エレクトロニクス工作室
No.115 可変LPF付きLM386アンプ
1.はじめに
LM386は受信機などの内部で使っていますし、アンプ単体でも何回か作っています。実際にはLMではなくJRC(新日本無線)のセカンドソースだったりするのですが、実質的には同じものです。むしろJRC製の方が良いと言う話もあります。実は私が良く使っているのは、700mWのJRC386BDです。
今回はJA1CPA中村さんのブログ(http://www.ne.jp/asahi/ja1cpa/ja1cpa/)で見つけました、可変LPF付きのLM386アンプを試してみました。VRによってLPFの周波数特性が可変できるという楽しいものです。中村さんは、これをサテライトに使っているそうです。私としてはサテライトは別として、面白そうな回路や応用できそうな回路は、何でも試したくなります。
写真1のように、スピーカボックス横のケースに回路を入れて作ってみました。上手く動きましたので、次のトランシーバや受信機などにも応用可能です。
写真1 スピーカーボックスの横に取り付けたLPF付きのアンプです。
2.回路
図1のような回路です。これは中村さんの回路そのもので、オペアンプで言う「正帰還LPF」ですが、これをLM386で実現しています。オペアンプでは教科書的な回路ですが、これをLM386に応用するというのは、私には絶対に浮かばないアイデアです。実はここでもJRC386BDを使っています。
図1 このような回路です。 (※クリックすると画像が拡大します。)
特性を測ってみた結果や手持ち部品の関係で、少しだけ値を変えた部分がありますが、基本的には全く同じです。
3.作成
まずはスピーカーボックスを探しました。業務用無線機に使っていたものがありましたので、この横にケースをネジ止めし、中に回路を入れる事にしました。小型で周波数特性の良くないスピーカでは、せっかくの可変LPFが生かせません。部品としてはVRが主に容積を使いますので、レイアウトもVRが中心になっています。VRの端子にスズメッキ線をハンダ付けし、これに基板を背負わせる形式にしました。
次に図2のように実装図を作り、写真2のようにジャノメ基板をカットしました。使用したのは普通のジャノメ基板ではなく、部品面にアースの付いたものです。高周波ではないので普通のジャノメ基板でも作れますが、結構複雑な実装になってしまいます。実装が楽にできますので使ってみました。実装図で緑の点が直アースのポイントになります。基板を作成し、VR2個に背負わせたところが写真3です。基板のハンダ面が写真4となります。2連VRは互いのセンターを接続し、写真5のように基板と接続します。これでVRが基板を支える形で簡易的に固定できます。この状態でスピーカ等を仮接続し、動作を確認します。
図2 アース付きのジャノメ基板を使っています。緑の点が直アースのポイントです。1,2,3のポイントは2連VRへ接続します。
写真2 シールド付きのジャノメ基板をカットします。
写真3 部品をハンダ付けし、VRを付けたところです。
写真4 ハンダ面です。
写真5 2連VRのセンターどうしはVRの端子で接続し、3本のメッキ線で基板に接続します。
ケースはタカチのSW-75Bがありましたので使ってみる事にしました。写真6のように穴あけを行います。ケースに基板を押し込むと、写真7のようにうまく納まりました。内部の配線を行ったところが写真8です。基板はケースにネジ止めされておらず、ワイヤーで宙吊りです。多少揺らした程度で基板が動く事もなく、問題になる事はないでしょう。もし、自動車内などの振動がある場所で使う事を想定するのであれば、ホットボンド等で軽く固定すれば十分と思います。
写真6 ケースに穴あけをしたところです。
写真7 ケースに部品を固定します。
写真8 内部の配線をしたところです。
動作チェックで問題がなければ、束ねた方が良いワイヤー類は結束バンドか専用のひもで束ねます。テプラなどで、写真9,10のようにツマミの表示をして完成です。
写真9 テプラを使ってツマミの表示をします。
写真10 裏側です。テプラは黒テープに白印字を使っています。
4.測定
周波数特性をNo.19で作ったFRMS-AFで測ってみました。アンプの出力にはスピーカの代わりに10Ωの抵抗を付け、この両端からFRMSの入力側に戻しています。FRMSの出力はレベルが高過ぎ、アンプが飽和してしまいました。そこで600Ωで40dBの可変アッテネータを入れて、アンプの入力レベルを調整しました。飽和させてしまうと、飽和レベルに張り付くので周波数特性が良く見えてしまいます。周波数特性は、一般的に飽和レベルより相当低いレベルで測定します。これはAFでもRFでも同じです。
これで2連VRを可変しながら周波数特性を測ったのが測定結果1〜6です。0〜5kHzを測っています。大体ですが、左に回し切った状態から、等間隔で右に回して行った様子です。測定結果6が右に回し切った状態です。フィルタの周波数が可変している様子が解ります。
測定結果1 VRを一番左に回したところです。 (※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果2 少しずつ右に回します。 (※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果3 等間隔で回します。 (※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果4 高域が伸びてきます。 (※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果5 右いっぱいの手前です。 (※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果6 VRを一番右に回したところです。 (※クリックすると画像が拡大します。)
5.使用感
このようなLPFは、使ってみると楽しいです。面白いです。実際にQSOを聞いてみると、聞きやすいフィルタのポイントがあります。話している人の声によっても、状態によっても違いがあるようです。たぶん聞く人によっても違うのでしょう。これは面白いだけではなく、これからはトランシーバに内蔵し、自分の聞きやすいフィルタに調整をするのも良さそうです。
LPFを低い周波数に設定すると、測定結果のとおり見かけのゲインが減ってきます。すると、音量VRを上げたくなります。これは慣れですが、音量とLPFのVRは隣にしておくと調整しやすいでしょう。