エレクトロニクス立国の源流を探る
No.103 電蓄からデジタルオーディオまで 第5回
電機メーカーとレコード会社とが資本関係を結ぶ
コロムビアやビクター以外にも、ほぼ時を同じくして、レコードの輸入販売やレコード盤製造、蓄音機の製造を始めた会社もあり、日本人の音楽好き、機械好きはこの頃からすでに始まっていたようだ。また、アナログレコード時代から今日のデジタルオーディオ時代を迎えるまで、レコードの録音技術とそれを再生する蓄音器、電蓄などのオーディオ機器の再生技術は常に表裏一体となって発展してきている。さらに、東芝や日立製作所、松下電器、ソニーなどの電機メーカーもレコード会社と資本関係を結ぶなどソフト(レコード)とハード(エレクトロニクス)は密接な関係を築いてきている。そこで、録音ソースを提供してきたレコード会社について、もう少し振り返ってみたい。
キングレコード、テイチク、ポリドールなどが戦前から活躍
戦前から活躍していたレコード会社の中に、キングレコード、テイチク、ポリドールなどがあり、社名や、レーベル、資本関係など変遷を経ながら今日に至っている。キングレコードは1931年、講談社にレコード部が設置されたのが始まりで、1951年にレコードとして独立した会社となった。ライオンのロゴマークで軍歌や演歌などその時代、時代を代表するヒット曲を生み出している。また、1985年には三洋電機が資本参加し業務提携したこともあった。なお、キングレコードは現在でも講談社が大株主となっている。
1934年にテイチクの前身である帝國蓄音器が設立される
テイチクは、1934年に蓄音機やレコードの製造販売会社として帝國蓄音器が設立された。太平洋戦争で工場が焼失するなどもあってレコードの生産はストップ。戦後の1946年からレコード生産を再開、1951年には、米国のデッカレコードと契約し翌年から販売を開始した。さらに、1953年にテイチクと社名を変え、翌年からLPレコードやEPレコードの販売を開始している。しかし、1999年に経営不振から日本ビクターに経営権を譲渡するとともに、社名もテイチクエンタテイメントと変更している。また、2008年には日本ビクターがパナソニック傘下から離脱しケンウッドと経営統合したためその傘下に入った。従って、現在の大株主はJVCケンウッドとなっている。
1927年にポリドールの前身、日本ポリドール蓄音器設立
ポリドールは、現在ユニバーサルミュージックとなっているが、1927年、日本ポリドール蓄音器が設立されたのがスタート。独グラモホン傘下のポリドール・レコードの輸入販売を行っていた。そして、1953年に英ポリドール・レコードと富士電機製造の出資により日本ポリドールが設立された。さらに、1956年に日本グラモホンに社名を変更している。その後、シーメンスやフィリップスなどの資本関係や事業統合など、欧州メーカーの事業変遷の影響を受けてポリドール、ポリグラムなどと社名は変わった。そして、フィリップスがポリグラムの株式をMCAに売却、1999年にユニバーサルミュージックとなり、同グループが全株式を所有している。
新興レコード会社が相次いで設立の動き
このほか、比較的新しいレコード会社では、日本クラウンやソニー・ミュージックエンタテイメントなどがある。日本クラウンは、1963年に三菱電機などの支援を得て設立された。その結果、三菱電機もレコード会社を傘下に持つことになったが、日立製作所傘下の日本コロムビアの有力プロデューサーや大物歌手を伴っての独立だけに世間の注目を集めた。しかし、2001年には、経営不振から三菱電機が第一興商に株式を譲渡したため第一興商グループに入った。
日本レコード協会には正会員17社など61社が加盟
ソニー・ミュージックエンタテイメントは、1968年にソニーと米CBSの合弁でCBS・ソニーレコードとして設立されたのがスタート。1988年には、米CBSから全株式を買収した。その後、1991年からソニー・ミュージックエンタテイメントと現社名に変更している。この他にも、様々なレコード会社が設立されたり解散したりしている。国内のレコード会社により構成される日本レコード協会には、正会員17社に、準会員、賛助会員を含め61社が加盟している(2014年9月現在)
違法ダウンロードを防止など音楽文化の健全な発展に貢献
日本レコード協会は、1942年に日本蓄音機レコード文化協会として設立され、その後、日本音盤協会、日本蓄音機レコード協会など度々名称を変えながら、1969年からは現在の日本レコード協会へ改称し現在に至っている。主な事業としては、二次使用料請求権、貸レコードの報酬請求権などにともなう使用料等の徴収・分配を行っている。このほか、違法ダウンロードを防止するため、レコード会社・映像製作会社との正式な契約に基づいて配信を行っているサイトにエルマークを発行。さらに、日本ゴールドディスク大賞の実施、レコードの生産実績調査なども行っており、日本の音楽文化の健全な発展に貢献している。
参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、日本レコード協会HP、日本ビクターの60年史、SOUND CREATOR PIONEER、ソニーHP、ソニー歴史資料館、パナソニックHP、JEITA・HP、東芝HP、東芝科学館、キングレコードHP、テイチクエンタテイメントHP、ほか