エレクトロニクス工作室
No.87 健康UPカウンタ
1.はじめに
2月の健康診断の結果、LDLコレステロール値などで×を5個も貰いました。そのうえ脂質異常と判定され、検査するよう宣告を受けてしまいました。自転車で日本中を走り回った30年前には考えられないような大失態です。そこで近所の病院に行ったところ、「歩け」と言われました。そこで時間のある時は歩き始めました。しかし、それだけでは足りないと考え、家の中でも1階と2階の往復運動を始めました。これを1時間も続けて200往復すると、600m以上の山に登って下りた計算になります。
しかし、時間を計りながら回数を指折り数えるのは、実は大変なのです。疲れてくると、当然ですが混乱して来ますし、指カウンタではあてになりません。何しろ指は塞がっていますが、手すりを持っていないと危険という矛盾があります。
そこで写真1のような、タイマー付きのカウンタを作りました。電源をONすると時計が動き出します。階段を往復する度にボタンを押下するとカウンタがアップします。これで時間と回数が正しく管理できます。つまり、同時に健康がアップするというカウンタです。写真1は2分2秒が経過し、11回往復したとカウントしているところですが、これは絶対に無理な値です。M1はモード1を表示しています。
写真1. このような、タイマー付きのアップカウンタです。
2.回路
写真2が試験用ボードを利用し、バラックで試しているところです。この状態で、実際に何回も使いました。猛暑の中で汗だくになって使っていましたので、熱中症寸前だったかもしれません。このように、実際に使いながら少しずつ機能を追加して行きました。ボタンを押し損なったときに気が付くように、後からLEDを点灯させたのですが、これだけでは解り難いと更にブザー音を追加したりしました。これらはパラで動かしても良いのですが、ブザーが0.1秒でLEDを0.5秒と多少変えましたので、違う回路になっています。押した時のフィーリングだけですので、同じでも大差はありません。
写真2. 実験用のボードにて実験しました。
ジャンパーピンはモードを設定するものです。スライドスイッチの方が使いやすいのですが、後から追加したためスペース的に余裕がありませんでした。
このようにして作ったのが図1の回路図です。CPUにはAVRを使用し、8MHzのクリスタルオシレータを基準としてタイマーを使って10msのパルスで割り込みをかけます。時計は0時0分0秒から動かし、それにUPカウンタを付加しただけになります。ブザーは5Vを加えるだけで鳴動するタイプです。試してみると、5Vで10mA流れました。AVRのポートは出力電流40mAまで取り出せますので、直結する事ができます。なお、電池は単三型ニッケル水素4本の専用です。マンガン電池では電圧が高くなり過ぎます。
図1. 全回路図です。(クリックすると拡大します)
LCDは青地に白抜きの8文字2行を用いました。このLCDである必要は全くありませんが、種類によっては電源の極性が変わります。その点だけは注意して下さい。
4.作成
作り方としてはNo.83のダイオード用カーブトレーサ2と同様のヤドカリ方式にしました。ただ、電源スイッチは基板上に付け、電池ボックスのスイッチは使っていません。使わない方が基板面を有効に利用できるし、工作も簡単に済むと気が付いたからです。
図2の実装図を作成してからハンダ付けを始めました。写真3は作成を始めたところで、主要部品を乗せて位置の確認中です。右下の正方形はタクトスイッチです。良くある丸いスイッチでは、勢い余って押すと指が痛いので、面積の広いものを使用しました。
図2. 基板の実装図になります。(クリックすると拡大します)
写真3. 作り始めの様子です。
写真4が概ね配線が終わったところです。No.83と同様ですが、写真5のようにアルミ板に載せて電池ボックスに固定しています。ブザーのシールは剥がれてしまっていますが、あまりに煩いのでテープを貼っています。
写真4. 配線が終わったところです。
写真5. アルミ板に基板を載せて、両面テープで電池ボックスに固定する構造です。
5.ソフト
ソフトはBASCOM AVRを用いて作成しました。ここに示します。最初はタイマーもカウンタもフリーランさせていました。しかし、これだけではつまらないので、ジャンパーピンによってモードを選べるようにしました。J1とJ2がそれで、それぞれのピンが「無無」の時はフリーランです。「有無」にすると1時間タイマーになります。1時間でタイマーをピーっと鳴らして時計が止まり、カウンタアップも止めます。つまり1時間の回数トライアルになります。「無有」にすると5回のタイムトライアルになります。つまり5回押すまでの時間を計る、一種のストップウォッチです。この時は10ms単位になります。これは体重が多少軽くなった頃に、バドミントン用にダッシュする筋肉も鍛えたい、と欲張ったものです。「有有」にすると10回のタイムトライアルになります。このように派生させた機能については、それぞれ考え方もあるでしょうし、運動によって違ったパターンもあると思います。その場合はソフトを変更するしかありません。
押しボタンの制御は、一般的にはチャタリングの有無をチェックしてから先に進みます。しかし、この場合は他にボタンもありませんし、とにかく「押されたらしい」でカウント動作をしています。但し、ブザーを鳴らしている0.5秒間は、次の押下を検知しません。そんなに早く往復する事は不可能だからです。従って、間違って2度カウントするような不始末はありません。
AVRはタイマー1を使って10msの割り込みで時計を動作させます。8MHzのクリスタル発振器を使っていますのでプリスケーラで1/64分周し、125kHzをソフト上で作ります。これを1250回カウントして10msを作り、割り込みをしています。
6.効果
このカウンタを使ったから・・という事ではありません。運動しやすいツールを作っただけです。しかし、実際に使ってみると不思議なもので、運動するモチベーションが全く違ってきます。ほぼ1ヶ月で1キロずつ体重を減らし、2ヶ月後には×が5個から2個に減りました。残った×でも値は改善されています。特に中性脂肪は低下の一途で、出ていた腹もベルト穴一個分以上は減りました。ただ、LDLコレステロールについては今一つです。おそらく運動がきつ過ぎるのでしょう。私の場合は、LDLコレステロール値を下げるのを目的として始めました。しかし、体が少し軽くなるとバドミントン用の訓練になるかと思い、徐々にキツイ運動にシフトしてしまいました。もっと軽い運動を長く続けた方が良いのかもしれません。その場合、家の中を歩き回る回数をカウンタすれば良いと思います。
始めた頃は1時間で1階と2階の往復は140回程度だったのですが、少しずつ記録を更新し250回まで伸ばしました。これは800mを登って降りた事になります。最近は昼休みのバドミントンでも足腰が軽くなって、動きが良くなって来ました。もう少しで閃光のごとくスマッシュが決まるはず・・。(待っているんだN村)
100均に行くと野鳥カウンタのようなものがあると思います。しかし、時計とカウンタの付いた、このような自作も楽しいですし、趣味だけではなく健康にも良さそうです。但し、使いすぎて熱中症になったり、膝を痛めないようにして下さい。間違っても階段で転んだりしないで下さい。この歳になると、何でも程々が良いのでしょう。