1.はじめに

今年のハムフェアでは、JL1KRA中島さんが中国製のガレージキットであるKN-Q7Aの紹介をしていました。CQ誌の5月号にも紹介記事があります。ハムフェアの2日目になって急に作ってみたくなり、「送って」と依頼したところ、翌日の月曜日にはもう届いていました。ハムフェアの打ち上げに参加し、その夜には荷物を出すという、まるで神様のような行動力に敬服した次第です。

このようなキッカケで作ってみた、写真1のような7MHzのSSBトランシーバーキットKN-Q7Aを紹介します。

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写真1. 7MHz SSBトランシーバーのKN-Q7Aです。

2.このキットについて

詳しくは情報共有サイト(http://www.geocities.jp/mx6s/bd6cr/)を見て頂くのが良いと思います。7MHzのSSBトランシーバーですが、14MHzのバージョンもあるようです。もちろん、あれもこれも付いているようなトランシーバーではありません。AGCもSメータもありませんし、VXOですので動ける周波数も限られています。スピーカーも外付けですので、別途用意する必要があります。周波数の直読はできません。構造も機能も極めてシンプルで、必要最小限というトランシーバーです。

部品はキットに入っている基本的なものが写真2になります。写真3のマイクも入っています。オプションのマイクアンプの部品セット等が写真4になります。ICは信頼性を考えると直接ハンダ付けした方が良いのですが、トラブった時を考えてソケットが加えられています。VXOの水晶も、ソケットを使って交換する事ができます。2個パラと1個の違いを試したりできます。もちろん便利なのですが、移動に使う時などを考えると、直接ハンダ付けした方が信頼性は上がります。このあたりは作る側の判断となります。

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写真2. 基本的な部品になります。

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写真3. 入っているマイクです。

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写真4. オプションの数々です。

製作の難度は「やや高い」といったところでしょう。初心者の方が単独で組み立てるのは、ちょっと困難があるかもしれません。おそらく、図面が読めて、部品が解り、テスターが使え、的確にハンダ付けが出来る、というレベルはないと大変かと思います。中島さんはボランティアで頒布をしていますので、動かない場合は迷惑をかけない範囲を考えて、相談をすると良いでしょう。

ケース付きの完全キットですので、パネルの工作でゴリゴリとする事はありません。但し、ケースにヒートシンク用の穴を開ける必要がありますので、ドリルは必要になります。このようなキットが12000円で入手できますので、工作好きだとつい触手が伸びてしまいます。

3.作成

写真5がキットの部品を出したところです。説明書等は前述のサイトからダウンロードします。まずはこの印刷と、ヒューズ入り電源ケーブルの作成からスタートします。このあたりは私が説明するよりも、説明書を見て頂くのが速いと思います。中島さんが日本語版を作られていますので、英語の苦手な私でも何ら不自由はありません。それも決して訳した感じの文章ではなく、日本語として説明されていますので、何ら違和感がありません。

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写真5. 部品を取り出すとこのようになります。

作成は、ステップ1〜8に分けて作るようになっています。ステップ毎にチェックをしながら進めますので、早い段階でトラブルを見つけることができます。私の場合、ステップ7までは順調に進み、この時点で受信が出来る状態になりました。ただ、最後のステップ8は送信部を一気に作るようになっています。ここでトラブルがあると、ケースにネジ止めしたトランジスタを何回も外す事になります。というより、なってしまいました。一度トラブルになりますと、ハンダ付けの確認でもトランジスタをケースから外しての作業となり、とても面倒になります。ケースの構造はスマートなのですが、ここだけは仕方ありません。

私がトラブルとなったのが送信時の切り替えでした。送信時に切換えた時の電流を測って、それよりも60mA増えるようにバイアスを調整するのですが、それ以前に送信に切り替わりません。最初は全く解らずリレーを外して単体で動く事を確認したりしました。これが問題ないので、マイクコネクタと、基板のコネクタ間を疑いました。すると、基板側コネクタの順序が反対と気が付き、修正しました。図面の端子番号を見て配線すると、間違いの元なるようです。これでリレーも元気良く動き、送信時の電流も調整できました。このようなチェックをする場合、基板をケースから取り出して送信をすると、ファイナルを一気に壊す心配があります。しかし、送信しながら基板のハンダ面からのチェックを行いたい場合もあります。非常に悩ましい状態になります。写真6がほぼ完成した基板の様子です。

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写真6. ステップ7あたりでの基板です。

ところで、少し説明書と異なる作り方をした部分があります。コイルはバイファイラ巻きが3個ありますが、インピーダンスを合わせるだけなので、バランスを取る必要はありません。太いワイヤーを無理してヨジッて巻く事もなかろうと思い、10t巻きをして途中でタップを出しました。このコイルが写真7です。この方が工作的に簡単だと思います。どこが本当に最適なのか、1巻きずつ探る事もできますが、まだ試してはいません。また、Mコネクタは外側からコネクタを付けるようですが、これはデザイン的に気になります。私は写真8のように、内側から取り付けています。この方がスッキリすると思います。写真9が作成したトランシーバーの内部で、改造前のオリジナル状態となります。

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写真7. コイルはバイファイラでなく、10回巻きの中央にタップを出しました。

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写真8. Mコネクタは内側から取り付けました。スピーカー用のイヤホンジャックのネジを付けていません。というよりも付けられませんでした。

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写真9. 完成したオリジナルの状態です。

4.改造

まず問題となるのが、マイクレベルとなります。マイクは8ピンでアイコム製とコンパチですが、マイクの出力が1V程度ないと、変調が浅くなります。そんなマイクあるの?と思いますが、一部にはあるらしいです。そこで、最初からマイクアンプが必要となります。オプションにマイクアンプの部品セットがありますので、これも作りました。

このゲインは使用するマイクによりますので、各自で検討して下さい。基板を作成したところが写真10のようになります。この状態で動作の確認を行い、パネルの裏側に写真11のように貼り付けます。写真12が完成したところです。これで普通の感じでマイクが使えるようになります。内部の様子も写真13のようになります。

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写真10. マイクアンプを作ったところです。

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写真11. パネルの裏側に両面テープで貼り付けました

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写真12. 改造後の様子です。

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写真13. 内部は最終的に?このようになりました。

この他、ハウリングを起こす問題があります。この対策もマイクアンプの部品セットの説明書にありますので、同時に対処しました。スピーカーマイクを使う場合には必ず必要となるでしょう。あまりゲインを上げなければ良いのですが、うっかりするとハウリングを起こしてしまいます。このあたりは、完成度の問題というのか、楽しみを残しているというのか・・?

その次の改造を考えると、SメータやVXOの幅とか、何かと手のかかりそうなトランシーバーです。DDS化するのも面白いと思います。今は未定ですが・・。

5.使用感

TSSに申請をしないと使えません。受信としては全く問題なく快調に受信できます。AGCがないので音量の強弱がありますが、感覚的にも感度的にも何ら問題は感じません。送信波もスプリアス的にも波形的にも問題ありません。ただ、少し気になるのが送受切換え時のクリック音です。GAINの位置に関係なく結構な音がしますので、何らかの工夫があった方が良さそうです。

トータル7〜8時間で作ったと思います。その他に改造をしたり、結構楽しい製作でした。まだまだ終わる事のない改造が続くのかもしれません。このようなキットを作ってしまう、中国の勢いを感じます。日本でも40〜50年前はリグのキットが沢山ありました。電子技術を支えるという意味からも、日本でも欲しいキットと思います。