エレクトロニクス工作室
No.93 アダプタ式UV計
1.はじめに
初夏になると太陽が眩しくなり、UV(紫外線)による影響が気になって来ます。そこで、デジタルテスターに付加して測る、写真1のようなUV測定用のアダプタを2台作ってみましたので紹介します。これで外のUVの強さが一応は定量的に解りますし、UVカットとされるガラス等の効果を測る事ができます。
写真1. このように2波長をを別々に作ったUVセンサーです。基板の色が違うのは、余った切れ端を使ったからです。
2.UVについて
紫外線は可視光線の端にある紫よりも波長が短いという事で、ultravioletつまりUVと略され、波長をnmで表します。可視光の範囲は大体380〜810nmですので、UVは380〜400nm以下の波長となります。但し10nm以下になるとX線の領域になります。可視光に近い400〜220nmを近紫外線(near UV)と呼び、220〜10nmは遠紫外線(far UV)と呼びます。
この他にUV-A〜Cの3種類に分類する場合もあります。可視光に近く、割と危険の少ない400〜315nmのUV-Aは、ブラックライトに使われます。オゾン層が減ると増えてしまう315〜280nmのUV-Bは、日焼けや皮膚がんの原因になります。光エネルギーが大きく危険で、殺菌灯に使われる280〜100nmのUV-Cは、大気に阻まれて太陽からは届きません。以前ですが、Z80のROM消去に使われていたのは殺菌灯、つまりUV-Cの領域です。また、UV-Cは炎からも出ますので、火災センサーに使われます。
UVの強さについてはルクスではなく、一般的にはμW/cm2が使われています。地方や高度によって異なりますが、初夏のUVの強い時期には3000〜4000μW/cm2以上の値になるようです。これをアダプタ方式で測ろうとするものです。なお、積算値についてはJ(ジュール)を用い、mJ/cm2で表します。
3.回路
UVセンサーには浜松ホトニクスのG6262とG5842を使ってみました。秋月電子でG6262は800円、G5842は1000円で入手したもので、小さいダイオードとしては、結構高いようです。現在もカタログにあって入手できますし、別のセンサーでも以下の方法で計算する事ができます。
G6262のデータシートを見ると、受光面積は0.58mm2つまり0.0058cm2です。センサー感度は470nmで0.2A/Wつまり0.0002mA/μWとなっています。20000μW/cm2がセンサーに入ったとすると、20000μW/cm2×0.0058cm2×0.0002mA/μW=0.0232mAが出力されます。8.6kΩつまり8600Ωを負荷とすると、両端の電圧は、8600Ω×0.0232mA=200mVとなります。これをデジタルテスターの200mVレンジで読むと、200mVが20000μW/cm2のレンジとなります。86kΩの抵抗を負荷にすると、200mVが2000μW/cm2のレンジとなります。
G5842のデータシートを見ると、同様に計算できます。受光面積は0.0058cm2です。センサー感度は370nmで0.06A/Wつまり0.00006A/μWとなっています。20000μW/cm2がセンサーに入ったとすると、20000μW/cm2×0.0058cm2×0.00006mA/μW=0.00696mAが出力されます。28.7kΩつまり28700Ωを負荷とすると、両端の電圧は、28700Ω×0.00696mA=200mVとなります。従って、200mVレンジが20000μW/cm2のレンジとなります。287kΩの抵抗を負荷にすると、200mVが2000μW/cm2のレンジとなります。但し、高抵抗になりますので、使用する電圧計の入力インピーダンスが影響する事になります。
このように図1と図2のような感度切り替えの回路になりました。もちろん電圧計を自作する事で、専用のUV計とする事もできます。私の場合ですが、時々には外で測ってみようかな、眼鏡のUVカットは?・・程度の使い方ですから、アダプタ式で十分と考えました。頻繁に使用するのであれば、No.91のようなデジタル電圧計と合わせて自作すれば良いと思います。
図1. G6262の回路図です。(クリックすると拡大します)
図2. G5842の回路図です。(クリックすると拡大します)
