1.はじめに

40年も前の事ですが、横浜に住んでいた頃の私の部屋は6畳のプレハブ小屋にありました。無線や工作には良いのですが、夏の夜などは暑くて眠れたものではありません。そこで当時流行っていたウィンドファンを窓に取り付け、夜は回しながら休んでいました。しかし、なぜかタイマーが付いておらず、とても不便でした。そこで、当時入手が容易であったジャンクの洗濯機用タイマーをアルミシャーシに入れて、外付けタイマーとして使っていました。眠った頃(たぶん1時間後)に切れるようにするのですが、欠点がありました。それは切れる瞬間に「パッチン」と大きな音を出すので、目が覚めてしまうのでした。たぶんアルミシャーシが「パッチン」を増幅していたのでしょう。それでも暑いよりずっとマシで、便利に使っていました。

この洗濯機用タイマーは、当時の2層式洗濯機には必ず付いていたゼンマイ式のもので、CQ誌などでもジャンク屋の広告に載っていたほどの定番ジャンクでした。今では絶滅危惧種ですので、入手は困難でしょう。

昨年の夏に写真1のような正方形の扇風機を購入しました。これを窓に置いてウィンドファンもどきとし、タイマーで眠った頃に「そっと」切るという目的で作った写真2のような「おやすみタイマー」を紹介します。このようなタイマーは様々な用途に使われると思います。

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写真1. 購入した正方形の扇風機です。

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写真2. 作成したタイマーです。

2.回路とソフト

SSR、つまりソリッドステートリレーのキットを秋月電子で購入し、これをAVRを使って制御するものです。このキットでは8AまでのAC100VをON/OFFする事が可能です。私の目的としては扇風機のタイマーOFFですので、十分に余裕があります。ロジックレベルで制御できるようにトランジスタが入っていますので、直接CPUから制御する事ができます。扇風機でしたらSSRの放熱器は必要ありませんが、1A以上流す場合には放熱を考える必要があります。

CPUにはAVRのATmega168Pを使い、ソフトで時間を設定できるようにしました。本当はtinyで十分と思うのですが、どうしてもタイマーがうまく動かせずにATmega168Pになっています。動かない理由は良く解りません。その結果、図1のような入出力ピンに余裕のあり過ぎる回路になってしまいました。フラッシュメモリも余裕あり過ぎです。

目的を考えると細かい時間の設定や表示は不要です。そこで1〜6時間の6パターンとしました。真暗な中でLEDが派手にチラチラするのも考えものです。そこで、LEDを6個使って残り時間を暗めに表示するだけとしました。LEDの意味は、例えば2個点灯中とすると残り時間は1〜2時間となります。1個の場合は1時間以内となります。PWMを使って徐々に暗くしていく方法もあるのですが、これも上手く動かせずでした。結局は簡単なソフトで済ませています。

例えば、残り時間1時間30分で2個点灯中に、ボタンを一回押すと3個点灯します。この意味は1時間アップして2時間30分になったという事です。もう3回押して6個点灯すると、残り5時間30分となります。また押しても6個点灯は変化せず、残り時間も5時間30分で変化しません。このようなソフトの動きをします。細かい部分については、全くこだわりを持たずに作っています。

なお、PCの環境はWINDOWS XPで、BASCOM AVRの製品版 VER.1.11.9.8を使ってコンパイルしています。書き込みはAVR ISPmkII ですが、基板のISP端子との接続には自作の変換ケーブルを使っています。これ以外の環境についての確認はしていません。

LEDとシリースに入っている2.7kΩは、暗めに点灯させるために大きめの値を使っています。E6系列から外れた2.7kが余っていたため使っていますが、2.2kや3.3kでも構いません。まれに行いたくなる在庫調整で、全く迷惑な設定だといつも反省しています。

本来時計を作るならば、外部にクリスタルを使って基準にするのが普通でしょう。最低でもセラミック発振子と思います。しかし、誤差を気にするようなタイマーでもないので、内部のCR発振器を使っています。正確なタイマーにしたいのであれば、このままではNGです。

ソフトダウンロード

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図1. 全体の回路になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

3.作成

まず写真3のSSRキットを作成します。部品は写真4だけですので、写真5のようにすぐ完成すると思います。これが正常に動作する事をチェックします。もちろんAC100Vを扱いますので、十分に注意をして下さい。なお、AC100V用の端子はこの時点では取り付けていましたが、ケースに入れる時には外しています。

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写真3. このような秋月電子のキットです。

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写真4. 部品はたったこれだけです。

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写真5. すぐに完成してしまいます。

テストボードを使用してソフトを作っているところが写真6です。これで回路を決め、全体的に問題のない事を確認しています。動作確認といってもなかなか6時間も待てませんので、ソフトの中で「早回し」しました。次にCPU基板を作成したところが写真7,8です。

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写真6. テストボードを使ってソフト開発をしているところです。

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写真7. CPU基板を作成したところです。

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写真8. 裏側です。

次にケースの加工に入ります。ケースはタカチのプラスチックケースSW-125Bを使用しました。使うのは夜間ですので、アルミを踏んで怪我をしないように、プラスチックケースにしました。同じ理由で、スイッチ類もトグルスイッチ等の踏んで痛いものは使っていません。写真9のように穴あけを行い、部品を取り付けると内部は写真10のようになりました。

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写真9. ケースに穴あけをしたところです。

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写真10. 部品を取り付けた内部の様子です。

AC100Vを5Vにするために、古い携帯のACアダプタを使いました。これが一番小型だったのと、手持ちがあったからです。SSRとAVRの電源ですので消費電流は極めて少ないのですが、これより小型の電源は手元にありませんでした。テスターで測ったところ5.7Vありましたので、AVRの最大電圧を超えないように1588を入れて多少下げています。写真では見難いのですが、AC入力には安全のためにコネクタボディを使っています。

AC100Vのルートは特に注意をして配線します。困ったのが、ヒューズから2本のワイヤーを出したかったのですが、入りません。仕方なくコネクタで付けてからビニールテープで処理しています。写真10の緑の部分がビニールテープです。写真11が完成したところです。そして最終的なチェックを行います。この時は6時間かけて確認しました。思ったとおり誤差があり、1時間は60分ではなく57分51秒でした。温度によって多少は変化するとしても、これで十分です。

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写真11. 完成し、最終的なチェックをしているところです。

4.使用感

SSRですので、音を出さずにONからOFFになります。当然ですが「パッチン」で目が覚める事はありません。もちろん、扇風機が止まるのですからか風切り音の変化はありますが、全く気が付くことなく快適に眠れます。

このようなタイマーは、結構使い道があります。扇風機以外にも、充電器の元電源を切ったり、テレビの電源を切ったりする事も考えられたりします。ONタイマーとして、冬の朝に暖房を入れる事もできるでしょう。もっとも、この程度の機能は最初からありそうです。