1.はじめに

もう30年以上も真空管から遠ざかっていましたが、最近どうしてか真空管のスーパーラジオを作りたくなりました。今になってアルミの穴をたくさん開けるのも大変ですし、部品も簡単には集まりません。そのままになっていたのですが、ハムフェアでMT管を使った4球スーパーのキットを見つけました。写真1が完成した様子です。北海道のNPO法人「ラジオ少年」で購入したものです。

写真1 完成した4球スーパーのキットです。

13回目で紹介したICラジオも「ラジオ少年」のものですが、この4球スーパーは後になって通販で購入しました。4球スーパーのキットには、6AK6を使っているスタンダードタイプと、6AQ5を使っているデラックスタイプがあります。30年以上前に6AQ5で開局した私としましては、当然デラックスタイプになります。

このようなラジオは、トランジスターやICを使うラジオと比較して、購入額が高くなりますので最初に御承知おき下さい。

2.回路と部品

私も最初の頃は、このようなスーパーラジオや0-V-2などの真空管の自作をしていました。その頃と変わらない回路を、図1に示します。実際に使用した数値を入れていますが、ロットによって異なる事もあると思います。

図1 4球スーパー全回路図になります。全て使用している値を記入しています。

部品の入手を考えると、キット化は簡単ではありません。相当な努力があった事と推察します。従って部品を見ると、昔とは異なった部分もありますが、それも仕方のない事です。また、ロットによって部品の入手先が異なったりしていますので、この記事と合わなくなる場合もあると思います。その点は御了承願います。

整流はダイオードを使っているため4球ですが、最近では6×4を使った5球タイプが新しく出ていますので、更にこだわる方には5球をお勧めします。私としましては、5MK9の方が親しみがあるのですが・・。

写真2~写真13に使っている部品を示します。昔と変わらない部品や、ちょっと違う部品など様々になります。

写真2 このように部品をまとめて、丁寧に梱包されて到着しました。

写真3 10cmのスピーカーです。

写真4 OUTPUTトランスです。ちょっとピンボケですみません。

写真5 IFTです。マイナスのドライバーで回すタイプではなく、6角で回すコアを使っています。半導体で使うタイプを大型化したように思えます。

写真6 ANTコイルです。

写真7 バリコンです。ちょっと小型ですが、290pFと120pFの2連となっています。

写真8 局発のコイルはコア入りのコイルではなく、トロイダルコアに巻きます。

写真9 ネジ類です。

写真10 シャーシとラグ板です。ラグ板はニッパーで切って使います。

写真11 配線に使うワイヤー類です。

写真12 「うわーっ」という感じの古い箱に入っていた真空管です。

写真13 蓑虫のように包まれて6AQ5が出てきました。

3.回路

真空管は初めてという方が、一人で組み立てるのは難しいと思われます。説明書はなく、回路図が一枚入っているだけですので、回路が読める事はもちろん、真空管や部品の知識と調整方法及び、ハンダ付け等の組み立て技術を持っている必要があります。

プリント基板と異なり、シャーシ内を自由に配線できる事になります。しかし、ここは「ラジオ少年」のWEBより見本を印刷し、手本としました。まずはシャーシに部品をネジ止めします。昔はJISの3mmネジを使っていましたが、さすがにISOネジが入っていました。バリコンだけは羽根を曲げてしまいますので、必ず短めのネジを使用します。部品は整理されて梱包されていますので、迷う事もなくネジ止めは終了します。

写真14と写真15がネジ止めを終わった状態です。アンテナコイルは背が高いため、シャーシ内の配線をしようとすると、直接荷重が加わってしまいます。IFTを何らかの台で支えれば良いのですが、思わぬはずみでコイルのボビンを割ってはいけません。そのため、この取り付けは最後にしました。

写真14 部品をネジ止めしたシャーシです。

写真15 ANTコイルを除いてネジ止めした様子です。

OUTPUTトランスはシャーシの構造から、上側に取り付ける意図が見えます。それでも良いのですが、先々このスペースを使う事を考えて、シャーシの下側に取り付けました。最近は18W程度のハンダこてを使う事が多いのですが、いくら何でも小さ過ぎます。60Wで試したところ、ちょっと大き過ぎる感じでしたので40Wを使いました。