なお、使ったセンサーのG6262は、図3のように280〜580nmの波長に対して感度があり、ピークは470nmです。可視光からUV-Aにまたがった波長となります。感度の範囲からすると、濃い青色あたりがピークとなるようです。UVというよりも、可視光の端付近を測るような用途向きかと思います。
図3. G6262の特性です。(浜松ホトニクス社さんの許可済みです)
G5842のセンサーは図4のように260〜400nmの波長に対して感度があり、ピークは370nmです。UV-AとBの範囲を測るような特性です。一台だけ作るのであれば、G5842の方でしょう。以前にあった秋月電子のキットのセンサーも、このG5842でした。センサーによって感度の特性が異なりますので、測った値も当然変わってきます。G5842であれば、370nmの波長を持ったUVが入射した時だけ、計算どおりの値を示します。このような特性を知っておく必要があります。
図4. G5842の特性です。(浜松ホトニクス社さんの許可済みです)
このままでは解り難いので、図3と図4をまとめて図5を作ってみました。出力電圧は抵抗で合わせてありますので、同じ強さの光が入射した場合は、出力電圧は同じになります。しかし、センサーの感度は波長によって異なりますので、その感度分布を%としてグラフ化したのが図5になります。最大感度=出力電圧を計算している波長を100%としています。つまり、UVやUVカットの状態をザックリ程度に知ることができます。ついでにUV-A〜Cの波長を示してみました。
図5. 出力レベルは同じになるので、見やすく作ってみました。目安程度にして下さい。(クリックすると拡大します)
4.作成
簡単な回路ですので、どのようにもまとめる事ができます。実装図は作らずに、そのまま配線してしまいました。写真2と3が部品を取付けて完成したところです。写真4がG6262を使った方のハンダ面です。出力はクリップとしましたので、これをデジタルテスターに接続します。もっと使いやすい端子もありますので、使い方に応じて工夫してみて下さい。少なくともバナナジャックの方が直接テスターに接続ができるため、扱いやすかったと思います。なお、センサーのダイオードは、チップ型の3端子ですので、ひとつはNCとなるのですが、強度の問題もあるのでハンダ面からハンダ付けで固定しました。この様子を写真5に示します。
写真2. G6262のUVセンサーです。
写真3. G5842のUVセンサーです。
写真4. G6262を使った方のハンダ面です。。
写真5. このように3ヶ所で基板裏からハンダ付けしています。
仕上げに基板の裏側には写真6のようにゴムのシールを貼って、ハンダ付け部分が出ないようにしました。
写真6. ハンダ面はゴムのシールを貼って触れないようにしています。
5.使用感
誤差については比較する測定器などなく、良く解りません。しかし、一応数値として測れるのですから、誤差は不明としても十分に強弱を知ることができます。頻繁に測ったため、デジタルテスターを持ってウロウロする羽目になりました。この時だけは一体化・・と思いましたが、仕方ありません。
色々なシチュエーションで測定してみました。その結果を表1に示します。同じ条件でもセンサーが異なれば、測定結果に差が出るのは当然です。データを集めると、どのような感じでUVが存在するのかが解るように思います。(1)〜(4)は同じ時間に同じ場所では測ったものです。(1)の直射に対して、(3)の眼鏡や(4)のサングラスは見事にUVカットが効いていました。それに比べて、コーティングの剥がれた古い(2)の眼鏡は、全く効かなくなっている事が解りました。今後は外出には使いません。サングラスは100均でしたのでUVカットを疑っていたのですが、見事にカットしていました。
表1(クリックすると拡大します)
多少は不便ですが、μW/cm2の単位でUVを測る事ができました。CPUのA/Dコンバータを使って表示するならば、2波長を同時に表示したいところです。このような測定器は市販でもありますが、構造はほぼ同じではないかと思います。性能はセンサー次第ですので、簡単に自作できます。一番の違いは比較できる体制があるかどうかでしょう。
6.終わりに
何でも興味を持って何でも測ってやろう、と作った冶具です。このような一つ一つの積み重ねが、技術の向上になるのだと思います。こんな事が「興味の連鎖」となって延々と続いてしまいます。
なお、UVといえばDNAを損傷して癌を起こしたり、日焼けを起こすなど一般的には悪者扱いです。しかし人間にとって、ビタミンD3を生成する役目がある事も忘れてはいけません。