JA3EY 永井 弘一氏
No.9 アンテナ実験(2)
[50MHzを追加]
永井さんのアンテナは、25エレデルタループ、7MHz用の逆Vダイポール、3.5MHz用のトップロードバーチカルという構成となった。その次に永井さんは50MHz用の6エレ八木アンテナを増設した。このアンテナは、JE3WUK田中さんから譲ってもらったもので、軽量化を図るため、6本のエレメントをデルタループのブームに取り付けた。その結果、デルタループには、25個のループと6本の50MHz用エレメントが付いた。
5バンドデルタループのブームに50MHzの6エレも取り付けた。
折しも、サイクル23のピークであったことから、6エレ八木1本で6mWACが完成した。WACが完成した日、永井さんは、まず未交信大陸であったヨーロッパのスペイン(EA)局との交信を成功させた。今日はコンディションがいいとそのままワッチを続けるとアフリカのカナリア諸島(EA8)が入感した。交信にも成功し、「その日は立て続けに残りの2大陸との交信が成立して、ラッキーでした」と話す。
永井さんが取得した6mWAC。
50MHzは6エレでそれなりに楽しむことができたが、7MHzは依然逆V型ダイポールのままで、飛びがもうひとつのため、永井さんはビームアンテナ化を計画した。今度は既製品の7MHz/14MHz用のトラップ入り2エレ八木を購入して上げてみた。しかし、市販品にもかかわらず、期待に反して両バンドとも性能がもうひとつであった。特に、14MHzでは有効帯域が狭く、アンテナチューナーなしでは、実質40kHz幅ぐらいしか帯域が取れなかった。
[7MHzを強化]
とりあえずオールバンドのアンテナは揃ったので、そのままの構成で変更検査を受検したが、検査が終わるとすぐにこの2エレ八木を解体し、まずはトラップを取り去った。そして7MHzシングルバンドの2エレHB9CVに改造したが、トラップを撤去して電気長が足りなくなった部分は、細めのアルミパイプを加工してリニアローディングとして、同調を行った。
7MHz専用の2エレHB9CVとなったアンテナは、各エレメントの全長こそ約11mであったが、リニアローディングを採用したことで、トラップがあったときとは別物のように、有効帯域が広くなってバンド全体をカバーできるようになった。さらに、14MHzの影響が無くなったのが功を奏したのか、ビームも切れるようになり、飛び受けとも満足のいくようになった。7MHzのSSBでは、比較的難しい南米北東部のガイアナ(8R)、スリナム(PZ)などと交信できたという。
[ステップIRを導入]
7MHz/14MHzの2エレを、7MHz専用に改造してしまったので、14MHzのアンテナが無くなってしまった。また、5バンド用デルタループの性能には十分満足していたが、これに14MHz用のエレメントをさらに追加するのはさすがに大きすぎる。何とかがんばって2エレなら乗せられないこともないが、重量ならびに受風面積が大幅にアップしてしまうので、風が吹いたら心配である。
2006年、永井さんはデルタループを下ろし、米国を中心に人気急上昇の3エレステップIR上げることを決断した。ステップIRとは、米国のSTEPPIR社の八木アンテナで、モーターによって各エレメントが伸び縮みし、対応しているすべてのバンドにおいて、運用周波数に対して常にフルサイズ動作となる。多バンドに対応したアンテナだと、トラップ入りのアンテナの場合は効率が悪いし、各バンド用のフルサイズエレメントを持ったアンテナだと、膨大なエレメント数となってしまい、重量もバカにならずさらに受風面積も大きい。
永井さんが購入した3エレステップIRは、わずか3本のエレメントで、14MHzから50MHzの6バンドをカバーし、全バンドにおいてフルサイズ動作となる。エレンメント数はわずか3本なので、重量ならびに受風面積も小さくて済む。永井さんは、このアンテナにさらにオプションの50MHz専用エレメントを1本追加して、50MHzだけは4エレで動作するようにした。
2006年、約10年間使用したデルタループを下ろし、さらに50MHzの6エレ八木も下ろして、永井さんはこのアンテナを導入した。これで、3.8MHzがトップロードバーチカル、7MHzが2エレHB9CV、14〜50MHzが3エレステップIRという構成となった。
[3.8MHzのビームを設置]
次に永井さんは、3.8MHzの飛びをさらに改善すべく、指向性アンテナの導入を検討した。旧友であるミニマルチアンテナの城野さんに頼んで、短縮型の2エレHB9CVを特別に作ってもらった。このアンテナはエレメント長を片側6mまで短縮するために、136回巻きのローディングコイルを使った。そのためエレメント長が12mで短縮率が約30%となった。はじめから飛びにはあまり期待はしていなかったが、水平系のビームアンテナをテストしてみたいこともあって、導入したという。
このアンテナを設置してすぐ、3.8MHz帯で米国カリフォルニアの局を捕まえ、トップロードバーチカルと、2エレHB9CVの受信比較をしてもらった。同じ出力で、2本のアンテナを切り替えて聞いてもらったところ、トップロードバーチカルだと59+、2エレHB9CVだと57というレポートで、永井さんはがっかりした。その後も、世界各国の局を2本のアンテナを切り替えて比較受信してみたが、ほとんどのケースで、トップロードバーチカルの方がよく聞こえ、飛びについても同様であった。
[アンテナのメンテナンス]
話は変わり、永井さんのタワーはエレベーターを装備しているため、アンテナは地上近くまで下ろすことができる。そのため、いつもアンテナの取り替えや調整は、1人で行っている。地上近く約3mの高さまで下ろした状態で、植木屋用の大型の脚立を使ってメンテナンスを行っている。「植木屋用は大変しっかりいるので強度の問題は全くなく、さらに脚立の上に工具や半田ごても置けるし、半田付けまでできるので具合がいいですよ」と話す。なお、タワー本体のメンテナンスだけは専門家に頼み、エレベーター部分のグリスアップ、さびた部材の交換、点検などを行ってもらっている。
2009年6月現在の、永井さんのアンテナシステムは、上部から3エレステップIR、3.8MHz2エレHB9CV、7MHz2エレHB9CV、3.8MHzトップロードバーチカルという構成となっている。しかし、3.8MHz2エレHB9CVは性能がもうひとつなので、近々撤去する予定という。
2009年6月現在の永井さんのアンテナ群。
次の計画は、タワーから20mくらい離れたところに3.8MHz用のトップロードバーチカルをもう1本設置し、移相給電の垂直2エレアンテナを実験してみることだ。前年から準備を始めたものの、冬になったので一時中断していたが、すでに材料はほぼ入手し、ローディングコイル(ハット)も完成しており、近いうちに設置する予定にしている。