エレクトロニクス工作室
No.17 4級スーパーラジオ2
1.はじめに
前回は「ラジオ少年」の4球スーパーラジオを紹介しました。キットとしては完成ですが、もうちょっと使いやすくしたくなります。写真1のままでは、スピーカは転がっているだけですし、持ち運ぶ時に感電したくありません。
最初から考えていた事ですし、組み立てた後にシャーシへの穴アケの追加をすべきではありません。しかしキットの紹介を考えて、一度組み立ててから改造する、という形としました。そこで今回は改造編で、写真2のような仕上げを紹介します。写真3のようなアルミ板やバーニヤダイヤルが材料になります。
写真1 キットとして組み立てたままの4球スーパーです。
写真2 改造後の様子です。
写真3 使用した部品は、アルミ板、バーニヤダイヤル等です。アルミ板は加工前です。
2.パネルの製作
まず、パネルが無いと締まりませんし、使いにくいです。そこで写真4のようなアルミパネルを作成し、取り付けてみました。トランスがジャマをして市販のアングルが使えません。そこでシャーシの両サイドが開いている事もありますので、アルミ板を加工してサイドにネジ止めしました。これで機械的にガッチリとします。写真5~7が、位置をチェックしながら少しずつ加工を進めている様子です。スピーカーもアルミパネルに固定しますと、転がっているスピーカとは全く違った音になります。もちろん、次項のSメーターも考えて穴あけを行っています。アルミ板は1.5mm厚のものを使用しています。
写真4 加工後のアルミ板です。
写真5 アングルとパネルを作成し、取り付け用の穴あけを行った時点で仮組みします。精度や状態をチェックして、修正すべきは修正します。
写真6 本体によって場所が決まってしまうバーニヤダイヤルと電源スイッチ、ボリュームの穴あけを行い、再び仮組みします。スピーカとSメータの位置を検討します。
写真7 スピーカ、Sメータの穴あけを行い、再び仮組みをします。この後、保護用のフィルムを剥がすと写真4の状態になります。
チューニング用には、昔懐かしいバーニヤダイヤルを使ってみました。これはラジオデパート3階のシオヤ無線で購入した50mmのもので、1360円でした。今どき購入が可能とは思ってもいませんでしたが、35mmや更に大型もありました。バリコンのシャフトの位置がパネルの直前までとなっていますので、バーニヤダイヤルにはちょうど良く、パネルの加工だけで済みます。但し、カップリングは使用できませんので、精度良く取り付ける必要があります。バリコン直結のツマミでは同調が取り難かったのですが、バーニヤの減速比程度がちょうど使いやすい感じです。
パネルを取り付けると締まった感じになりますし、後方から見ても写真8のように「ラジオ」という感じになります。
写真8 組み立てると、このようにちょっと違った感じになります。
3.Sメータの追加
次にSメータを考えて見ました。ジャンク箱にはメータもラジケータも転がっていますが、このようなラジオには黒くて丸いメータが似合いそうです。ところが、パネル面を見ると、バーニヤダイアルの位置は決まってしまいます。スピーカも大きいため、電源トランスとバーニヤダイアルの間にしか置けません。するとSメータで使えるスペースは、電源トランスの前だけです。これでは外磁型といわれる普通のメータでは、後ろがトランスと接触してしまい使えません。そこで、ここは内磁型のラジケータでガマンする事にしました。この位置でも普通に取り付けようとすると、トランスに接触しますのでラジケータは表示部を下に置き、パネルのやや上側に取り付けました。後ろからの取り付け状態を、写真9に示します。このようにトランスとの間隔は、ほとんどありません。
写真9 Sメータとトランスとの間隔は僅かしかないため、表示部を下側にするしかありません。トランスにネジ止めしている生基板は、Sメータの固定用です。黄色い配線は照明用のランプに接続します。
図1のSメータ回路は、自作では良く使われていた回路です。欠点はメータが逆ブレとなる事ですが、この場合にはちょうど都合が良い事となります。
図1 6BA6のSメータ回路で、VRは0点(但し逆ブレ)の調整用です。
