セパレートステレオ→アンサンブルステレオ→コンポ(システムコンポ、ミニコンポ、マイクロコンポ)へと移り変わる

オーディオ装置の推移を見ると、エジソンの蓄音器から始まったオーディオ装置は、やがて真空管の発明によって大音量で再生が可能な電蓄へ、そしてステレオレコードが開発されステレオ再生の時代となると、セパレートステレオ→アンサンブルステレオ→コンポ(システムコンポ、ミニコンポ、マイクロコンポ等)と、めまぐるしく変遷していった。むろんこの間に、外観形状ばかりでなく真空管からトランジスター、IC、LSIなどへとアンプの技術革新があったり、CDの登場によりアナログからデジタルへと大きな技術革新もありました。

ステレオ時代の幕開けとなったロサンゼルスでのオーディオフェア

まず外観、形式からオーディオ装置の変遷を見てみたい。蓄音機から電蓄への流れについては、すでに紹介しているので割愛し、電蓄以降の流れを見てみよう。ステレオ時代の幕開けとなったのは、1957年(昭和32年)9月に、ステレオレコードが発表されてからとなる。この年にロサンゼルスで開催されたオーディオフェア会場では、アメリカのウエストレック社の45/45方式と、イギリスのデッカ社のV/L方式の2方式の競演となった。しかし、2方式のステレオレコードがオーディオ市場で争うことは、混乱をまねくとともに普及にも障害となることから、欧米のメーカーや団体で慎重に比較検討された結果、45/45方式に統一する事が決まった。

45/45方式がステレオレコードの標準方式と決まったことによって、レコードメーカーは次々とステレオレコードを発売していった。世界で始めてステレオレコードを発売したのは、オーディオ・フィデリティ社で、1957年(昭和32年)11月に発売、1枚5.9ドルだった。翌年の1958年(昭和33年)6月には、RCAビクターがベートーべンの「交響曲第7番」をはじめ、16枚を発売している。その後も、VOX、コンサートホール、ウエストミンスターなどが次々とステレオレコードを発売したことにより、ステレオ時代となった。そして、日本でも1958年(昭和33年)に日本ビクターがチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」をはじめ次々とステレオレコードを発売した。

日本ビクターが国産第一号のステレオとなる「STL-1S」を発売

45/45方式ステレオレコード再生装置においては、1958年(昭和33年)に日本ビクターが国産第一号のステレオとなる「STL-1S」を発売した。これが、いわゆるコンポーネントステレオと呼ばれるもので、プレーヤー、アンプ、スピーカーがそれぞれ独立したセパレートタイプ。「STL-1S」の発売価格は、77,000円と高価だった(ちなみにこの年に1万円札が発行された)。日本ビクターでは、45/45方式ステレオレコードの試聴会を行い、その普及を目指したが、当時は「立体レコード試聴会」と呼んでいた。

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日本ビクターが発売した国産第一号ステレオ「STL-1S」

コンポーネントステレオは、プレーヤー、アンプ、スピーカーがそれぞれ独立しているので、スピーカーから出る音がプレーヤーを共振させるハウリングが少なくなることや、自由に設置できるメリットが有るが、コストアップになりがちで高価なのが欠点。これに似ているのがセパレート型のステレオで、左右のスピーカーと、プレーヤーとアンプが一体となったコントロール部分であるセンター部との3つに分離(セパレート)された形式のもの。

アンサンブルステレオの原型となった日本ビクターの「STL-3」

日本ビクターは、「STL-1S」に続いて、翌1959年(昭和34年)に「STL-3」を発売した。これは、高価だった「STL-1S」をもっと低価格にして購入しやすくしたモデルで、プレーヤー、アンプ、スピーカーが一体化されたステレオ装置。一体化されたことで、発売価格は47,800円と「STL-1S」より大幅に低価格化を実現している。日本ビクターでは、この「STL-3」を皇太子ご成婚記念ステレオと銘打ってPR。ご成婚記念パレードに"祝 皇太子殿下御結婚"の看板を掲げたステレオカーを参加させている。この年は、「鍋底不況」から「岩戸景気」へ移行した年であり、マイカーとともにステレオの普及に弾みがつく年となった。そして、この「STL-3」は、その後、全盛を極めたアンサンブルステレオの原型といえるモデルであった。

エコー付きステレオブームのきっかけとなった日本ビクターの「STL-37」

1961年(昭和36年)になると、テレビの受信契約者数は1,000万を突破しテレビブームとなるが、オーディオ市場も順調に拡大していった。アンサンブルステレオは、家具のひとつのように部屋の中で存在感を示していたが、ちょっと変わった傾向としてエコー付きステレオがブームとなった。先鞭をつけたのが、日本ビクターが発売した「STL-37」(発売価格49,800円)だった。Hi-Fiを追求するオーディオ再生装置にエコーをつけるなど、今では考えられないことだが、エコー付きの音楽が部屋に響き渡るのは、聞き手に"心地良い"との印象を与えブームとなった。現在、エコー付きカラオケで歌うことが人気を呼んでいるのも、その流れを受け継いでいるかもしれない。

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エコー付きステレオがブームのきっかけとなった日本ビクター「STL-37」

参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、日本ビクターの60年史、パイオニア「SOUND CREATOR PIONEER」、ソニーHP、ソニー歴史資料館、パナソニックHP、JEITA・HP、東芝HP、東芝科学館、ほか