1.はじめに

この発振器は、SGの製作(CQ誌2005年6~9月号 写真1)の実験中に派生してできたものです。AF発振器といえば、CRとかLCを使った発振器が最初に思い浮かぶと思います。それはそれで良いのですが、CPUとD/Aコンバータを使っても簡単に作る事ができます。普通は増幅器に正帰還をかけて発振させるので発振器です。しかしこの発振器は、クロックの水晶は発振させていますが、ソフトで出力レベルを順番に変化させますので実際には発振してない、ニセモノの発振器です。何といっても元は水晶がクロックですので、LCやCR発振器と比べると周波数の安定度だけは抜群に優れている事と、周波数を簡単に変える事ができる特長があります。

写真1 CQ誌2005年6~9月号に載りました、60MHzまでのSGです。

今回は、写真2のような実験用のAF発振器を紹介します。基本的にはSGで使ったAF発振部の回路と同じですが、DIPスイッチを追加しており、この設定値で周期、つまり周波数を変える事ができるようにしました。

写真2 AF発振器です。A/D OUTとテプラで表示してありますが、どう考えてもD/A OUTの間違いです。AFOSC06.asmとメモが貼ってあるのが12.8MHzのオシレータで、ソフトのバージョンのメモです。

2.回路

CPUの出力は8ビットで、これをD/Aコンバータに入れてサイン波にします。D/Aコンバータには、写真3のように10kΩと20kΩの抵抗を使って作っています。12kΩと24kΩでも良いのですが、手元にあった値を使った関係で、1/4Wと1/6Wタイプのチャンポンになってしまいました。出力にはオペアンプ使ったLPFを使っていますので、きれいなサイン波を作る事ができます。図1に回路を示します。簡単な回路ですが123Hz~6.7kHzを出力する事ができます。

写真3 D/AコンバータはICソケット上に作成しました。10kΩと20kΩを使っていますが、W数がチャンポンになってしまいました。全て1/6Wタイプの方が作りやすいでしょう。

図1 発振器の全回路図です。

LPFは、写真4のようにOPアンプを使った電圧ソース2次型LPFを、2kHzで設計しています。従って、6kHzでは出力レベルが低下してしまいます。1kHz前後を中心と考えていますので仕方なしとしましたが、2kHz以上を中心として使うのであれば、ソフトとLPFを変更した方が良いでしょう。

写真4 LPFの部分です。OPアンプには入手容易な2904を使っています。

周波数はクロックの周波数によって変化します。私が使ったのは12.8MHzのクリスタルオシレータですので、変更すると周波数も変化します。出力は600Ω近くなるようにしていますが、トランスを用いて不平衡を平衡にする方法もありますので、もう少し進化させる事は容易です。

3.製作

例によってジャノメ基板上に組み立て、電池には4.8Vのボタン型ニッカドを用いています。周波数の選択はDIPスイッチで行うようにしています。周波数とDIPスイッチとの関係は表を作り、写真5のようにラミネートして基板にぶら下げるという、究極の原始的手法です。ケースに入れて出力に端子を使う事で、もっと測定器らしくする事はできますが、気軽に引っ張り出せるツールという事で、ジャノメ基板のままにしています。このようなものをケースに入れてまとめてしまうと、机の上が一杯になってしまうという事情もあります。ジャノメ基板なら引き出しにジャラジャラと入り、何かの時にさっと出して使う事ができます。困った事に、ジャノメ基板の裏に貼るゴムの絶縁シートが最近入手難になってしまいました。このシートが無いと、ニッカド電池も載っていますのでショートした時に危険です。ジャラジャラと保管する時には、静電気防止用のビニール袋に入れておく等の対策をしましょう

写真5 このようにラミネートした表をぶら下げています。

調整などはありません。電源を入れてD/Aコンバータの出力とLPF出力を確認します。AFアンプで音を出しても良いのですが、オシロスコープを使うと写真6のようなデジタルらしいサイン波を見る事ができます。もし、この波形が周期的に乱れているのであれば、抵抗ラダーの不良が考えられます。実は私も抵抗のハンダ付けに一ヵ所しくじっていて、周期的なヒゲを作ってしまいました。これは簡単に直しました

写真6 D/Aコンバータの出力は、このように段階的になってしまいます。OPアンプを使ったLPFの出力では、きれいなサイン波になります。

4.ソフトウェア

図2のようなフローで動いています。全く簡単なソフトです。出力する値はエクセルでサインを計算したものが元で、ソフトの変更を行いD/Aコンバータの後のLPFを外せば、三角波や方形波、矩形波なども自在に作る事が可能です。

図2 1サイクルを100分割し、3.6度ステップで出すべき値を設定しています。次のステップに移る時のタイマーでDIPスイッチを読んでタイミングを調整しています。

5.おわりに

この発振器を作った時には、使い勝手などあまり考えずに作っていました。(いつもの事ですが)この出力に600Ωのアッテネータでも付けてレベル調整をすれば良いと考えていたのですが、半固VRを基板用のVRにでもしておけば、簡単にレベル調整をする事ができます。但し、そのまま置き換えると、OPアンプで飽和してしまいますので、図3のように制限用の抵抗を入れておけば良いでしょう。

図3 このようにして出力をVRで調整する方法もあります。

最近ではパソコンを使ったAF発振器もありますので、このようなものは既に古いかもしれません。しかし、機器に組み込む場合や、簡単な実験をする場合には便利な測定用ツールとなります。