エレクトロニクス工作室
No.32 7MHz CW受信機 その1
1.はじめに
今までAM,SSB,FMとトランシーバーや受信機を自作しましたが、CWに関しては今まで作った事がありませんでした。そこで、ラジオ用ICのTA7792Pを用いて、写真1のような簡単な7MHzのCW用受信機を作ってみました。洗練されていないところも多くあるでしょうから、CW初心者の作品として読んで下さい。
写真1 このような7MHz CW用受信機。ツマミはもう少し右に振った方が良かった。これではSメータの止めネジがジャマで、目盛が書き難い。
今回は、「その1」として回路の説明までを行い、次回に「その2」として作成と調整について説明したいと思います。
2.構成
TA7792Pは短波まで使用できるラジオ用のICで、第18回でも短波ラジオに使用しました。この手のICとしてはLA1600が良く使われており、TA7792Pの製作例はあまりみかけません。入手は容易ですので、今後は増えてくると思います。
IFは1MHz以下としますので、一般的に考えて455kHz付近となります。また、7MHzのCWは30kHzほどカバーできれば良いのですから、まずVXOを考えました。手持ちの部品や、入手しやすい部品を考えて、周波数構成を考えます。IFにはJA9TTT加藤さんの発表された世羅多フィルターを使う事としました(CQ誌2006.5)。手持ちのCSB455のセラミック振動子を用いて実験を始めましたが、VXOに使う水晶が入手できません。心当たりのジャンク屋を回っても、思ったような周波数の水晶はありません。CSB455を使ったCW用フィルター(図1)は、測定結果1のように443.2kHzが中心となりますので、VXO用の水晶を7.48MHzくらいで特注する事も考えました。しかし、何とか安く収める事を目指しました。
図1 CSB455を使った世羅多フィルターの回路。
測定結果1 CSB455を用いた443.2kHzの世羅多フィルターの特性です。
水晶は7.5MHzがサトー電気の通販で入手できましたので、VXOで無理やり下げる事も一つの方法ですが、これも問題ありそうです。ふと考えると、セラミック発振子は455kHzだけではなく、480kHzも多量に持っている事を思い出しました。470kHz付近のフィルターができそうですので、7.5MHzの水晶でVXOをすればピッタリと~7.03MHzとなります。480kHzのセラミック発振子も455kHzと同様に、割と入手しやすい周波数ですので追試は容易でしょう。
図2のように480kHzで世羅多フィルターを組むと、測定結果2のとおり468.2kHzのCW用フィルターができました。これで図3の周波数構成が可能となりました。なお、私の場合には468.2kHzとなりましたが、セラミック発振子によって多少の差がありますので、実際に作成しないと判りません。
図2 CSB480を使った世羅多フィルターの回路。
測定結果2 CSB480を用いた468.2kHzの世羅多フィルターの特性です。どうしてかロスが大きくなってしまいましたが原因は不明です。
図3 本機の構成です。
3.回路
周波数構成や使用するICが決まれば、回路もほぼ決まってきます。花野さん(JR7HAN)の記事(CQ誌2006.2)等も参考にしながら、写真2のように実験を進めました。最終的に図4の回路としました。
写真2 実験している様子。
VXOは2SC1815を用いて一石で済ませました。コイルにはVXO50を使ってみましたがLが足りず、VXOになりません。そこで1.9MHzのコイルを使ってみたところ、何とか7.5MHzの水晶を30kHz程VXOできました。実験では10sコイルの1-3間だけで充分だったのですが、基板に載せた時に7sに変更したところ10kHzしか動かなくなってしまいました。そこで図5のように、1-3間と4-6間をシリースにし、これで楽に30kHz動くようになりました。この場合、コイルの方向があります。シリースにしてみて逆に可変範囲が狭くなった場合は、どちらかのコイルを反対に接続します。4-6間のインダクタンスは1-3間に比べて随分小さいのですが、この効果は思いの外大きいものがありました。
