エレクトロニクス工作室
No.137 ホワイトノイズジェネレータ
1.はじめに
ホワイトノイズというのは周波数によってレベル差がないようなノイズの事で、色で言えばホワイトという事です。これに対して高い周波数のレベルが下がると、色であれば赤色側にシフトする事となり、ピンクノイズと言われます。この場合、正確には1/fで下がるのがピンクノイズと定義され、-3dB/octとも表現されます。ホワイトノイズはプリアンプなどのテストに、ピンクノイズはスピーカを含む音響のテストに使われるようです。プリアンプと言っても、この場合はオーディオアンプの世界になり、高周波の世界ではありません。オーディオ的には20kHz程度までのノイズが必要と思いますが、無線に使う場合は5~10kHzもあれば十分ではないでしょうか。
ここで考えているのは、ホワイトノイズを無線機用のAFアンプに入力し、パソコンのFFTアナライザを用いてアンプの周波数特性等を測ろうとするものです。このような目的で、写真1のようなホワイトノイズジェネレータを作ってみました。スピーカを含めたアンプの場合、自分の耳で特色を聞くことができます。この場合も無線機用が対象で、本格的なオーディオ用とは考えていません。というよりも、私には良く解りません。
写真1 このようなホワイトノイズジェネレータです。
2.回路
このようなノイズの発生には、ツェナーダイオードやトランジスタを使う方法、ソフトでランダムノイズを発生させる方法などがあります。ここでは簡単に作れるようにトランジスタを用いてみました。
トランジスタには、ノイズを出すのに有名な2SC3311を用いています。この他に2SC828AやBC547が、その筋で使われるようです。2SC3311は秋葉原の鈴商にあったもので、通販で入手しました。たまたま秋葉原のaitendoに行った時に、「見つけた!」と喜んでBC548を買ったのですが、帰ってから一番違いに気が付きました。一応ノイズは出ましたが、レベルは低いものでした。BC547も置いてありましたので、今度試してみたいと思います。なお、2SC1815でもノイズは出ましたが、レベルが低くて使いにくいようです。
回路図を図1に示します。このように、トランジスタで作ったノイズをOPアンプで、10×100=1000倍に増幅するというものです。出力にはアッテネータを付けても良かったのですが、ジャンクの手持ちが減ってきたためVRを使いました。これでレベル的にはマイクの出力レベル程度からカバーできます。
図1 回路図です。(※クリックすると画像が拡大します。)
電源には006Pの9Vを使ったのですが、ノイズ的には12V程度あった方が良いようです。電池の電圧が下がって、8.5V以下になると急にノイズが出なくなることがあります。従って、006Pでは余裕がありません。外部電源を使う場合は、12V程度で動かすべきでしょう。
3.作成
いつものようにユニバーサル基板を用い、図2のように実装図を作ってからハンダ付けを始めました。基板を作成したところが写真2になります。ハンダ面が写真3となります。トランジスタは写真4のようにソケットを用いましたので、交換して試すのが容易です。ソケットには、ピンソケットを3端子だけ使っています。最近パソコン制御のテプラを仕入れたため、トランジスタの表示が簡単になりました。このようなトランジスタは「ノイズ実験用」として、別に保管して下さい。
図2 実装図です。(※クリックすると画像が拡大します。)
写真2 基板を作成したところで動作チェックをします。
写真3 ハンダ面の様子です。
写真4 トランジスタ用のソケットです。
基板のままでは使い難いので、写真5のように生基板を加工して台を作りました。底面が写真6のようになります。普段はアルミ板に載せるのですが、サイズ的にちょうど良いものを探した結果で生基板となりました。それ以上の意味はありません。
写真5 生基板を加工した台となります。
写真6 このように片面の生基板を使っています。
4.測定
ノイズの分布をパソコンのFFTソフトで測ってみました。いつも使うefuさんのソフトです。測定結果1はVRで出力をMAXにしたところで、見事にノイズが出ています。赤いラインがリアルタイムのノイズです。青がピークホールドしたレベルで、黄色が平均レベルです。このように、ほぼフラットなレベルであると解ります。2SC2785は少しレベルが下がりましたが、まずまずでした。2SC1815では測定結果2のように、少しレベルが低くなりました。一応使えない事はないようですが、このレベル差は大きいと思います。
測定結果1 2SC3311を使った、出力最大時です。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果2 2SC1815で試してみました。(※クリックすると画像が拡大します。)
ダイオードも試してみましたが、あまりノイズの出るものは見つかりませんでした。シリコンダイオードは全くNGだったのですが、ゲルマダイオードは右肩下がりで出るものもありました。まるでピンクノイズです。ツェナーダイオードは大型の9Vだけ出るものがありました。目的外の使用方法なので仕方ありませんが、最終的には試すしかないようです。
AFアンプの入力に使ってスピーカの音を聞いてみると、どのような特色があるのかが私でも解ります。写真7のような超小型のスピーカを試すと、意外にもフラットな特性と解りました。スピーカによってクセが異なる事が解ります。特性の悪いアンプ込みで試したのですが、トランシーバなどを作る時のスピーカの選択に使えそうです。
写真7 試してみたボックス入りの超小型スピーカです。
もちろんパソコンのFFTアナライザを使って、無線機のオーディオ段の周波数特性を目で見る事もできます。まず、入力したノイズが測定結果3で、アンプを通したところが測定結果4です。20kHz近くではゲインが下がりますが、概ね40dBのゲインと解ります。特に低い周波数は上手く測れそうです。
測定結果3 アンプに入力したレベルです。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果4 アンプの出力です。40dBのゲインがある事が解ります。(※クリックすると画像が拡大します。)
5.終わりに
簡単なツールですが、スピーカやAFアンプの周波数特性を体感する事ができました。これで技術的な幅が少しは広がる事でしょう。このようなホワイトノイズは、この先発展させる事ができそうです。