エレクトロニクス工作室
No.83 ダイオード用カーブトレーサ2
1.はじめに
No.77でグラフィックLCDのテストボードを作成したことで、このLCDを使った実験ができるようになりました。当然ですが、これを使って「何か」表示したくなります。そこで、No.68で紹介したダイオード用カーブトレーサですが、新たに写真1のようなグラフィックLCDに表示させるのものを作ってみました。
単に面白そうと思って作ってみたのですが、実際に作るだけで十分に楽しめました。外部のオシロスコープを表示に使った場合と違って小型軽量ですし、どこにでも持って行って測れますので面白いです。
写真1. グラフィックLCDにダイオードのカーブを描く、カーブトレーサです。
2.回路
No.77で紹介したグラフィックLCDテストボードを使用し、写真2のように動作をチェックしながら進めました。図1のような回路とし、測定する方向は順方向側だけに限定しました。接続を変えれば良いのですが、マイナス側が必要なのはツェナーくらいなものでしょう。しかし、ツェナーには電圧が足りませんし、漏れ電流を測るには全くのゲイン不足です。という事で、順方向専用といって間違いありません。
写真2. バラックで動作チェックをしているところです。
図1. 全回路図になります。(画像をクリックすると拡大します)
動作としてはCPUで8ビットの値を出力し、それをD/Aコンバータで電圧にします。この電圧を基準にダイオードに定電流を流します。つまり、定電流をCPUから設定する事になります。ここはNo.81の定電流LEDチェッカーの回路と同じです。
ダイオードの両端の電圧はOPアンプで増幅し、CPUのA/Dコンバータに入れて数値化します。このOPアンプはゲイン1で、インピーダンスを高くするように27kΩを4個使っています。私のパーツボックスではE12系列で抵抗を揃えていますが、普通はE6系列を優先して使うため、27kΩなどは使った記憶すらありません。そのため、ふと気まぐれで使ってみたくなっただけで、全く迷惑な決め方です。追試する事を考えれば22kΩか33kΩを使うべきでしょうけど、少しだけ在庫の平均化もしたい・・という事でした。
D/Aコンバータは図2のような回路です。この場合はRと2Rの関係で作ります。12kΩと24kΩは入手しやすい組み合わせを考えての事です。もちろん10kΩと20kΩでも大丈夫です。
図2. D/Aコンバータの回路図です。(画像をクリックすると拡大します)
3.ソフト
D/Aコンバータで電流値を設定し、この出力電圧をA/Dコンバータで変換し、LCDにドット表示します。最初はリアルタイムで測定しながら、その度にドット表示をしていました。しかし、測定後半の線がチラついて見にくい事がありました。そこで一度メモリに入れて一度に書き換えるようにしした。これでカーブが書けましたが、これだけではシマリません。電流と電圧のグリッド線をビットマップで作って表示させました。これで表示としてはシマリます。
しかし、書き換えの度にグリッド線も消してしまいますので、一度全てを消してグリッド線ごと書き換えています。すると、今度は書き換えの度にグリッド線がチラついてしまいます。そこで、あまり高速で測定しないように、多少ループを遅く回しています。このあたりはもっと良い方法があると思います。これがクリアできないと、オシロスコープのようなものは作れません。
4.作成
単3×4本のスイッチ付き電池ボックスを用い、コバンザメというかヤドカリというか、このように基板を貼り付けてみました。No.78で紹介した「白色LED投光キット」を作成していて思いついた方法です。No.78の方がずっとスマートですが、これも面白いと思います。
写真3が電池ボックスに基板を合わせて、部品の位置を決めているところです。図3の実装図を作成し、写真4のように基板を作成しました。LCDは写真5のようにジャノメ基板にネジ止めし、ジャノメ基板はアルミ板にネジ止めします。アルミ板は電池ボックスに両面テープで貼り付けるという方法です。
写真3. 主な部品を集めて位置決めをします。。
図3. 基板の実装図になります。(画像をクリックすると拡大します)
写真4. 基板を作成したところです。
写真5. LCDを外したところで、このような構造になります。
このような電池ボックスは元々どのように使われるのか良く解りませんが、こんな小物が作れると面白いです。これからも同じ方法で何か作ってみようかと考えています。
5.測定
スライドスイッチはモードを切り替えます。FREEはフリーランで、画面を書き換えながら測定を続けます。SINGLEにすると、TRIつまりトリガーボタンを押す事で一回測定し、CLRで表示を消します。写真6はモードをSINGLEにしたまま、シリコン、ゲルマ、ショットキー、LED、抵抗1kΩを測ったものです。このように比較する事も可能です。CLRを押すまで表示はクリアしません。写真7が測定を行っているところです。
写真6. シリコン、ゲルマ、ショットキー、LED、1kΩを比較してみました。右上の電池マーク等は、ソフトの更新時に消しました。
写真7. 測定しているところです。ラグ板にはサンプル用ダイオードがハンダ付けしてあります。
6.おわりに
ダイオードのカーブなど測かれなくても、自作する上で困る事はほとんどありません。しかし、このようなカーブが測れると楽しいのも確かです。あまり役に立たないと思えるようなものでも、実は地味に活躍するものと思います。
使って困る事がありました。実はオープンとショートとの区別が付き難いのです。ショート時にはY軸に張り付いてしまいますので、見にくくなります。また、電流を基準としていますので、オープンの時にはX軸に張り付く上にほとんどドットが現れません。これはアナログオシロに表示させる場合と一番異なる点です。途中で電流基準⇔電圧基準をチェンジすれば多少は良くなるのかもしれませんが、簡単に作れるレベルではなくなります。
D/Aコンバータの設定など、随所にマズイところがあります。実は8ビットで0〜255ステップまでを設定できるのですが、実際には0〜63ステップの6ビットしか使っていません。これは実際にどの程度のカーブが描けるのか手探りで始めたため、ハードとソフトのマッチングが取れてないのです。また、OPアンプの一部は不要で、直接A/Dコンバータに入力しソフトで引き算すれば簡単に済むことに気が付きました。また、PWMを使えばD/Aコンバータも省略できるかもしれません。
まだまだ改良すべき点は多々ありますが、機動性の良さもあり結構気に入っています。そのうちに改良版の3台目を作ってみたくなりました。