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従来の裏面照射型CMOSイメージセンサーの構造図

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積層型CMOSイメージセンサー"Exmor RS"の構造図

積層型構造の採用により高画質化、高機能化、小型化を両立

1/3.06型有効1313万画素の「IMX135」、1/4型有効808万画素の「IMX134」、及びカメラ信号処理機能を内蔵した1/4型有効808万画素の「ISX014」があり、積層型構造の採用により高画質化、高機能化、小型化を両立していた。また、それぞれのイメージセンサーに、オートフォーカス機構付レンズユニットを搭載した小型オートフォーカス・イメージングモジュールも商品化した。イメージングモジュールは、業界最小11.12μm単位画素に最適化した新設計のレンズを採用することで高解像度を実現している。

年々、表示画面の大型化が進むスマートホンに対応可能

スマートホンは年々、表示画面の大型化が進み、カメラを組み込むスペースが限られるようになってきている。このため、高画質ながら高機能化・小型化を実現した"Exmor RS"の登場によって、こうしたニーズに応えられるようになった。ソニーでは、2012年度上期から2013年度上期にかけて生産子会社のソニーセミコンダクタ社長崎テクノロジーセンターで積層型CMOSイメージセンサーの生産能力の増強を目的とした約800億円の設備投資を実施、供給体制を強化した。

総生産能力約60,000枚/月へ供給体制を大幅に増強

これにより、積層型CMOSイメージセンサーのウェーハ加工用の新規生産設備、ならびにCMOSイメージセンサーが生産できるウェーハライン増強を図った。その結果、ソニーのCCDとCMOSイメージセンサーの総生産能力は、2013年9月末時点で約60,000枚/月となり、大幅に供給体制が強化された。これにより、スマートホンやタブレットなどの需要が急拡大するモバイル機器市場に対応可能となった。そして、積層型CMOSイメージセンサー供給体制を強化することで、CMOSイメージセンサー市場での優位性は確固たるものとなった。

2010年度、ソニーのシェアは数量ベース18%、金額ベース42%

イメージセンサーは、部品としてモバイル機器やカメラメーカーなどに販売される。このため、イメージセンサー市場におけるマーケットシェアは、はっきりしたデータは無い。2010年度の数量ベースで、ソニーはCCDで約51%、CMOSで約10%、トータル18%のシェアだった。また、金額ベースではCCDで約59%、CMOSで約32%、トータル42%(ソニー調べ)と高性能イメージセンサーの比率が高い分だけ金額ベースでのシェアも一層高いものとなっている。その後、ソニーセミコンダクタ社の設備投資によってスマートホン用を中心にシェアアップ、携帯電話用におけるソニーのマーケットシェアは数量ベースで約30%まで高まったと推定される。

日本、米国、韓国のメーカーがシェア争いを展開

イメージセンサー市場は、ソニーの他、パナソニック、シャープ、東芝、キヤノンなどの日本のメーカーと米国、韓国メーカーがシェア争いを展開している。メーカー各社、それぞれ得意分野を持っており、CCDで高いシェアを持つメーカー、またCMOSで高いシェアを持つメーカーなど様々。また、ソニーのように台数ベースより金額ベースで高いシェアを持ち、高画質の高級タイプに強いメーカーがある。さらに、イメージセンサー単体よりレンズを組み込んだユニット(イメージングモジュール)で強みを発揮しているメーカーもある。ただ、日進月歩で技術進歩している分野だけに、新技術の開発、生産設備の革新などによって、シェアはめまぐるしく変化する業界でもある。それだけに今後の動向から目を離せない。

参考資料:、ソニーHP、ソニー歴史資料館、パナソニックHP、JEITA・HP、東芝HP、シャープHP、キヤノンHP,電波新聞他