日立がワンボックススタイルのワープロ“ワードパル”「BW-150」発表

1985年に“ヒットビットワード”「HW-30」を発表、パーソナルワープロ市場に新規参入したソニーは、翌1986年6月に「HW-80」を発表。機能面では、「30文字一括文書変換」、「約15万語の辞書」、「40文字×6行のディスプレイ」を装備するなど強化した。

これにより、30文字まとめて一括で文書変換が可能となり、全文を一気に入力した後に、自動で文節を探して変換する文書サーチ変換も可能だった。また、約15万語の辞書は、日本人名字の約80%、名前も90%をカバーできた。さらに日立は、この年、9インチディスプレイや23字/秒の熱転写プリンタを本体と一体に装備した省スペースなワンボックススタイルのワープロ“ワードパル”「BW-150」を発表した。

パーソナル機でもビジネスユース機並みの高機能実現が開発テーマ

このころ、メーカー各社のパーソナルワープロ開発のテーマは、小型軽量で持ち運びに便利なことと、パーソナル機とは言えビジネスユース機並みの高機能を実現することだった。富士通は、1986年11月にビジネスワープロとパーソナルワープロの中間的な存在の画期的なワープロ「OASYS 30AF」を発表した。

ビジネスワープロ「OASYS 100」シリーズに迫る機能を搭載しており、3.5インチFDDやプリンタの一体化とキーボードも本体に収容可能なオールインワンタイプで持ち運びに便利なモデルとして注目された。さらに、40字×21行のELバックライト付大型フラットディスプレイを採用しており、暗い場所でも文書の読み取りが可能だった。また、ワープロ初のパソコン通信機能も提供されるとともに、高級ビジネス機に迫る編集機能を装備し、当時としてはハイスペックなマシンだった。

パーソナルワープロとして初めてパソコン通信機能を搭載

さらに、富士通は、OASYS Lite F・ROM(フロム)7と同F・ROM 9のF・ROMシリーズを発表、パーソナルワープロのラインアップを強化した。本体と専用ICカードで提供する拡張ソフトウェアを別々に販売する新しいスタイルを採用。ユーザーニーズに合わせて機能を提供することでイニシャルコストのアップを避けながら、使用目的に合った拡張性は確保していこうというものだった。

F・ROMシリーズは、パーソナルワープロとして初めてパソコン通信機能をモデムやカプラを装備することで可能としていた。F・ROM7とF・ROM9 は、F・ROM7がプリンタ一体型、F・ROM9がプリンタ分離型という違いで機能的には大きな差は無かったが、2枚のF・ROMカードを使用することで機能拡張ができるのがセールスポイントだった。

シャープが業界初の「AI辞書」搭載オールインワンタイプ「WD-540」発表

さらに、1987年に入ると日立が統合型日本語ワードプロセッサ“ワードパル”「Super 1000」を発表。複数の文書を同時に見ることができるマルチウインドウを搭載し、複数文書の同時編集、レイアウト編集、文中直接入力などができDTP(ディスクトップパブリシング)機能をサポートしたモデルだった。ハード的にも15インチディスプレイ、3.5インチFDD、20メガバイト5インチHDD、マウスなど重装備のモデルで、オプションとしてレーザプリンタ、イメージスキャナ、文書通信などを用意していた。

また、シャープは、業界初の「AI辞書」搭載オールインワンタイプ「WD-540」を発表した。「AI辞書」を搭載したことで、言葉の意味や文書の前後関係から自動的に解釈して変換することができるようになり、同訓異字や同音異義語も正しく判別し変換できるようになった。

photo

シャープの業界初「AI辞書」搭載オールインワンタイプ「WD-540」

ちょっと変わったところではソニーが2インチデータディスクドライブ「PD-1」を内蔵したプリンタ分離型の“プロデュース100”「PJ-100」を発表している。小型軽量化を図るため3.5インチでなく2インチのディスクドライブを内蔵したのである。しかし、記憶容量は3.5インチと同等以上を確保し、プリンタを着脱式とすることで分離した時の本体重量は2.3kgの軽量化を実現している。

また、東芝は、ラップトップ機ながらデスクトップ機のCRT表示装置並みの40字×20行を表示できる液晶表示装置を備えた“Rupo”「JW90F」を178,000円で発売した。マルチウインドウ機能が搭載され、図形描画、表計算、グラフ表示なども可能だった。さらに、英、仏、伊、独、西の5カ国語対応欧文ワープロ機能も搭載していた。

パーソナルワープロ初の48ドットプリンタ採用“文豪”「mini7H」

日本電気は、1987年10月に“文豪”シリーズの最上位機としてパーソナルワープロとして初めて48ドットプリンタを採用した「mini7H」など4機種を発売した。48×48ドットプリンタを採用により活字並みの印字を実現したほか、毛筆書体をオプションとして提供、高品質な文書作成を可能とした。

このほか、オプションとしてモデムボードや通信ソフトを内蔵したモデルを用意、PC-VANなどのパソコン通信サービスを利用可能とした。さらに、FAX機能を内蔵したモデルでは作成した文書を送信したり、送信されたデータを受信したりすることも可能だった。

液晶表示装置の大画面化や通信対応強化など様々な進化が

このように、1985年から1987年にかけては、液晶表示装置の大画面化による表示文字と行数のアップやバックライト採用による暗い所での操作性の向上、そしてプリンタの印字品質の向上、また、持ち運びに便利な小型軽量化を図るために、プリンタ分離タイプの登場、パソコン通信機能やFAX機能の登載による通信への対応強化など様々な進化を遂げている。

参考資料:シャープHP、「新・匠の時代」(内橋克人著:文芸春秋)、東芝科学館、「日本語ワープロの誕生」(森健一、八木橋利明:丸善)、社団法人情報処理学会HP、富士通HPほか