図3 本機の回路図です。
図5 VXOの可変幅が取れない時には、このようにシリースにします。
VXOの水晶は、6.5536MHzの水晶が入手しやすいので、これを利用する手もあります。周波数が低いため更に動かし難くなる事と、周波数幅がちょっと狭く~7.025MHzとなりますが一応は使えそうです。いずれにしても10MHz以上の水晶と違い、周波数が低い分VXOとしては動かし難いのでLの選定が鍵となります。出力に入れている100Ωと220Ωの抵抗はアッテネータではなく、発振防止用です。これを入れないとTA7792Pの発振回路がそのまま動作するためか、全く受信できません。
468.2kHz世羅多フィルターは、480kHzのセラミック発振子を157個の中から発振周波数で選別し、5素子でCW用を作っています。この方法は、前述の加藤さんの記事に書かれています。写真3が選別作業をしている様子です。JA9TTT加藤さんは、「ひよこ」と称されていました。我が家のXYLは「黄色い兵隊さん」と称していました。面白い表現があるものです。
写真3 セラミック発振子を発振周波数で選別しているところ。
ここで問題になるのが、使用しているコイルの07M450です。周波数が高くなってしまったため、そのままでは同調できません。そこで内蔵のコンデンサをドライバー等で壊し、代わりに150pFを外付けにしています。これで同調はしますが、インピーダンス的にはかなり巻数比が足りないように思えますので、もう少し検討すべきでしょう。
LM358はAGC電圧を増幅してSメータを振らせるものですが、もう少し何とかしたい部分です。Sメータの振れはTA7792PのAGCに依存してしまいますので、メインのIC自体を再検討する事にもなってしまうのですが・・。
AFアンプはTA7368Pを使用しています。LM386でも良いのですが、電圧が低めなのでTA7368としています。このあたりの基本的な回路は第18回の「短波ラジオ」とほとんど同じです。
キャリア発振は2SC1815を使っています。コンデンサを大きめにして周波数を下げて、470kHz付近で発振させます。世羅多フィルターの出力側付近に弱めに結合させますが、同じ基板上に置いているだけで充分に結合してしまいましたので、出力はオープン状態です。実験を繰り返して解りましたが、うまく受信できない場合のほとんどは、この発振が強すぎるのが原因でした。そのためエミッタ抵抗は大きめにし、発振を制限しています。なお、発振子によって周波数にずれがあります。発振子を選択したり、0.0027μFを調整する必要があります。
入力のコイルはとても大切です。IFが468.2kHzですので、7.0MHzの受信時には7.469MHzがLOとなりますので、7.9364MHzがイメージになります。本来は7.0MHzのみを通過させ、7.9364MHzはバッサリと落とす必要がありますが、簡単ではありません。FCZコイルを2個使った回路では、20dB程度の差も無理でしょう。簡易型の受信機という事で、本機ではあまり気にしない事にしました。なおTA7792Pの入力インピーダンスは、データシートでは7.3kΩとかなり高くなっています。おそらくラジオ用のICですので、短いホイップアンテナかバーアンテナを想定しているのでしょう。しかし、これでは簡単に50Ωにマッチングできませんので、同時にインピーダンスを変換しています。
TA7792Pは1.5Vから動作しますので、LEDを使って安定化させた電源を使っています。しかし、入力信号が大きい場合には消費電流が増えてしまい、電圧が下がってしまう事がありますので、78L02等のレギュレータICを使う方法もあるかと思います。TA7792Pの最大定格は6Vまでですので、6Vのまま使用するのは止めた方が良いとしても、5V位にすれば充分に使用可能とも考えられます。
4.おわりに
中途半端で終わってしまって申し訳ありません。写真4,5のように仕上げましたが、作成、まとめ等については、次回に説明をします。
写真4 単3×4の電池ホルダーは裏面にネジ止めしました。
写真5 このようにジャノメ基板で組んでいます。