1.はじめに

今まで自作のトランシーバーなど数多く作ってみましたが、不思議にアンテナは市販のものを使っており、自作した事がありませんでした。しかし、最近では50MHzのハンディトランシーバーに合うようなものが見つからない事もあり、写真1のようなアンテナを作りましたので紹介します。

写真1 このような50MHzのホイップアンテナです。後ろのキタナイところは見ないで下さい。

2.部品

極力どこにでもある部品を使って、作る事としました。50MHzとはいえ1/4λの長さは1.5mになりますので、ハンディ用とするのであれば当然短縮する必要があります。そこでエレメントと短縮コイルの工作をどのようにするかが鍵となります。

エレメントが固定では、持ち運びに不便になってしまいます。そこで伸縮するホイップアンテナと、コイルを組合わせる事としました。ホイップアンテナの自作は困難ですので、ジャンクで30~50cm程度の適当なものを購入して来ます。もちろん、もっと長い方が電気的には良いのですが、機械的強度を考えると限度があります。なお、ネジでガッチリと固定できる構造の方が、後々の工作が簡単になります。

短縮コイル用には、近くのホームセンターでアクリル製21mmφのボビンを購入します。アクリル製でなくても、塩ビのような絶縁体でも良いでしょう。この内部にピッタリ入る大きさの、20×50mm位の両面基板も用意します。

トランシーバー側のコネクタと接続する部分が一番悩ましいところです。ここにはジャンクのアンテナを分解したあとの、BNCコネクタを利用しました。元は写真2のような業務用無線機のヘリカルホイップアンテナです。ゴムの部分をカッターで切って取り去ります。大きめのハンダコテで暖めますと、ヘリカルの部分は簡単に外れます。何個が分解するとコツが掴めますが、一個でも何とかなるでしょう。熱を加え過ぎると絶縁部分が溶けてしまいますので、できれば外しておくと良いでしょう。普通に回すと外れるはずです。アンテナによって構造が異なりますので、それぞれ工夫が必要です。

写真2 分解した業務用無線機のへリカルホイップアンテナです。

3.作成

まず、使用するホイップアンテナの長さを測ります。その長さによってコイルのLが変わってくるからです。この計算にはCQ誌2006.6の付録に入っているCDのソフトと、WEBでダウンロードしたものを使用しました。

ホイップ部分の長さが36cmでしたので、計算するとコイルは2.73μHが必要となります。もちろん使用するホイップアンテナの長さによって異なりますので、各自計算して下さい。これで電気的な長さは50MHzに合いますが、インピーダンスが870Ω程度となってしまいますので、SWRは17.4にもなってしまいます。そこでLを分割した、マッチング回路を入れます。最終的には、図1のようにしました。

図1 このような構造にします。

写真3は部品を集めたところです。この他にコイル用に0.5mm程度のポリウレタン線を使います。BNCコネクタの中心部に合わせて、両面基板に切れ込みを入れます。ハンダ付けしたときに、しっかりとアンテナ全体を支えられるようにしなくてはなりません。この反対側にはホイップアンテナを取り付けるネジ穴を開けます。ガッチリ固定できるような構造のホイップを探す必要があるわけです。このままでは、BNCコネクタとホイップが直通になってしまいコイルが入りませんので、中間部分を両面共に削って絶縁部分を作ります。カッターで軽く筋を入れてから削って作りました。写真4がこの両面基板の完成したところです。

写真3 使用した主な部品になります。

写真4 両面基板をこのように加工します。裏表とも同じです。

2.73μHのコイルですが、巻数を計算するソフトを使いました。21mmの直径でコイルの横幅を30mmで巻いた場合、16巻となりました。アクリル製のボビンを50mmの長さに金ノコで切断し、0.8mm程度のドリルでコイルの巻き始めと巻き終わりの所に穴を開けます。後々の調整を考えて、間隔は広めにしておくと良いでしょう。

4.調整方法

調整はFRMS+FREX+方結を用いて行いました。接続方法などは、第12回のFREXを参考にして下さい。調整はコイルの間隔を変える事で行います。巻数は調整した結果、16回の予定が14回となりました。増やそうとするのは困難ですが、減らすのは簡単です。コイルのボビンと基板間にハンダコテを突っ込んで一巻ずつ減らします。もちろん、ボビンを溶かさないように注意する必要があります。

ハンディトランシーバーを前提として調整すると、あまりに周囲の影響が大きい事に気が付きます。調整してコイルを固定したところが写真5です。図2は10MHz幅で測定した結果です。図3は50~51MHzで測定した結果です。SWRの目盛は対数になっていますので、一番低いところで1.5程度となります。短縮したホイップアンテナですが、もう少し追い込めるような気もします。周辺の影響が大きいので、測定するタイミングでデータも大きく変わってしまいますので、実際に使用する時の値はまた違ったものになります。

写真5 調整してコイルをマジックハンダで固定したところです。

図2 10MHz幅で測定しました。

図3 50~51MHzの測定結果です。もう少し微調整したいところです。

普通のSWRメータでは、ダイオードの非直線性のため立ち上がりが悪いのが普通です。つまり、SWRが実際よりも良く見えてしまいます。その点、FRMS+FREX+方結を用いる場合は、ログアンプを使ってリターンロスを測定する方法ですので、SWRが1.0近くになっても良く見えてしまう事はありません。

調整完了後には、コイルが動かないようにマジックハンダや接着剤を使って固定します。コイルと基板との間もエポキシ系の接着剤で固定します。これで写真6のように、一応使用できる状態となります。仕上げに上から熱収縮チューブを被せて完成です。ついでに周波数やコールサインを貼り付けておきましょう。写真7のように2台作っていますが、どちらも同じ巻数で特性もほぼ同じです。

写真6 このように出来上がり。

写真7 仕上げに熱収縮チューブを被せて完成!!

5.おわりに

強度的にモービルには全く使えませんが、ハンディトランシーバーに使うには小型で最適という感じの洒落たアンテナとなりました。50MHzで作りましたが、どのような周波数で作る事も可能です。ただ、あまり短縮し過ぎるとダミーロードのようになってしまいますので、限度があります。逆にホイップ部分が長すぎると強度的な補強が必要となるでしょう。