今年(2001年)10月15日、総務省の「電波利用状況に関する調査研究会」に呼ばれ、意見を述べる機会を与えていただいた。この調査研究会は、電波の利用周波数が増加し“周波数不足”が深刻化したため、電波の利用状況を調査し検討するのが目的であり、9月21日に発足していた。発言時間は短いものであったが、私はアマチュア無線の現状、歴史を簡単に紹介し、当面の問題点をいくつか挙げてその解決を強くお願いした。

まず「現在のアマチュア無線局は世界に約280万局あり、この内、日本は数年前の137万局から減少したものの、現在は95万局~100万局と推定され、世界でも屈指のアマチュア無線大国です」と話し、その理由を説明した。その中でも最大の理由は戦後の郵政省による免許政策であったことを紹介した。

当時、世界のアマチュア無線の規約は電信(モールス符号)通信ができなければ資格が得られないことになっていた。しかし、郵政省は電話(音声)のみでも資格をもらえる2級の制度を作り、しかも出力は100Wまで認めてくれた。太平洋戦争での敗戦の原因の一つは、電波技術の遅れであったとの認識は官民ともに持っており、どうにかして米国を見返したいという強い願を持って対応していただけた。思えば、当時の郵政省の方々は“明治の気概”をもっておられた。

昭和32年にJARLの会長以下の役員は、当時の浜田成徳電波監理局長をおたずねした。その時に局長から「アマチュア局を増やしなさい。そうすれば機械も本も真空管も欲しいものは揃うようになると激励され、それに力を得て、局数を増やすことに全力をあげてきた」ことを話した。その結果、多くの優秀なアマチュア無線家が誕生し「アマチュア無線技術者が、戦後のエレクトロニクスの技術開発を担い、産業を育ててきた」事実を申し上げた。

当時の浜田電波管理局長とJARLとの会見「アマチュア無線のあゆみ」JARL発行より

さらに、戦後のアマチュア無線バンド(許可された周波数帯〕の推移についても説明し、周波数不足を訴えた。「1.8MHz、3.5MHzバンドにしても海外と比較して周波数帯域が狭い。また、マイクロ波帯をたくさんいただいているが、その周波数帯の一部をお返しする代わりに短波帯を増やしていただけないか。例えば、7MHzを300KHz幅にして欲しい」とお願しておいた。

次いで“5WPM”(1分間に5語)についても説明した。昨年、米国のFCC(連邦通信委員会)は、電信の技能要件を緩和した。日本の要件は60字(1級)45字(2級)20字(3級)である。FCCにならって改正をお願いしてるが進んでいない。このように整合性が取られていないため、日本の3級資格者が米国に行き資格変更をすると米国の最上級である「エキストラ」となり、日本の1級になってしまう。現在、「日本以下数カ国のみが改正していないだけです」ことも指摘しておいた。

また「今や、アマチュア無線機は日本製が世界で使われ、その優秀性が認められており、さらにJARLの認定機種、基準も世界から評価されています。にもかかわらず、日本だけは機器の検査がまだ残っています。そろそろ従事者免許と局免許を一体化した包括免許を考えていただけませんか」とご提案させていただいた。

今年のハムフェアで公開したデジタル化については「普及させていきたいと思いますが、プロトコルを同一にするためには、日米欧で世界統一をしたいと考えていますのでよろしく」とお願いした。コールサインの公開については「プライバシー保護の問題もありますが、不法、違法を締め出す上でも米国のように全免許局を発表していただきたい」とお願いした。

最後に、電灯線搬送については「日本は電灯線が地上を走っており、仮に2MHz~30MHzが許可されると日本中が短波のアンテナだらけになります。医療機器などへの妨害は人命に影響を与えることになり、大変な問題であります。JARLはARIB(電波産業界)で進めている実験結果を見て、総務省と十分な話し合いを行ないたいと考えています」と申し上げた。

アマチュア無線局数の推移(IARU資料より)

*日本の局数については、総務省発表のため、調査日に若干相違がある。*順位については、2000年または1999年の局数を採用。