1.はじめに

最近では7.195MHzにおけるAM通信も結構な賑わいで、古い真空管式のリグをお使いの方もおられます。私も真空管式のリグは嫌いではありませんが、大きくて重いものは家の中に溜め込むスペースがありません。

そこで、モノ作り大好き人間としては、小型軽量で簡単なトランシーバを作ってみたくなりました。まずは写真1のような7MHzのAM受信機を作りました。後から送信部も追加する予定ですので、マイクなどのコネクタは既に前面パネルに用意していますが、配線はまだありません。

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写真1 このような7MHz AM受信機です。

2.回路

この受信機を作る時の考え方です。前述のように小型軽量に作りますので、送信部を付けるとしても大電力はありません。小さくQRPにまとめる事になります。QRP用の受信機としても、50MHz用と同じように作れば良いというものではありません。まずは受信時に入ってくる信号レベルが違います。入って欲しくない信号のレベルは更に違います。

このようなコンセプトを描いて実験を行い、図1のような回路としました。アンテナから入力された信号は、トロイダルコアを使った7MHzのBPFに入れています。ケースがあまり大きくないのでT37-6を使っていますが、小径にしては測定結果1のようにまずまずの特性で、内部で発生するノイズを減らすためには有効なBPFになっています。

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図1 受信機としての回路です。今後送信部を追加します。(※クリックすると画像が拡大します。)

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測定結果1 トロイダルコアを使った7.2MHzのBPFの特性です。(※クリックすると画像が拡大します。)

BPFを通した7.195MHzの信号は、ヨーロッパ製ICのTCA440を用いて6.725MHzとミックスし、470kHzのIF出力を作っています。これをダイオードで検波します。この回路はNo.55で作った受信機の回路が基です。フィルタは480kHzのセラミック発振子を使った5素子の世羅多フィルタで、測定結果2のように10kHzほど低い470kHzのフィルタになります。もう少し狭くても良かったかもしれません。元々のアイデアは、TCA440も世羅多フィルタもJA9TTT加藤さんのブログからの引用です。いつもお世話になります。

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測定結果2 480kHzのセラミック発振子を使った、470kHzの世羅多フィルタの特性です。(※クリックすると画像が拡大します。)

発振回路にはVXOを使っています。7.195-0.470=6.725MHzが目標の周波数となります。そこで6.7458MHzのクリスタルを探し出し、6.725MHzの付近を少しだけ動けるようにしました。このクリスタルはaitendoの通販で入手したものです。スポット受信ですので、どちらかと言えばRITに近い考え方です。VXOといっても6.725MHzですので、それ程動かせないからです。トランシーバにまとめる時にも、キャリブレーションは不要と考えています。ダイヤル上のどこが7.195MHzと解れば、それで十分です。

7.195+0.470=7.665MHzが入手できれば、周波数が高くなるので多少は動かしやすくなります。しかし、探してみてもこの近辺のクリスタルはありませんでした。このVXOについては、No.118で紹介したクリスタルチェッカによって、大まかなLとCの値を決めています。

3.作成

まずはバラック配線にて動作チェックを行いました。修正の嵐の結果が図1の回路図です。その後で図2のような受信部の実装図、図3のようなVXOの実装図を書いてから、シールド付きのユニバーサル基板を使って作成しました。実装図で緑の点は、部品面でグランドに直付けします。

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図2 受信部の実装図です。

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図3 VXO部の実装図です。

ケースはタカチのCU-2を用い、写真2のように穴あけを行いました。写真3はスピーカをゴム系の接着剤で固定しているところです。引力を利用するため、このような体制になっています。部品をネジ止めし、底面に生基板を貼り付けし、基板を固定したところが写真4です。今までは3mmネジのカラーを使って固定していましたが、今回は写真5のように、メッキ線とハンダ付けで生基板上に固定してみました。大型の基板には向きませんが、このような小型基板には十分だと思います。ネジのために使えないスペースが少なくなり、基板としては作りやすくなります。耐振動という面では不利になるかもしれませんが、小型基板でもあり十分な強度と思います。

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写真2 穴あけ加工をしたケースです。

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写真3 スピーカを接着剤で固定しているところです。

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写真4 基板を固定したところです。

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写真5 メッキ線を使って、このように基板を固定してみました。

なおポリバリコンは、写真6のように生基板を立てて固定しました。この場合は必ず両面基板を用い、両面のハンダ付けをして強度を確保します。配線が終わったところが写真7です。この先のマイク配線が面倒になりそうですが、何とかしましょう。

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写真6 生基板を立ててポリバリコンを固定しました。

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写真7 受信機として配線を終わり、受信できる状態になったところです。

4.調整

まずはVXOの発振周波数とレベルの調整をします。7.195MHzがカバーできる6.725MHz付近に周波数が来るように調整し、出力レベルを最大点とします。周波数がトリマーだけで合わせられない場合は、47μHのコイルを増減して調整します。この部分は再現性が低いので、注意が必要です。コンデンサを追加すれば下がるというものではなく、限界があります。可変する幅と、周波数の安定性も確認しておきます。

次に受信できる事を確認しながら、BPFとIFのコイルを調整します。Sメータが付いていますので、調整は難しくないと思います。Sメータの感度も調整します。

5.使用感

受信機としての感触は悪くないと思います。Sメータの振れ具合、感度共にまあまあです。トップに7MHzのBPFを入れていますので、ノイズの発生が少ないように感じます。このBPFをパスするとノイズが一気に増加し、極めて使い難いものになります。

難点としてはフィルタが少し広過ぎる感じがあるのと、少々リップルがある事です。もう少し微調整をすべきでしょう。

VXOの可変できる幅はもう少し広くしたかったのですが、6MHz台ではあまり動かせません。簡単な回路で作ったため仕方ないと考えます。VFOにすると可変幅が広過ぎるものになってしまい、QRHの要因となってしまいます。DDSを使っても良いのですが、全体としてアンバランスになると考えて使っていません。