エレクトロニクス工作室
No.131 ペットボトルクーラー
1.はじめに
夏になりますと、冷えたペットボトルもすぐに暖まってしまいます。しかし、冷蔵庫に入れるのも面倒という場合もあります。特に会社ではそんな事もあるでしょう。私の場合は夜勤も行いますが、長い夜に少しずつお茶を飲んでいると、冷えていたお茶も次第に暖まってしまいます。そこで、机上で「こそっ」と一本だけ冷やすペットボトルクーラーを作ってみました。写真1のように見た目はバランスも悪く、発泡スチロールの塊という感じになってしまいましたが、バッチリと冷やす事ができます。
写真1 このような小型のペットボトル専用のクーラーです。左手前はACアダプタで、上に載せているのは配線をつなげるだけのボックスです。
何年も頓挫と復活を繰り返し、季節によって製作意欲が大きく変わるものがあります。冬は一酸化炭素を測るCOメータ、夏はこのペットボトルクーラーです。これは季節がピークを過ぎると、一気に製作意欲が無くなってしまうもので、今まで毎年のように頓挫と実験の復活を繰り返してきました。ペットボトルクーラーは何とかなりましたが、COメータは何年経っても頓挫のままです。
2.冷やし方
小型とはいえ、本格的に圧縮機を使った冷蔵庫などは無理です。そこで、ペルチェ素子を使う事になります。カー用品や超小型の冷蔵庫がこのペルチェ素子を使っており、珍しい方法ではありません。冷蔵庫にする場合、素子の反対側が熱を持ちますので、必ず放熱しなくてはなりません。一番ピッタリなのがCPU用の放熱器をFAN付きのまま使う事です。市販のペルチェ素子にはCPUを冷やす目的もありますので、大きさもピッタリです。ペルチェ素子は流す電流の方向によって冷熱が反転しますので、冬には温蔵庫にする事もできます。ただ、温蔵庫の必要性は全く感じておらず、切換えスイッチは付けていません。
ペルチェ素子は、40mmX40mmで6Aのものを入手しました。そこで何ボルトを加えるのか、温度制御をどうするのか、という事を検討する必要があります。ペットボトル一本を冷やすだけなら軽く使い、放熱に余裕を持たせておけば良いと考えました。ペルチェ素子のスペックを見ると最大で16.8Vで6Aですが、試したところ12Vでは4.5Aでした。素子によってのバラツキもあるようですので、最終的には試すしかありません。
入れ物を含めていろいろと試しましたが、かなり難しいものでした。ペルチェ素子は4mm程度と薄く、熱の回り込みが一番やっかいです。ちなみに失敗作の写真2は良くあるペットボトルクーラーに穴を開けたものです。断熱材が薄く、熱が回り込んでしまいました。写真3は発泡スチロールをカットして接着剤で箱を作ったものです。それなりには冷えましたが、工作の汚さに耐えられずボツにしました。
写真2 薄い保温用のケースに付けた「ガメラ型」です。これは失敗でした。
写真3 工作用の発泡スチロールをカッターで切って組み直したのですが、慣れない工作でとてもキタナクなってしまいました。
3.回路
回路図は図1のようなものです。ただ単にペルチェ素子に電圧を加えているだけで、温度制御も何もしていません。この回路は私の場合であって、ペルチェ素子のW数や放熱器、あるいは保冷ボックスの状態によって電圧の調整が必要かもしれません。
図1 一応回路図ですが、内容はありません。(※クリックすると画像が拡大します。)
電源は実験用の可変電源では実用にできないので、12V5AのACアダプタを買って来ました。もちろん、この場合はスイッチングタイプのものです。
本格的な冷蔵庫にするのであれば、内部の温度管理をしながら電圧を制御し、また高温側も高くなり過ぎないように制御するのが良いと思います。PWM制御をするなどのアイデアは、すぐに出てくるでしょう。
4.作成
放熱器は多少大きめを探し、写真4のようなFANと一体のものにしました。ペルチェ素子の厚さは4mmです。これを発泡スチロールの厚さ10mmに合わせなくてはなりません。そこでアルミ板を中に入れてゲタにしています。このゲタは、ペルチェ素子の冷却側に入れています。高温側には余分なものを入れないのは、安全性が優先だからです。このようにして組んだ「冷却ユニット」が写真5になります。固定用のカラーとネジは金属ではなく、プラスチック製を使っています。もちろんシリコングリスなどは必須です。
写真4 パソコン用のFANと一体型の放熱器を探してきました。
写真5 ペルチェ素子、アルミ板のゲタ、L型のアルミ板で作った冷却ユニットです。
電気的には簡単な回路ですが、入れ物を作らなければなりません。これが慣れない工作でもあり、時間がかかった難関でした。100均で写真6のような発泡スチロールのブロックと厚さ10mmの工作用発泡スチロール(写真7)と接着剤(写真8)を購入しました。ブロックの穴を強引にペットボトルをこじ入れて押し広げ、ハンダコテで溶かし、ヤスリで削り、何度も試しながら広げました。一番効果があったのはハンダコテのように思います。ヤスリはゴミが飛び散るだけでした。ペットボトルが入るようになったら、次は放熱器と冷却用金具との断熱です。工作用の発泡スチロールを写真9のようにカットし、放熱器が納まるようにしました。次はこの周囲を写真10のようにカットし、ブロックの中に入るようにしました。写真11はブロックに入れる直前の様子です。写真12がうまく差し込めたところです。フタは写真13のように発泡スチロール板をカットして組み立てました。置いた時に安定するように、台も付けています。
写真6 ブロック型の発泡スチロールです。
写真7 工作用の発泡スチロールです。
写真8 専用の接着剤です。
写真9 このようにペルチェ素子が入るように工作します。
写真10 冷却ユニットの断熱材に入れ、外側のブロックに入れられるように周囲をカットします。
写真11 入れる前の様子です。
写真12 キュキュっと入れたところです。
写真13 フタは工作用の発泡スチロールで作りました。
5.使用感
これで机上に置いても目立つ事無く、ひっそりと冷やす事ができます。前回No.130の2CH温度計で内部のペットボトルの温度変化を測ったところ、測定結果1のようになりました。もちろん、容量は100%の状態です。そこそこは冷える事が解ります。これで夏場は入れる場所に困る共用の冷蔵庫を使う事もなく、冷たいものが飲めるようになりました。
測定結果1 このような温度変化で冷えました。(※クリックすると画像が拡大します。)
但し、24時間の過負荷テストなどはしていませんので、使用しないときには必ずOFFするようにしています。そのような意味で、私は自分の作ったものを全く信用していません。一番危ないものだと思っています。使った発泡スチロールのブロックのサイズから、350mℓの小型サイズしか冷やせないのも欠点です。
6.終わりに
「もの作り」というものは、「便利なもの」「楽しいもの」「世の中にないもの」を作るのが楽しいのです。トランシーバや何かのツールを作るのも、どこかにこのような精神があります。もちろん「世の中にないもの」というのはほとんどあり得ません。「世の中に出回ってないもの」でも困難です。どこかに元ネタがある事もしばしばですが、気持ち的には変わりません。
何回か夜勤で使ってみて感じたのは、残っている量が多い時には冷え方が弱く、少なくなってくると冷え過ぎる事です。センサーが無いので当たり前ですが、改めて「なるほど」と思いました。これをどのように当たり前と感じ、次に生かすかです。次回作はもう少し工夫をして作る事ができるでしょう。もちろん放置したままとは雲泥の差で、気持ちよく飲めます。