ラジケータはジャンク箱より写真10のような丸いものを探して使う事としました。中を見ると、針のペイントが剥がれかかっています。古いラジケータでは良くある事ですので、これをカッターナイフで全部落としてしまいます。次に赤いPOSCAで針を丁寧に塗って復活です。普通の油性のマジックでも塗る事は可能ですが、POSCAの方がハッキリと見えます。目盛はパソコンで図2のように作り、ラジケータに貼り付けした様子が写真11です。また、写真12のようなムギ球がありましたので、裏にそっと穴を開けて内部を照らすようにしました。Sメータの目盛を照らす雰囲気は、写真13のように、ムギ球の位置が悪く針の影が写ってしまいました。まあ雰囲気だけなので、良い事にしました。
写真10 ジャンク箱より取り出してきたSメータは、針の塗装が剥がれかかっています。
図2 パソコンで作ったS目盛です。
写真11 針にPOSCAを塗って、パソコンで作った逆ブレ用の目盛を貼ったところです。黄色い用紙を用いる事で、雰囲気を出しています。
写真12 このような、5~6V用のムギ球がありましたので、使ってみる事にしました。
写真13 取り付けて照明すると、針の影が出てしまいましたが、良い事にしました。
Sメータが付くと、ピークを視覚として捉える事ができますので、調整が格段とやりやすくなります。従って、再び調整を行うと良いでしょう。
4.ボリュームの変更
ボリュームを回すと解るのですが、底面との間隔が少なく、指がツマミの下に入りません。そこで、ゴム足を使ってシャーシを15mm程底上げしました。これだけで、ずっと回しやすくなります。
6AQ5の出力は、ほとんど大音量という感じのパワーを持っています。電源スイッチ付きボリュームが、ONとなるポイントからほとんど右へ回せません。40年前のように、家族揃ってラジオを聞くという事も考えられませんので、パーソナルなラジオとしてはもう少し音量を絞れた方が、扱いやすくなります。そこで、ボリュームは500kΩではなく150kΩとして、更に330kΩをシリースに入れて音量を制限しました。制限する位なら最初から6AQ5ではなく、6AK6のスタンダードタイプで十分と言われそうですが……。電源スイッチはトグルスイッチに変更し、シャーシ左側の丸穴を使って取り付けました。この付近には整流回路を入れていましたが、ここを使うしかありませんでしたので移設する事にしました。ラグ板を小さく切ったプリント基板にハンダ付けし、この基板を今までのネジにネジ止めしました。写真14がこの様子です。
写真14 電源スイッチはボリュームのスイッチを使わずに、トグルスイッチを新設しました。裏側の電源回路と接触しますので、20mmほど移設しました。生基板に電源回路のラグ板をハンダ付けし、その生基板を今までのネジに固定しました。
最終的な回路は図3のようになりました。前回紹介した回路と、基本的には全く変わりありません。
図3 改造後の全回路図です。前回の回路図では6AV6プレートの220pFが抜けていました。
5.更に
途中で気が付いた事ですが、シャーシの奥行きが少ないため、このままシャーシ内の配線を見ようとすると、後方へ倒れるという不安定な状態になってしまいます。そこで写真15のように、アルミをL字型に加工した支柱をトランスに付けて、シャーシ後方の荷重を支えるようにしました。これで写真16のように安心してひっくり返せるようになりました。
写真15 トランスのネジ穴を利用し、アルミ板で作ったL型の金具をこのように固定しました。これで引っくり返しても安定しますので、作業に集中できます。一番重いトランスを支えるのですから、これが一番安定する方法と思います。
写真16 この通り、安定しています。
6.おわりに
このようにして、写真17のようなラジオにまとめました。普通の管式の受信機には違いありませんが、30年以上前の「初歩のラジオ」とか「ラジオの製作」に出ていた、「通信型受信機」の雰囲気です。もちろん、このままでは中波だけですので、「通信」はできません。
写真17 これで、とりあえず完成としました。
これで、とりあえず完成としておきます。これ以上手を入れようとすると、短波も入れて2バンド化とか、BFO、バンドスプレットなどと、さすがにQマルチとかQ5erは……ですが、段々と深みにはまってしまいそうです。楽しそうな深みですね。
このような雰囲気でまとめましたが、木の箱を作り、糸掛けダイヤルとし、マジックアイを使うというレトロ調の仕上げも、もちろん可能です。そのような方向には参考になりませんでしたが、悪しからずです。実際に作ってみると、シャーシの構造はレトロな雰囲気に向いているようにも思えました。
このように、いろいろとアイデアが出てくるのは楽しいキットだからです。私も中年世代になってしまいましたが、間違いなく昔の「ラジオ少年」にタイムスリップできるキットです。