1.はじめに

自作をするには必須のハンダ付けですが、この煙はどう見ても健康には良くありません。過去にはフィルタを通して浄化する無煙工作台を作って、モービルハム誌に記事を書いた事もあります。今回はこれを更に進め、室外へ排煙する写真1のようなシステムを作ってみました。

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写真1. ハンダ付けの煙を一網打尽に排煙します。

もちろん、部屋の状況によっても作り方は変わると思います。しかし、健康あっての趣味ですので、いつまでも元気に健康で自作を楽しみましょう。

2.部品

このような工作をする場合は、入手できる部品が問題になります。パイプとかホースが主ですので、このような部品については全くシロウトとなります。近くのホームセンターで購入できるものを基本に探してみました。まずはネットで検索し、どのような部品があるのかを調べる事も重要です。

要となるホースですが、掃除機用や洗濯機用のホースは家庭にありますし、補修用部品として安価に入手も可能です。しかし、煙を吸うには少し細いように思いました。掃除機のように強力なモータを使えば良いのでしょうけど、騒音も作業の邪魔ですし、小型のFANでは風量が心配です。太すぎると扱いが面倒ですが、なるべく太く短く使う方が吸入効率が良いはずです。そこで工業用ダクトのホースをWEBで探して見当を付けたうえで、近くの大型ホームセンターに出かけました。内径が50mmの写真2のようなホースが74円/10cmでしたので、余裕を見て2m購入しました。実際に使ったのは80cmで済みました。

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写真2. 工業用に使うホースを探しました。

ホースはスパイラル状のため切り口が扱い難いので、写真3のような専用のカフスも購入しました。カフスというのは、ダクト用のホースを作っているメーカが、径とスパイラルに合わせて作っている端末処理用の部品になります。写真4のようにネジ込みでしっかりと固定されます。

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写真3. ホースと対の専用カフスです。

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写真4. カフスの内部にはホースに合った螺旋が切ってあり、ねじ込む事で固定します。

これらをカゴに入れて他の売り場を探していると、水道用の硬質塩化ビニル管売り場に写真5のような50mmと100mmの異径の継ぎ手が目に入りました。インクリーザと呼ばれるようです。この50mm側がカフスとピッタリと合って、落下しません。その上に着脱も容易です。よって、この100mm側の中に吸い込み用のFANを入れる事を考えて、買って来ました。写真6のようにカフスがピッタリ入ります。

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写真5. 異径ジョイント VUIN 100×50

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写真6. このようにカフスがピタリと入ります。

外へ排出する部分にもカフスと50mmVU管を使用しました。写真7は90度のエルボに数cmのVU管を入れ、ソケットに接続するところです。ここが部屋の外と中を仕切る板の位置になります。

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写真7. 外に排出する部分の組み立てです。

また、写真8,9のようなホースを壁などに固定する金具も買って来ました。この他にも、使えなかったものを含めていろいろと買い込んで来ましたが、慣れない部品では多少の無駄も出てしまいます。

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写真8. 同じ売り場にあった専用の金具です。

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写真9. これは一般的な金具 写真8の固定用になります。

FANは冷却用のものを用いました。AC100V用でもDC12V用でも良いのですが、照明と同じ電源にする方が面倒がありませんし、電源コードが2本というのはちょっといただけません。一応AC100V用でも静かに回るのを確認はしました。風量的にはDC12Vのものでもあまり変化はありませんでした。

LEDは円盤型のもので、12V用です。明るさは好みですが、FANと同じ電圧のものの方が配線が楽です。また、後にはFANがありますので、スペース的には平べったい円盤型が使いやすくなります。良くある電球の形状は実装的にNGです。

3.構造

図1のように工業用のダクトホースとパイプを外まで接続し、PC用の冷却用FANを使って排煙するものです。ダクトホースは両端に専用のカフスを付け、収まりが良いようにしています。

ホースの室内側はFANによって煙を吸い込むように工作をしています。また、手元が明るくなるように、FANの中心付近にLEDの照明を取付けました。FANの中心付近は風量にあまり影響を与えないからです。

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図1. 全体の接続図になります。商品名が読めるものは記入しました。(※クリックすると画像が拡大します。)

