エレクトロニクス工作室
No.108 Comet40
1.はじめに
このBEACONの連載スタートは、サイテックの7MHzダイレクトコンバージョン受信機スパロー40からスタートしました。これはなかなか面白い受信機で、実は2台を作っています。この次世代の受信機としてComet40が作られました。同じようなコンセプトと思いますが、動作の安定性は向上しているようです。早速入手して写真1のように作ってみましたので紹介します。
写真1 このようにまとめたCOMET40です。
2.回路
図1に示すような回路図になります。AFアンプだけはTA7368Pを使っていますが、サイテックの内田さん得意の2SC1815を並べた回路です。これは私には考えの及ばない作り方です。
VFOはコアを抜いた空芯コイルで発振させ、調整によって7.0〜7.2MHzをカバーします。コイルは手巻きです。同調用のコイルもトロイダルコアを使った手巻きで、共振点の調整はトリマーで行います。
図1 全回路図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)
3.作成
写真2がキットに入っている全部品になります。VFOはLC発振で、まずはコイルの手巻きをします。写真3が加工前のコイルです。コアは使いませんので、抜いてしまいます。このコイルをほどいて、巻きやすいように写真4のように掃除します。巻き方はそれぞれあると思いますが、私はマジックハンダで巻き始めを固定し、5回巻く度に固定しました。後からの追加巻きはできませんので、1回程度余分に巻いておくと良いでしょう。Lメータがあれば、目的のインダクタンス(3.4μH)に近い事を確認しておきます。私の場合は、プラス1回の25回巻きで合いました。ワイヤーの太さに誤差があるので、多めに巻いておくのが安全です。
写真2 キットに入っている部品になります。
写真3 VFOに使う、加工前のコイルです。
写真4 このようにボビンだけにしてコアも抜きます。
写真5のようにコイルの足に戻します。そして密着に緩みがないように締めておきます。基板ができたところで発振周波数を確認し、7MHzの200kHzをカバーできればOKです。この後で、写真6のように高周波ワニスを塗って固定しました。このように確認を行い、最終的にはケースに入れて微調整を行ってからガッチリと固定します。今では高周波ワニスは、サンハヤトのWEBを見ると生産中止品です。マニュアルにあるように、100均のマニキュアを入手して塗るのが良いのでしょう。
写真5 巻き終わりをコイルの足に戻します。
写真6 発振周波数の確認を行い高周波ワニスを塗りました。
VFOのコイルの調整は、周波数カウンタを使います。最初はSGの信号を受信しながら試みたのですが、トリマーを僅かに回すだけで周波数が飛んでしまい、追いつけません。(やってみると解ります)そこで周波数カウンタを持ち出しましたが、これで簡単に合わせられました。
写真7のような、トロイダルコアを用いた同調用コイルも手巻きします。つまり、基板のハンダ付けを始める前に、手巻きコイルを作っておきます。
写真7 トロイダルコアも巻きました。
前後しますが、写真8が部品取り付け前の基板です。これに部品をハンダ付けして行きます。全部付け終わったところが写真9になります。写真10のように動作確認をしました。ここで上記の周波数確認モードになります。なお、VFOの手巻きコイルは、最終的にOKとするまでは2箇所のハンダ付けにしておきます。5箇所のハンダを外すのは大変でした・・。
写真8 部品取り付け前の基板です。
写真9 部品の取り付け完了です。
写真10 動作確認をします。時系列的にはこの後が写真6になります。
VRでは使える角度が120度程度なので、200kHzをカバーしてしまうとチューニングが大変です。そこで写真11のように10回転のヘリカルポテンションメータを持ち出してフィーリングを試すと悪くありません。多少ステップで変化するような感覚はありますが、何ら違和感はありません。1kΩなので少々電流が多めですが問題はないでしょう。10kΩ程度が良いのでしょうけど、これを使う事としました。
写真11 10回転で同調してみると、同調しやすいです。
ケースはリードのPS-2を用いました。高さがあって、裏側に単3電池のホルダーが取り付けられるからです。外部電源を使うとか、ケース内に電池を入れるのであれば、もう少し背の低いケースで十分です。乾電池をケース内に入れる方法もありますが、私としては外の方が良いと思います。交換の度にケースのネジを開けるのでは不便ですし、ケースのネジ山が傷みます。アルミに切った3mmネジはもろいです。乾電池を放置してしまった時の液漏れはどうにもなりませんが、外にあれば出し忘れや、「めんどう放置」も少なくなるでしょう。写真12がケースに穴あけをしたところです。
写真12 リードのPS-2に穴あけしたところです。
スピーカは昔々からあるタイプです。これをホットボンドで固定しました。内部の様子が写真13です。単3電池のホルダーは、写真14のようにケースの裏面に取り付けています。
写真13 内部はこのようになりました。
写真14 ケースの裏面です。
基板には周波数カウンタ用の端子があるのですが、ケースに入れる時に省略してしまいました。これは外に出しておく方が調整もやりやすいでしょうし、使い勝手が良かったと思います。
ケースに入れた事で条件が変わりますので、発振周波数がずれる事もあります。ここで最後の微調整を行ってケースを閉めます。実際には微調整の必要はありませんでした。微調整で済まないような事態になると、再びコイルの巻き直しやコンデンサでの調整になります。このようにならないように、予め確認しておく事が重要です。
4.使用感
ダイレクトコンバージョン受信機ですので、スパロー40と比べて、それ程の差が出る事はありません。同じような感度と思いますが、その安定度はかなり向上していると思います。ボリュームを上げた時のフィーリングは明らかに向上しています。もちろんDCなのですから根本的なところは同じです。AGCがないので音の強弱があるとか、クリスタルフィルタがないので逆サイドバンドが聞こえてQRMが多い、等々は仕方がありません。