エレクトロニクス工作室
No.125 GPS 1ppsユニット
1.はじめに
以前GPS関係で売られていたものに、Z3801Aがありました。これはGPSのルビジウム発振器に同期し、極めて正確な10MHzを出力するというものです。10MHzというのは良く周波数カウンタの基準に使いますので、使いやすい周波数です。CQ誌の広告にも載っていましたし、OMの方々の利用記事もありました。しかし値段も高く、簡単に入手できずにいました。するといつの間にか市場から消えてしまい、結局何も試せずに終わりました。
最近になって、3~4k円程度で入手できるGPSモジュールには1秒パルスを出すものがあり、これもGPSに同期した正確なものと知りました。あまり使い道もないと思っていましたが、周波数カウンタのゲートタイムに応用すれば、正確に周波数が測れると気がつきました。このパルスを使うとすると、ゲートタイムは1秒、10秒、100秒・・となり、通常使うカウンタ用とすると長過ぎる場合もあるでしょう。レシプロカル式などは全く無理です。しかし、「カウンタの基準用カウンタ」で校正用と割り切れば、ゲートタイムが長くても十分です。さすがに1000秒=16分40秒は無理としても、100秒なら調整に使えるでしょう。
そこで基準用としてGPSモジュールを購入し、まずは写真1のような1pps、つまり1パルス/秒のユニットを作ってみましたので紹介します。もちろん、これだけでは何の役にも立ちません。
写真1 このような1ppsを出力するGPSユニットです。
2.GPS
ネットで探してみると、このようなGPSモジュールにはいろいろな種類が見つかります。本来は自分の位置情報を得るためのもので、必ず1pps出力があるとは限らないようです。データシートを確認して使えそうなものを探しました。1ppsという端子があるものが狙い目で、電源を入れるだけで1ppsを出力します。設定が必要なものはデータシートを読むだけで大変な作業になりますので、英語の苦手な私としては敬遠です。
GPSモジュールは、写真2のGM-316をAITENDOで入手しました。1ppsの有無の他に、アンテナを外部に接続するものと内蔵しているものがあります。このあたりは使用する環境で試し、使用方法を考えるしかありません。最近までGM-316は入手可能でしたが、今では広告から消えています。今ならGE-612Tだと思います。
写真2 使用したGM-316です。
3.実験
どのように1ppsを出力し始めるのか、全く解らないまま実験を始めました。まずはGM-316を使って、写真3のように生基板に固定して試験してみました。これは5Vと1pps出力だけなので図1のように更に簡単な回路になります。ラグ板を使ったのは、直接ハンダ付けしたりすると、テンションが加わって、銅箔を剥がす心配があるからです。実は実際に剥がしてしまいました。そこで接続にはヨリ線を分解した極細のワイヤーを使い、銅箔面にテンションが加わらないようにしました。
写真3 生基板に固定し、出力はラグ板経由で取り出しました。
図1 このような簡単な回路です。(※クリックすると画像が拡大します。)
GM-316はアンテナが内蔵されているタイプなので、アンテナ端子は無接続で動きます。これを室内に置いて試しましたが、出力がなかなか出ませんでした。ユニットを窓際に置いてみると、7分程度で1ppsを出力するようになりました。これをオシロで見たところが測定結果1です。出力を始めるとユニットを窓から遠ざけても出力しています。この状態でも正確なのかは良く解りませんが、使用中は窓際に置いておくべきなのでしょう。
測定結果1 このように1ppを出力します。(※クリックすると画像が拡大します。)
1ppsを通すケーブルとはいえ、正確な1秒を伝送するものです。波形が崩れると精度の問題が出てきそうです。そこで試しに窓際ではなく、手元で動かしてみました。しかし、これは稀にパルスが出るだけで全くNGでした。従って、ケーブルを使って少し離れた窓際に置くしかなく、比較はできませんでした。そのような意味では、外部アンテナを使う方が賢いのかもしれません。
4.作成
とりあえず1ppsのユニットとして作成し、この回路のままでケースに入れる事としました。ケースは写真4のタカチSW-55です。ここはプラスチックケースでないと絶対にだめです。当然プラスチックでもシールド材など塗っていてはNGです。
写真4 使用したプラスチックケースです。
電源のグランド側は特に必要とは思いませんが、同軸の外側に電流を流すのも気が引けて付けただけです。これでは実際には両方に5Vのリターンが流れますので、ほとんど意味がありません。写真5がケースに入れたところです。
写真5 このようにケースに入れました。
今後、出力を周波数カウンタに接続する事になります。4ピンのコネクタを探したとき、ちょうど良いのが写真6のマイクに使っていた4ピンのものでした。今は8ピンを標準的に使いますので、これをマイクに使う事もないと思って1ppsのコネクタにしてしまいました。もっと以前に使っていた3ピンのコネクタでもアースを共通にして使えるでしょう。FDAM-3のマイクなどは3ピンでした。
写真6 コネクタには4ピンを使いました。
5.使用感
Z3801Aはかなり高額だったと思います。GM-316は4k円程度ですので、ずい分と気楽に使う事ができます。もちろん内容は全く違うので単純な比較は無理ですが、高精度と言う事では同じです。これを写真7のように窓際に置くと、ほどなく1ppsを出力します。
写真7 このように窓際に置きます。
これで使用感もないのですが、やっと正確な基準パルスを手に入れた、という感じです。実際に回路は簡単ですし、簡単そうに作っています。しかし、実は動作させるだけでずいぶんと苦労してしまいました。次はこれを使って周波数カウンタを作る予定でいます。