JA2AC 村松 健彦氏
No.27 生涯をハムで(3)
[CBCのハム達]
44年間勤務のCBCを退社し、自らの開局50周年を整理した村松さんは、時々「東海地区の放送界で活躍していたハムのことが思い出される」と言う。年齢では先輩、同年代、後輩とさまざまであるが、すでに定年となったハムもおり、いまだに職場で活躍しているハムもいる。JICA(現国際協力機構)のシニアボランティアとしてマレーシアに赴任したのが伊藤進(JA2EU)さんだった。
伊藤さんは村松さんより早く平成7年(1995年)9月にCBCを退社、平成8年(1996年)6月から2年間マレーシアに赴任した。また、それまでの平成5年(1993年)から7年にかけて同僚の石黒重自(JA2PZV)さんらとともに、パラオKC6EUやミクロネシアV63EFなどの海外ペディションも経験している。もちろん、2年間のマレーシア時代にも9M2EUとして活躍。現在「マレーネットワーク」が毎週日曜日午前9時から7040KHzで行われ、多くのマレーシアハム局が参加している。
やはり、CBC勤務の高橋義弘(JA2ABX)さんと二村岸男(JA2CPD)さんの2人は、昭和時代の末から平成初期にかけてJARLの第8次訪中団として逝江省抗州市にBY5HZ局を、また、山東省済南市にBY4JQ局を開設した。これに対して、日中アマチュア無線友好に寄与したとして、済南少年宮から栄誉賞を贈られている。
CBCを定年退社した伊藤さんはパラオではKC6EUで運用した
CBC勤務の高橋さん、二村さんは中国・抗州市でBY5HZを開設した
[JNN-DXグループ]
東京放送(TBS)をキー局に全国の民放28社が加盟するJNN(ジャパン・ニュース・ネットワーク)系列がある。CBCはその基幹局と位置付けられている。JNN系列局に勤務するハム同士の関係も深く、平成12年(2000年)6月にJNN各局にあるアマチュア無線クラブの有志10名がJNN-DXグループを結成し、ニューカレドニアにDXペディションに出かけている。
団長は飯塚嗣(JA1EOD)さんで、日程は6月29日から7月5日まで。CBCからの参加はなかったが、現地ではTX8JNNのコールを使い、WARCバンドを含む3セットによる複数バンド同時運用を行っている。6日間で87エンティティ、約6000局と交信した。現地ではエリック(FK8GM)さん、フランク(FK8HC)さんが加わっている。
[東海テレビのハム達]
「東海テレビの菅野昇(JA2AAU)さんを中心とするハムグループの活躍はすさまじかった」と村松さんは感動している。菅野さんらは海外ペディション10回を目標としており、今年(2005年)の秋にモーリシャス(3B8)で完了の予定である。このため、菅野さんは現在まで8つの海外でのコールサインをもっている。
ちなみにそれを記すとT88NK、V26NK、FG/JA2AAU/P、S79NK、8Q7NK、V73NK、9N7NK、3D2NKであり、NKは姓名の「のぼる・かんの」を意味している。このグループにはFM愛知の山形賢次(JA2BNV)さん、NEC名古屋の田原昇(JR2BJE)さんのDXメンバーが「ノンベーHAM」グループとして参加している。
東海テレビの菅野さんらは海外ペディション10回が目標。フィージーでのカード
NHK福井の八原さんはネパールから9N7SZでサービスした
[NHKのハム達]
「NHK福井放送局の毛利元(JA9VJ/2)さん、八原康広(JA9LSZ)さんの活躍も広く知られていた」と村松さんは指摘する。平成12年(2000年)にはネパールへペディションに出かけ、それぞれ9N7VJ、9N7SZで多くの日本のハムにサービスQSOを行っている。
[市民の万博PR作戦]
ここ数年、村松さんが取り組んできたのが愛知県で開かれている万国博覧会に関する活動である。「愛・地球博」は3月25日から9月25日までの185日間、当初の入場見込みは1500万人であったが、8月18日にこの数字は突破した。万国博覧会のうち「一般博」として位置付けられた博覧会は国内では昭和45年(1970年)に大阪で開かれて以来35年ぶりのものである。
「愛・地球博」に向けてのチャレンジトークの集まり。中央前列が村松さん
この愛知博を前に名古屋市は「万博開催に向けて―わたしがやってみたいことチャレンジ作文」の募集を行った。募集期間は平成13年(2001年)11月1日から、翌年の1月6日の2カ月間と短かったが、小・中学生の部、一般の部の2部門で2098作品の応募があった。
2月10日、名古屋市内の伏見プラザを会場に「わたしがやってみたいことチャレンジトーク」が開かれた。入賞作品の表彰と発表を兼ね、万博の事前PRのイベントとして行われた。この席で優秀賞が小・中学生の部で2作品に一般の部で1作品に贈られたが、村松さんの応募した「ささやかな一市民の万博PR作戦」が、一般の部の優秀賞として表彰された。
[3つの合言葉]
村松さんの作文は、ある日曜日のアマチュア無線による20カ国との交信の様子を紹介。「さまざまな国のハムと楽しく会話をした後、送られてくるQSL(交信)カードも楽しみの一つ」と説明。年1,000回を越す交信も珍しくなく「ささやかな民間親善大使と自負している」と書いている。
ところが、交信のなかで愛知万博の話題が出たことがないことに触れ「アマチュア無線を通じて万博をPRしたい」と決意を披露。以下、終わりの部分を原文のまま紹介する。---2005年に向って交信するであろう100カ国以上、数千人の海外ハムに呼びかけたい。「2005 AICHI EXPO」と。また「万博会場で会いましょう」と。そして「シンボルマーク入りの交信証を送ります」と。
ハムの世界だから無理しない範囲の自費自作で「電波によるPR発信」と「交信証による案内PR」を計画している。これはささやかなる一市民レベルの万博PR作戦であり、まさに今、実施寸前である―。この作文について村松さんは「分りやすく、ハムの専門用語を避け日常の趣味としてのハムの面白さを訴えた」と言う。