室外側は、窓を少し開けてアルミサッシの間に板を挟み込み、この板の丸穴からから外に出すようにしています。雨が入らないように下向きに排出します。90度エルボだけでも何とかなるのですが、室内側には余裕を持たせています。これは、ホースを入れようとしたときに万一90度エルボが外れてしまうと、2階から下の車を直撃してしまうからです。そのような心配が無ければ、90度エルボだけで十分です。

4.回路

電子工作というよりも、ほとんど日曜大工に近いような気もしますが、一応図2のような回路になります。なるべく強力なFANを用い、LEDで手元を照らしながら煙を吸引します。特にどうという回路ではありません。ただ、スイッチは個々に付けています。FANはどうしても多少の騒音が出ますので、こまめにON/OFFできる方が便利です。ライトだけで照明として使う場合もありますので、FANと同時に消えてしまうと不便です。

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図2. 電気的な回路図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

5.作成

まずは煙の吸い込み口の工作です。例の異径ジョイントの中にFANを入れます。プリント基板をカットし、写真10のような円盤を作りました。これに写真11のようにFANを取り付け、L金具で異径ジョイントの中に固定します。この位置はなるべく奥の方が良いようです。もちろんスイッチの位置との兼ね合いで決めます。FANの後はホースになりますので、風の流れにとっては抵抗になります。ホースに入り切らずに反射してくる煙がありますので、なるべく奥の方にFANを置いた方が、取りこぼしが少なくなります。ラッパ状の方が良いのかもしれません。なお、このような円盤を省略すると風の流れが乱れ、煙の反射が多くなりますので効率が下がります。

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写真10. プリント基板をこのようにカットしました。

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写真11. FANはこのように取り付けます。

入り口のところにはアルミを細く加工し、カラーを使って写真12のようにLEDライトを固定しました。なるべく風の流れを邪魔しないように中央に取り付けています。ホース側から見ると写真13のようになります。

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写真12. LEDライト固定の様子です。

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写真13. ホース側から見た内部の様子です。

排煙口のところは、写真14のように窓のサッシに合わせてベニヤ板を切り、これに丸い穴を開けました。木工細工は苦手なのですが380円で「引廻し鋸」を仕入れて使ってみると、案外と簡単に丸い穴が開けられました。写真15は開いたところです。この穴には写真16のようにパイプを通し、接着剤で固定します。使わないときには外して置いておきます。ハンダ付けする時にはサッシの中に差し込んで、ホースを接続します。

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写真14. 丸い穴あけは至難の技です。

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写真15. でも結構簡単に開きました。

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写真16. 板の中にパイプを通して接着剤で固定します。

ホースの出口は、写真17のようにサッシから外に出しています。冬もそれ程は寒くなく、夏にも問題なく使用できます。90度で下側に向けていますので、雨が入り込む事もありません。室内側に多少の長さがあるので、これを抑えながらホースのカフスを入れる事ができます。これが無いと前述のように、一気に外れて落下する危険があります。写真18はカフスを接続したところです。ブラインドは閉まりませんので写真19のようになりますが特に支障はありません。

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写真17. 窓のサッシに挟み込みます。

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写真18. ホースをカフスから差し込みます。

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写真19. 使用中はこんな感じになります。

6.使用感

順調に排煙し、ハンダ付けが楽しくなります。北側の部屋で使っていますが、真冬の北風にも負けず排煙します。恐らく下に向けて排出するのが良かったのだと思います。もちろん、ハンダ付けする直近で使わないと完全には吸い込みません。ハンダ付けする位置を工夫する必要もありますし、室内の風の流れで邪魔される事もあます。それでも、煙がシュポッと吸われて行くと快感です。効果が定量的に測れるわけではありませんが、90%以上は排出できていると思います。もちろん、最終的には部屋全体の換気も必須になります。

万が一ですが、FANがホースから外れて手元に落下すると、基板を壊したり火傷する事も考えられます。しっかり入れた後で、養生用のテープでも貼っておけば安心でしょう。

また、写真20のように紙でフードを作ってみると、更に吸い込みやすくなります。使い方にもよりますが、かなり効果はありそうです。あとは基板を固定させる冶具などの使い方で、ハンダを使う位置の調整となります。

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写真20. フードを作るとか、使い方のアイデアは豊富に出てきます。

最近ではハンダ後の喉のムズムズも無くなりました。これで健康に100歳まで自作できそうです。