1.はじめに

この工作教室も回を重ねて来ました。どうしても「同じもの」や「同じようなもの」が出てきます。それには理由があり、「別の方式で動くものを作りたい」という事があるからです。LメータとCメータは一番多いと思いますが、今回はJARLの栃木県支部の工作教室で作ったという、異色のものです。

JARLの地方支部では工作教室などの催しが行われます。私の所属する栃木県支部でも毎年のように工作教室があり、私も時々参加しています。もちろん単なる参加者です。2012年の秋には那須塩原市で、写真1のようなLCメータの製作が行われました。基板のハンダ付けを工作教室で行い、ケースなどの仕上げは自宅で行いました。このLCメータを紹介します。

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写真1 このようなLCメータです。

2.LCメータについて

元々は海外のWEBにあったものを、サイテック(http://www.cytec-kit.com/)でキット化したものです。ところが最近、その海外のWEBが見つからず、動作説明が見られません。発振させた周波数を測るキットのようですが、実は良く解りません。

本来は基板と部品のキットですが、工作教室ではケースやテスト用のコンデンサが付いていました。PICも書き込み済みのICが付いていましたので、このあたりの様子は解りません。一般的にはサイテックのWEBでダウンロードし、ライターで書き込む作業が必要になるはずです。このダウンロードは今でもできるようですし、書き込み済みのPICも入手できます。配線用のワイヤー類も、ハンダも工作教室ですので「付いていた」となるのですが、一般的には自分で用意するものです。

3.作成

写真2のような基板です。工作教室後に写していますので、基板としては完成した状態になります。ハンダ付けとしては半日あれば十分と思います。工作教室で基板としての動作まで確認していますので、既にケースに入れるだけの状態です。LCDを外すと写真3のようになります。写すのを忘れていましたので、ケース付きです。

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写真2 基板です。ハンダ付けしてしまっています。

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写真3 LCDの下側にはPICがあります。写し忘れたので、順番が逆のようになっています。

自宅ではケースの穴あけと、仕上げをしました。いつもはLCDの穴はハンドニブラで開けるのですが、今回は糸ノコで開けてみました。ハンドニブラは刃の開く幅が少ないので、厚みがあるとプラスチックとはいえ開けられません。慣れない作業をしたため、写真4のように多少曲がってしまいました。一気に開けようとせずに、少しずつ修正しながら開けるのですが、実はノコギリのような工具は苦手です。

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写真4 プラスチックのケースに穴あけをしたところです。

このままケースに基板を入れても良いのですが、今回は多少シャレた事をしてみました。パソコンで写真5のようなシールを作り、貼っています。ケースだけに比べて引き締まると思います。そのうえ多少ですが、曲がった穴のゴマカシに使う事もできます。写真6が貼り付けたところです。

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写真5 パソコンで作ったシールです。後で気が付きましたが、栃木支部ではなく栃木県支部でした。

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写真6 ケースに貼って、カッターで切ります。

このようなキットをケースに入れるときには、ネジを外に出さないようにする方法などもあります。今回は、オーソドックスに基板をケースにネジ止めする事にしました。写真7のようにカラーの長さを調整し、表示部がピッタリ納まるようにします。ネジは写真1のように、黒クロームメッキのネジを使っています。ケースの色に合わせて洒落ただけですが、最近ではRoHSで禁止のようですので入手できないでしょう。というよりも、本当は使わない方が良さそうです。内部の様子は写真8のようになります。

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写真7 カラーの長さをLCDの高さと合わせます。

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写真8 内部の様子です。

コンデンサやコイルの接続にはターミナルを用いるようになっていましたが、私はクリップにしました。いつもクリップを使った作り方をしていますが、見栄えは別としてこの方が使いやすいと思っています。もちろん、見栄えと使いやすさとの比較ですので、どちらでも問題ありません。

電源は写真9のようにコネクタを使って、12Vを入力するようにしました。電圧的にはもう少し低くても大丈夫と思います。一応テプラで12Vと指定しています。ACアダプタもコネクタもキットに付属していたものです。

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写真9 電源コネクタの様子です。

工作教室でトラブった例のようですが、トグルスイッチのハンダ付けで熱を与え過ぎてしまい、スイッチが変形した事による接触不良があったそうです。ワイヤー2本をトグルスイッチにダブル付けするところがあるため、手間取ったためと推測します。このようなハンダ付けは「コツ」です。一本ずつ付けようとすると失敗しやすくなります。2本をよじって仮ハンダをしておきます。次にスイッチ側にもハンダをしておきます。そして両方を接触させて、瞬間的に両方のハンダを溶かして融合させます。どうしても1本毎のハンダ付けになってしまった場合は、2本目は端子全体のハンダが溶けないようにします。これは慣れしかないと思います。

4.使用感

コンデンサはトグルスイッチでC側を選び、オープンとして校正します。つまりCAL(キャリブレート)のボタンを押します。それまで浮遊容量を表示していたものがゼロを表示します。被測定物を接続すると、さっと値を表示します。100pFを測ると101.4pFと表示しました。0.1pF単位が正確とは思えませんが、比較する場合には便利です。発振した周波数にQRHが起こるのか、下の桁は多少の変動を伴います。1000pFを超えると、海外のソフトらしくnF単位に切り替わります。どうもnF表示は苦手です。1000pF=0.001μFと換算してしまうので、nFの入る余地が出てきません。もちろん、慣れといえば慣れですけど・・。あまり大きいコンデンサは測れません。1μFまでが限界のようで、これ以上はOver Rangeと表示してしまいます。

コイルはスイッチをL側として、ショートして校正します。クリップが持っているインダクタンスの分をキャンセルし、ゼロを表示するようになります。FCZ50を測ってみると、最小から最大が0.32〜0.78μHと測定できました。小さいLでも、このあたりまで測れると実用的でしょう。もちろん、コンデンサと同じで0.01μHの単位が正確と考えてはいけないのでしょう。大きいインダクタとしては、47mHを測ると51.26mHと表示しました。これより大きいLは、手持ちにありませんので試せませんでした。

コンデンサもコイルも、十分信頼できそうな値を表示します。もちろん測定に誤差は付き物ですので、とりあえず「目安」という事になるのでしょう。他のLCメータと比べても大体同様の値を表示しています。今まで作ったLメータ、Cメータと比較しても良いのですが、所詮は真値が解らなければ意味がありません。しかし、興味もありますので一応表1と表2のように測定してみました。これは試しに行った結果ですので、精度の比較をしようとするものではありません。各々の特長を表していると思います。しかし我ながら良く集めたものだと、感心してしましました。

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表1(※クリックすると画像が拡大します。)

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表2(※クリックすると画像が拡大します。)

LメータやCメータは、このBEACONでも何回か取り上げていますが、大体において完璧という事はなく一長一短や得手不得手があります。このような測定手段、つまり「引き出し」が増えるのは結構な事と思います。

5.終わりに

何しろ地方の片隅に住んでいますので、普段は一人で自作をしています。地域的にも横の繋がりがほとんどありません。そのような状態ですので、情報交換しながら作業ができる工作教室は楽しいものです。また次回も可能であれば参加したいと思います。

このような催しの準備は大変な事と思います。最後にJARL栃木県支部の関係者の方々に感謝を致します。