エレクトロニクス工作室
No.148 Tiny Morse全部入りキット
1.はじめに
このキットは、ハムフェア2016でA1クラブが頒布していたものです。これを、たまたま某懇親会のジャンケン大会で勝利した事で、入手しました。少々不純と思われる入手経路ですが、作ってみたところ想像以上のキットで、私にとってはCWの練習にとても良さそうです。
というのは、私は昔からCWが苦手で、高校時代に2アマを取った理由というのが、「アマチュアテレビ」でした。テレビの方はとっくに頓挫していますし、今では4アマでもテレビが可能です。そのような動機ですので、試験に出ない数字や記号は最初から覚えるつもりがありませんでした。送信のテストの時に、試験官から「はい、受験番号打って」と言われて固まり、当然のように間違えてしまい「ちゃんと覚えてね」と言われたのでした。そんなつもりはないのだと思いながらも、何とか26文字だけで2アマはパスしました。
あれから40年以上が経ち、このキットを作って聞いてみるとランダムでCWが出て来ます。しばらく「フンフン」と聞いていたのですが、徐々に引き込まれていくように感じました。苦手の数字や記号も慣れてくると、少しずつ解るようになって来ました。ちょっと使っただけですが、明らかに上達したようです。まあ元のレベルが超低いので、頭脳が衰えていても多少の上達はするのでしょう。これはひょっとすると、アマチュア無線家として飛躍のキッカケになるのではと思い、A1クラブに記事の執筆の許諾をお願いした次第です。
キットとしてはブレッドボード上に作るようになっており、簡単なものです。作ったところが写真1です。「全部入り」というのは欧文用、和文用、温度計用、ラーメンタイマー用とICが4個入っているからです。私がハマッタというのは、もちろん欧文用になります。そして、長く使うためにはブレッドボードでは少々頼りないように思い、使いやすいようにユニバーサル基板に乗せ換えて写真2のようにまとめました。
写真1 ブレッドボード上に作ったキットです。
写真2 使いやすいように、ユニバーサル基板に作り直した様子です。
2.回路
図1のような回路です。温度計のセンサー用ICが付いていますが、温度計以外の用途では使いません。あっても支障はありませんので、付ける事にしています。これで4個のICが全部使えるようになります。もちろん、「温度計は使わない」というのであれば、省略しても良いでしょう。
図1 回路図です。(※クリックすると画像が拡大します。)
この回路はブレッドボードで作った時も、ユニバーサル基板に作り直したときも基本的には同じです。但し、ユニバーサル基板の実装図を作ってみたところ、アース側の引き回しが思いのほか長くなってしまいました。この程度でトラブルになるとは思えませんが、念のために0.1μFを余分に入れてあります。
3.作製
キットは写真3のように袋に入っていました。部品としては写真4のように僅かです。これにソフトが入ったICが写真5のように4個です。これを用途によって差し替えます。
写真3 このように袋に入ったキットです。
写真4 内部の部品です。アルミ箔に包まれているのは次のICです。
写真5 アルミ箔に包まれていたIC4個です。
まずはブレッドボードで作製したのですが、電池ボックスのワイヤーもそのまま差し込めますので実に簡単です。電源スイッチもボックスに付いています。ただ作業中は、何かの時に電池がショートしないように電池ボックスには何も入れないか、電源スイッチは必ずOFFにしておくなど慎重に作業を進めると良いでしょう。取説の実装図の場合、圧電ブザーとタクトスイッチが接触しますので、タクトスイッチを一列離しました。離すのにスズメッキ線を余分に使用しています。これで写真1のようになりました。ICを入れ替えて試したところ、全て問題なく動作しました。
もちろんキットとしてはこれで完成です。しかし前述のように、かなり使えそうなため小型のユニバーサル基板上に乗せ換える事としました。まず図2のような実装図を作製しました。これに従いハンダ付けしたところが写真6です。電池ボックスは、手持ちにあった単4の2本用を使いました。電源用のスライドスイッチとユニバーサル基板も、手持ちを使いました。ハンダ付けが済んだところで、写真7のように動作チェックを行います。使用しないICは、ユニバーサル基板上に貼り付けた導電スポンジに差し込んで保管するようにしました。
図2 ユニバーサル基板に作り直すための実装図です。(※クリックすると画像が拡大します。)
写真6 ユニバーサル基板にハンダ付けしたところです。
写真7 まずは動作チェックをします。
最近ですが、ユニバーサル基板に合わせた仕上げ用のアクリル板が売られていますので、これを台にしています。台がある方がハンダ面に触れる事も無くなりますし、しっかりとした感じになります。ゴム足も付けて、写真8のように完成としました。
写真8 アクリル板に載せて完成としました。
4.使用感
40年以上前は、自分で作ったAF発振器を使ってオープン式のテープレコーダに録音し、それで受信の練習をしていました。こんな練習では上達するはずがありません。当時はCW練習用のカセットが売られていたと思いますが、とても高くて高校生の買えるものではなかったと記憶しています。
それに比べ、CWを覚えるのに良いキットと思います。ただ超初心者の私から見ると、スピードの調整が下げる一方向なので、合わせるのが大変です。ボタンをどの程度押すのかが良く解りませんし、押し過ぎると一番早いモードに戻ってしまいます。調整が両方向に変えられると操作性が良くなると思います。
残念ですが、当面は再頒布の予定はないそうです。今欲しいという問い合わせには対応できないそうです。次のハムフェア2017の時にリクエストしてみて下さい。