カメラの歴史はフィルムの高感度化と高画質化

カメラの歴史を振り返ると、カメラが始めて登場したころは、感度が悪く、専門のカメラマンが長時間シャッターを開放し露光しなければ撮影できなかった。そのため、フィルムの高感度化が最優先課題となった。そして、感度がアップするにつれフィルム微粒子化の技術開発が進み画質も向上してきた。

一方、カメラの高画質化・高感度化を図るには、何もフィルムの高画質化・高感度化をしなくても別の方法がある。大きなサイズのフィルムに大きな口径の明るいレンズを使えば良い。当然、カメラもバカでかいものになる。写真屋さんやスタジオで撮影するならこれでもよいのだが、個人が持ち歩くのは非常に不便だ。そこで、様々なサイズのフィルムが開発された。このころカメラメーカーとして世界的に高いシェアをとっていたライカが採用していたのが35mmサイズ(縦36mm×横24mm)のフィルムで、これが世界に広まり、やがて世界標準となっていった。このため、35mmサイズをライカ判と呼ぶこともある。

理想は35mmフルサイズイメージセンサー

では、イメージセンサーの場合はどうだろうか。当然のことながら、フィルム式カメラからデジタルカメラへ移行するためにはレンズやレンズマウントを流用しやすい35mmフルサイズのイメージセンサーがあれば理想的である。しかし、半導体製造技術やコストの面から、大面積のイメージセンサーを作るのは難しい。このため小さなサイズのイメージセンサーから普及していった。そして、半導体技術の進歩とともに、イメージセンサーもより大きなサイズが製造されるようになっていった。

人間の目を越える究極のイメージセンサーとは?

また、カメラは銀塩フィルムからデジタルカメラに変わっても要求される性能は変わらない。高画質・高感度・高い表現力など、要求される基本性能は同じである。では、イメージセンサーが発明されてから一貫して求められてきた究極のイメージセンサーとは、どんなものなのだろうか。それは、人間の目に追い着き、さらには追い越すイメージセンサーである。

人が見えない暗闇でも、速過ぎて見えない高速な現象も撮影可能

人間の目を越える究極のイメージセンサーに求められる性能。それは何と言っても、人間の目では見えない暗闇でも撮影できることだろう。暗過ぎて何も見えない状態でも撮影できるほど高感度なイメージセンサーである。そして風船が割れる状態や、弾丸の飛ぶ状態が撮影できる高速イメージセンサーであり、動きが速過ぎて人間の目では見えない高速な現象でも撮影できるイメージセンサーだ。つまり、感度、速度において人間の目の限界を超えることである。加えて、逆光状態などで明暗が大き過ぎて良く見えないような場合でも撮影できるような大きなダイナミックレンジを持っていることである。さらに、人間の目では捉えきれない広い視野を撮影できることだ。また、遠すぎて見えないものでもはっきりと撮影できる距離の限界を超えることなどである。

photo

「人間の目の限界を越えるイメージセンサー」(ソニー発表資料から) (※クリックすると画像が拡大します。)

解像度1億画素、感度 < 0.1(lx)、速度: > 1.000fpsを目指す

では、現在、主流となりつつあるCMOSイメージセンサーでは、どの程度のスペックなら人間の目を越える究極のイメージセンサーと言えるのだろうか。テレビ放送用カメラなどプロッフェショナル分野で圧倒的なシェアを持つソニーでは、CCDイメージセンサーではすでにフィルムを越えており、CMOSイメージセンサーでは解像度:1億画素(スーパーHD:4K×2K,240fps)、感度:<0.1(lx)、速度:>1.000fpsを「人間の目を越える究極のイメージセンサー」として開発を目指している。

デジタル一眼レフカメラ、一眼ミラーレスカメラの台頭で高性能イメージセンサー開発に拍車

より高性能なイメージセンサーを開発しなければならない理由は、デジタルカメラ市場の動向が大きく影響している。コンパクトデジタルカメラが既に成熟期を向かえており、デジタル一眼レフカメラやデジタル一眼ミラーレスカメラが成長分野として注目されてきたからだ。世界のデジタルカメラ構成比は金額ベースでは、2011年でコンパクトデジタルカメラと、デジタル一眼レフカメラやデジタル一眼ミラーレスカメラの構成比はほぼ同じで、2012年以降は、デジタル一眼レフカメラやデジタル一眼ミラーレスカメラの構成比が年々高まっている。そして、現在、デジタルカメラ用イメージセンサーとしては35mmフルサイズが、最も大面積のイメージセンサーとして高級機に採用されている。

様々なサイズ表示があるイメージセンサー

イメージセンサーのサイズは、35mmフルサイズと呼んだり、1/2インチと呼んだり、1/2.5型などと様々な表示方法がある。しかし、現在では、35mmフルサイズ、1/2.5型などが使われることが多く、インチ表示は稀となっている。これは、我が国では計量法によりメートル法が採用されていることが関係している。テレビの画面サイズの表示も初めの頃は12インチブラウン管、14インチブラウン管などと表示されていたが、やがて○○型と表示されるようになって行った。したがってイメージセンサーのサイズもインチで表示されることは少なくなってきた。ちなみに、35mmサイズだけが、あえてフルサイズと呼ばれているのは、フィルムの35mmサイズと同じと言うことを強調したいがためである。また、○○型と表示されるようになったのは、CCDなどが登場する前に、撮像管が管径を示す4/3インチ撮像管などと呼ばれていたことに由来している。

photo

「イメージセンサーのサイズ」(ソニー発表資料から) (※クリックすると画像が拡大します。)

参考資料: ソニーHP、ソニー歴史資料館、パナソニックHP、JEITA・HP、東芝HP、シャープHP、キヤノンHP,電波新聞他