1.はじめに

中国製の9850DDSユニットは、既に何回も紹介しています。私が最初に購入した頃は600円だったのですが、昨年は400円程度で入手できました。このユニットは今までユニバーサル基板を使って試して来ましたが、この作製も結構大変です。昨年サイテックから、このDDSユニットを使った基板が出ました。コントロールにPICを使ったもので、これがあればユニバーサル基板でたくさんの半田付けをしなくて済みます。そこで早速入手し、写真1のようにテストボードとしてまとめてみました。

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写真1 このようにアルミ板上にまとめたDDSユニットのテストボードです。

中国製のDDSユニットは写真2のようなものと、写真3の2種類が容易に入手可能です。ここで使うのは写真2のDDSユニットになります。

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写真2 400円程度で入手したAD9850のDDSユニットです。

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写真3 aitendoで入手したAD9850のDDSユニットです。

2.どのようなキットか

いろいろな用途に使えるように工夫されています。これは一つの目的に特化する自作品と違うところです。トランシーバに使いやすいように、変化幅の設定やIF周波数の加減算ができるようになっていますし、それが電源を切っても保存されています。従って、トランシーバに内蔵しても問題ありません。LCDでメータ表示をする機能がありますので、Sメータやパワーメータなどに使えそうです。つまりこのままトランシーバに使えそうです。

ソフトはDDSユニットに使われている125MHzの基準を使ったものと、48MHzを使ったものがあります。48MHzのは4逓倍して使うように設定されています。この4逓倍はメーカのデータシートにない使い方で、低い周波数のオシレータを使う事ができます。ただ、出力のスプリアス的には基本波を使った方が有利ですので、48MHzを使うメリットはあまり考えられません。また、この裏技はICのLOTによるようです。良く解りませんが、使えないLOTでは出力が全く出ません。実は、私はこの使い方ができた事がありません。

3.回路

図1のような回路です。全体的にはPICを周波数制御に使った、オーソドックスな回路です。DDSの出力にLM7171を使ったアンプを使っています。周波数によってDDSの出力レベルが変わってくるのですが、調整ができるので便利です。

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図1 回路図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

出力にはLPFを入れるようになっています。もちろん、LPFの設計は使う周波数によって変わります。従って自分で計算して設計しなくてはなりません。私の場合実験ということで、とりあえず目的の周波数は決まっておらず、LPFはコンデンサでスルーにしています。DDSの出力にはいろいろなスプリアスが混ざっています。モノバンドのトランシーバにするような場合は、LPF以外にも狭帯域のBPFを入れると良いでしょう。

4.作成

写真4が基板です。これに部品を取り付けますが、それほど時間のかかる作業ではありません。作り方として、今までDDSユニットにはソケットを付けて交換できるようにしていました。しかし、基板上に直接LCDを載せる事としましたので高さに余裕がなく、ソケットが使えません。つまり直付けするしかありません。するとDDSユニットの基準のクリスタルオシレータが交換できず、固定になってしまいます。ここは作り方ですので、125MHzのクリスタルオシレータ固定としました。実は最初は48MHzとしていたのですが、苦労して交換しました。

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写真4 このような片面の基板です。

基板上の出力端子付近を見ると、多少の加工で大宏電機のコネクタが付きそうです。そこで写真5のように金ノコで少しだけ加工し、写真6のように高周波用のコネクタを付けました。このような基板にちょうど良いコネクタで、実験時の融通度がアップします。完成した後ですが、写真7のようになります。

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写真5 出力にタイコーのコネクタが使えそうだったので、糸ノコで加工してみました。下方に少し削っただけです。

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写真6 このようにうまく収まりました。

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写真7 作った後ですが、このようなコネクタです。

LCDと部品を取り付けた様子が写真8です。ハンダ面が写真9となります。ここで仮付けを行い、基板の動作確認を行います。LCDの表示とDDSの出力も確認し、問題があれば対応をします。

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写真8 基板に部品をハンダ付けした様子です。

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写真9 ハンダ面になります。

DDSの出力にはいろいろなスプリアスが混ざっています。なるべく高い周波数のクリスタルオシレータを使い、低い周波数で出力させるのが一つの方法ではあります。しかし、125MHzのクリスタルオシレータはものによってはノイズの多いものもありますし、消費電流が多いのもあります。要は自分で試して使いやすい方法を探すしかありません。そのようなイメージで、まずは試しにアルミ板に乗せて作成し、実験がしやすいようにまとめる事としました。

基板を写真10のようにアルミ板にあてて、位置決めをします。ロータリーエンコーダなどは写真11のようにLアングルに穴を開けて固定しています。私はこのようにまとめましたが、もちろんトランシーバに使う事も可能です。

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写真10 アルミ板上の位置決め中です。

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写真11 このように、ロータリースイッチ等はLアングルを使って固定しています。

5.調整

特に調整するところはありません。ただ、出力調整用のVRがありますので、一応出力レベルを知っておく必要があります。周波数によっても違いますが、測定結果1のようになりました。周波数によっては、DBMを直接ドライブできそうです。ただ、出力を直接増幅しており、IMDによるスプリアスは多くなります。モノバンドトランシーバのように狭い周波数範囲で使用するのであれば、入力にLCの共振回路をつけたFETアンプが有利でしょう。

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測定結果1 出力レベルの調整範囲を測ってみたものです。(※クリックすると画像が拡大します。)

6.使用感

まだ操作には慣れないのですが、うまく作り込んだ印象のソフトです。単体ものではなく、様々な要求に答えようとするソフトで、キットという性格上このようになるのでしょう。

STEPのボタンを押しながら電源を入れると、周波数の設定ができます。IF分を加減算する設定もできますが、細かい設定はできません。可変幅の設定は固定となっています。オフバンドしないようにという事ですが、500kHz幅では中途半端です。これも変更できると良いでしょう。SGのような使い方を考えると、上限と下限を設定できる方が合理的と思いますがいかがでしょう。もちろんこのようなソフトは自分で変更すれば良いものであり、細かい希望を取り入れると収拾が付かなくなる事ではあります。ソフトの変更も自作の楽しみですから、ぜひ手がけて下さい。DDSユニットとしてはAFでも使えますから、ソフトのニーズは限りなくあります。

操作時にボタンを押下すると、そのたびにピッとブザーが鳴ります。これは今まで私のソフトでは使っていなかったアイデアで、「押した」と言う感触があるので使いやすくて良いと思います。私の感想としては、音ひとつでこれほど変わるとは知りませんでした。