このような配線は、シャーシの奥側に何を置くかを考えます。普通はアース線が一番奥になります。コンデンサや抵抗は一番手前になります。従ってアース線から配線し、ヒーター、B電圧などを配線し、最後にコンデンサと抵抗を配線する事が基本となります。私もWEBの見本を参考にしながら配線をしましたが、部品の変更等もあり必ずしも一致しません。回路図だけで配線する場合には、コンデンサと抵抗をどこに付けるかをメモしてから配線します。

行き当たりバッタリという方法では、どこかで破綻します。その昔に何回も実証しました。写真16がアース線をハンダ付けしたところで、写真17,18が低周波部分の配線を行ったところです。

写真16 まずはアース母線のハンダ付けからします。

写真17 低周波段の配線を大体終わったところです。

写真18 低周波部のアップです。

ラジオ少年のWEBでは、ブロック型のケミコンが製作例として使われていたのですが、プリント基板で使うようなタイプになっていました。そのため、この部分は見本と全く異なり、写真19のように配線しました。ケミコンは熱を嫌いますので、もう少し2kΩと間隔を取るべきでした。

写真19 電源回路はこのようにケミコンのタイプが異なるため、ラジオ少年のWEBとは全く異なる配線になりました。

OSCコイルはトロイダルコアに巻きます。メモが入っていますが、120pFのバリコンを使いますので、20~21回巻くという指定です。後で困らないように1~2回余分に巻き、受信周波数を確認してから決めるようになっています。そこで、かなり多めの27回巻きとしておきました。余分に巻いた分について、後から巻き戻すと大変です。そこで写真20のように、インダクダンスを変える事ができるようにしてみました。ヤスリでエナメルを剥がしジャンパーをするようにしただけですが、1巻毎に自由に増減が可能です。結局は22回巻きのところへジャンパーをしています。

写真20 局発のコイルは、可変型にしてしまいました。最大27回巻きとしましたが、何回にでもできます。この写真では23回になっていますが、このあとで22回にしています。更に変更になる可能性もあります。

カソードへのタップはアース側より3回となっていますので、3回のところでエナメルを削り別のワイヤーをハンダ付けしました。

4.調整

写真21が全てのハンダ付けを終わったところになります。ここであわてて真空管を入れて電源ONをする前に、まずは配線ミスが無いか良くチェックします。次に真空管を入れずに一瞬だけ電源をONにして様子を見ます。異常が無ければ、B電圧とヒーター電圧を素早くチェックします。良好であれば6AVと6AQ5を入れて、ボリュームのセンターに触れた時にノイズが出れば、低周波回路は動いています。次に6BA6と6BE6を入れて受信してみます。うまく動作していれば、何らかの放送が聞こえてくるはずです。写真22は久々に見た、ほんのり輝く6AV6と6AQ5です。

写真21 内部の配線を終わったところです。

写真22 「6AQ5だぁー」と騒ぐ著者の私でした。

IFTは6角で回しますが、合っているはずの6角で回しても重くてコアを壊しそうです。金属製のドライバーなどでは、すぐに割るでしょう。1回程度で済むはずですので、そっと回します。重いコアなのですが、不思議なくらいに軽くなるポジションがあるようです。あまり回したくないコアです。

次にトラッキングの調整です。局発のコイルはジャンパーで増減できるようにしましたので、安心して調整できます。SGがあると良いのですが、放送を聴きながらでも何とかなると思います。低い周波数はLで、高い周波数はバリコンに付いているトリマーコンデンサで合わせます。何回も繰り返し、納得の行くまで調整して下さい。

5.おわりに

普段はICやトランジスターの工作をしていますので、知らない間に感電の事を考えずに作業をするようになっていました。このような感覚で触っていると感電します。思わぬ事故になる可能性もないとは言えませんので、十分に注意をして作業をして下さい

次回は、この4球スーパーにパネルやSメータを付けて、「通信型受信機」という雰囲気にしてみます。