1.はじめに

USBドングルを使った受信機、つまりRTL-SDRが紹介されて、もう4~5年でしょうか。Onlineトーキングでも川合さんが、No.153「超かんたんSDR入門」で紹介されています。私もこの頃に興味を持ち、そのUSBドングルを入手しました。ところが、「あ~こんな感じか」でストップし、そのままになっていました。何時の間にか、世の中から3~4周遅れになったように思います。

今年の3月にJARL栃木県支部の行うハムの集いに出席したときに、このUSBドングルを使った受信機が展示されていました。これはダイレクトサンプリングを使った30MHzまでの受信機でしたが、そこで忘れていたUSBドングルを思い出しました。そこで一念発起し(大袈裟な)、まずは写真1のように、単にケースを載せ変えただけのSDRを作ってみました。

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写真1 このようにアルミケースにしただけのSDRです。

2.RTL-SDRについて

今更なのですが、写真2のようなUSBのTV用ワンセグチューナー(USBドングルと呼ばれる)を使い、これをSDRに利用しようとするものです。これはaitendoで入手したもので、内部のチップにRTL2832Uを使用しているものとされています。このUSBドングルとSDR用ソフトを使ったソフトウェアラジオが、RTL-SDRと呼ばれます。ネットで検索すると、いくらでも情報が出てきます。私の説明よりもずっと的確です。写真3の右側にあるICがRTL2832Uです。

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写真2 使用したTV用のワンセグチューナーです。

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写真3 内部です。プラスチック部分を多少こじると簡単に開きます。

パソコンで使用するソフトにはHDSDR,SDR#などが紹介されています。どのソフトでも好みを選ぶだけですが、私は今のところHDSDRを使っています。

USBドングルは、基本的にはDC受信機ですが様々な処理をするようです。一般的にはクロックである28.8MHz以上の受信ができます。それ以下ではダイレクトサンプリングを行う事で受信する事が可能ですが、内部の改造が必要となります。これについては別途紹介したいと思います。また、30MHz以下を、100~130MHzに変換するアップコンバータもあります。これも別途紹介したいと思います。実は既に完成しており、写真4のように合わせて3台作っています。ドングル3兄弟といったところでしょうか。既にドングルとは呼べない気もしますが、気にしない事にします。

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写真4 ドングル3兄弟として3台作ってみました。左下が本機になります。

3.問題点

まずは改造をせずに、試しに受信してみるのが第一歩です。以前はどのソフトを使っていたかも記憶にありませんが、HDSDRをインストールしてみると30MHz以上は簡単に受信できました。良く言われている事ですが、幾つか問題点があります。まず、広帯域の受信機とした場合、消費電流が350mA程度となり、ICの発熱が無視できなくなります。どのように使うにしても、何かしらの方法で放熱を考えなくてはなりません。

アンテナ端子が「ちゃっちい」ので、何回も出し入れをしていると壊れてしまいます。私も一個壊しました。また、普通の同軸では直接の接続は不可能ですので、極細同軸に対応させる工夫が必要になります。

4.対策

問題点の対策として、小型のアルミケースに収納する事としました。少なくともアルミケースに入れて、ケースに熱結合するほうが安心です。

USBドングルは本来PCに直接差し込むように作られています。つまりUSB-Aのオスコネクタを使っています。しかし、このように小型とはいえケースに入れた場合、外部機器としてUSB-Bのコネクタを使い、パソコンから普通のUSBケーブルで接続するのが自然です。このUSB-Bコネクタ自体は売られているのですが、基板にハンダ付けして使うものばかりです。コネクタの使用方法を考えると当然なのですが、本機のような使い方をする場合はコネクタだけでケースに固定できると便利です。そこでUSB-Bのメスコネクタを入手し、まずは写真5のように金属製のカラーの位置を調整してスズメッキ線で仮に固定します。次に写真6のようにハンダ付けし、コネクタとカラーを一体化しました。これでケースにネジ止めできます。もちろん、ハンダ付け後にスズメッキ線は外します。

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写真5 USB-Bコネクタにカラーを束ねて、スズメッキ線で縛ります。

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写真6 カラーをさっとハンダ付けします。

USBドングルのUSB-Aコネクタは不要になりますし、ケースに入れるのに邪魔になりますので外します。写真7の4ヶ所をニッパで切断し、2箇所のハンダを外せば簡単に外せます。コネクタを再利用しようとすると面倒な作業になりますし、基板を痛めますので止めた方が無難です。コネクタの配線は図1のようにします。使っている色は適当ではなく、ケーブルの内部で使う色のようです。実際には何色でも使えるとしても、赤と黒だけは明確にするべきでしょう。もちろん、ケースに余裕があれば、特にコネクタを外す必要はありません。

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写真7 4ヶ所をニッパで切り、USB-Aコネクタを外します。

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図1 USB-Bのコネクタと、取り去ったUSB-Aコネクタ跡の間の配線です。(※クリックすると画像が拡大します。)

このようにまとめる事とし、ケースはタカチのYM-90にしました。ケースの穴あけをしたところが写真8になります。基板は写真9のようにグランド部分にスズメッキ線をハンダ付けし、生基板に固定しました。中央の赤いワイヤーはアンテナ端子からの極細の同軸ケーブルです。

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写真8 YM-90に穴あけをしたところです。

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写真9 USBドングルのグランド部分にスズメッキ線をハンダ付けし、それで生基板上に固定します。

写真10のように動作確認をしながら、発熱するICにクールスタックを貼り付け、ケースに熱結合をしました。クールスタックは鋏で必要な大きさに簡単に切れる放熱器です。クールスタックだけでも放熱になりますが、ケースに接触させると更に効果があります。どのICも熱かったので、ベタベタに貼ってしまいました。なお写真では解りませんが、クールスタックによってショートしそうなところには、予め絶縁のカプトンテープを貼っています。その上からクールスタックを貼っていますので、ショートする心配はありません。もちろん、放熱しようとする部分にカプトンテープは貼れません。

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写真10 熱くなるICにはクールスタックを使って放熱します。

このようにして内部は写真11のようになりました。

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写真11 内部はこのようになりました。

5.使用感

ドングルのままと違って十分に放熱対策ができますので、安心して使う事ができます。もちろん、SDRとしては基本的に何も変わっていません。ただ、入力にBPFやアンプを入れるような実験は格段にやりやすいでしょうし、コネクタで悩む事もなくなります。長時間でも安心して動かせると思います。