エレクトロニクス工作室
No.33 7MHz CW受信機 その2
1.はじめに
前回より写真1のような7MHzのCW受信機の紹介をしています。前回は回路の説明までとなってしまいました。今回の「その2」は作成についてですので、回路等については前回の「その1」を参照して下さい。
写真1 このような7MHz CW用受信機です。
2.部品について
前回も一部紹介しましたが、TA7792Pとセラミック発振子がキーデバイスになるかと思います。
TA7792Pは千石電商で230円で入手したもので、今のところ入手は容易のようです。試してはいませんが、LA1600でも同じ周波数構成で使う事が可能と思います。
480kHzのセラミック発振子は、ハムフェアで500個を100円で入手したものです。普通は一個50~100円程度でしょう。周波数の合ったものを選別しますので、ある程度まとまった数があった方が良い特性のものを作る事ができます。可能であれば、20~30個を入手して選別できれば良いかと思います。あるいはジャンクで1袋を購入できれば最高です。
3.作成
小型のモニター用受信機としても、充分な雰囲気をと考えて作りました。例によってアース付きのジャノメ基板で作成しています。この基板はサンハヤトのICB-96DSEとICB-98DSEがあり、大きさが違うだけですのでどちらでも使用できます。写真2は基板を作っている途中で、写真3が裏面の様子です。中央付近の大きなケミコンは470μFですが、後々不都合があり22μFに変更していますので、実際にはもっと小型になっています。図1が実装図になっていますので、比べてみて下さい。写真4が基板の完成したところです。一ヶ所ほど失敗して裏面に付けているところがあります。多少ずらせば充分にうまく納まるでしょう。図1の実装図は作成後に後追いで書いたものですので、あまりに配置が不細工だった事が解ってしまいます。
写真2 基板の作成途中の様子です。
写真3 作成途中のハンダ面です
写真4 基板が完成したところです。
世羅多フィルターの部分は長くなりますので、TA7792Pのピン間隔と全く合いません。世羅多フィルターの入力をICのピンと合わせ、出力は極細の同軸で基板上を引き回しました。部品のレイアウト上このようにしていますが、電気的には逆の方が良いようにも思えます。07M450は468kHzに同調させるため、内部のコンデンサを壊して150pFの外付けとしています。このような場合、きれいに取り去ろうとすると失敗します。小型のドライバーでコンデンサの中央を軽く押すと簡単に壊れますので、破片だけ出してそのままにしておきます。もちろん残ったリード線がシールドケースや基板のシールド部分などに接触しないように納めておく必要はあります。
図1 部品面からみたメイン基板の実装図です。(ちょっと不細工なレイアウトでした)
VXOはポリバリコンと水晶を離さず、一体化して作っています。出力は極細の同軸ケーブルを使って、メイン基板と接続しています。この方が余分な浮遊容量を避け、安定で広い周波数をVXOで発振させられるかと思ったのですが、効果の程は?です。VXO基板は、写真5のように作成しました。写真6が裏面の様子で、作り方はメイン基板と全く同じです。実装図は図2になります。
写真5 VXOの基板です。
写真6 VXO基板の裏面です。
図2 VXO基板の実装図です。
ケースはリードのPS-2に入れました。穴アケをした状態が写真7になります。もっと小型のケースに入れる事も可能ですが、シャックに置いて使うにはこの位の大きさがあっても良いでしょう。スピーカはケースの底面に取り付けましたが、もう一回り大きいケースにして前面に出しても良いと思います。
写真7 ケースはリードのPS-2を使用し、穴アケが終わったところです。
電源の単3×4本は写真8のように、ケースの裏側に電池ホルダーを取付けました。交換が楽なようにと考えていますが、見栄えという意味ではケース内に置く方法もあるでしょう。内部は写真9のように余裕がありますので、追加や改造も容易です。
写真8 単3×4本はこのようにケースの裏面にネジ止めしています。
写真9 完成した内部の様子です。まだまだ余裕があります。
ポリバリコンのシャフトは写真10のように、3×15mmのカラーと2.6×20mmの皿ネジの合わない同士のネジを接着剤で固めて使っています。ツマミの軸としては3mmのカラーが合い、ポリバリコン側の固定ネジは2.6mmが合います。購入する時に、中に通して「ピッタリだ」と呟いていたところ、「お客さん、それ合わないですよ!」とネジ屋さんに言われてしまいました。変な人と思われたのでしょう。「ポリバリコンのシャフトにするんですよ」と説明すると感心していたようです。なお、カラーはネジが切ってある方がガタ無くしっかりと固定できます。また当然ですが、丸型のカラーにします。六角のカラーではツマミが入りませんから・・。
写真10 ポリバリコンの自作シャフトです。3×15mmのカラーと2.6×20mm皿ネジを組合わせて、接着剤でちょっと付けるだけです。
5.使用感
世羅多フィルターの特性は、図3に示すとおり1kHzとなっています。バサバサと切れるわけではありませんが、良く動作しています。ラジオ用ICの流用ですので、歪などの点で多少の問題はあるかと思いますが、最初の一歩としては充分な受信機と思います。
Sメータはほとんど飾りで、無いよりはマシという程度です。レベルの低い信号で振れないのに、すぐに振り切れてしまう最悪のメータです。しかし、これでもあった方がずっと調整が楽になりますので、調整用と思って残しています。
6.使用感その2
CW用の受信機を作るのは初めてで、何かと良くわかりませんが、逆に興味深く面白く作ってしまいました。この受信機をJK1AFI大和田さんに試用を依頼したところ、次のように鋭い指摘がありました。
IC756で聞こえる信号はだいたい受信できる。ノイズすれすれの信号はさすがに厳しいとしても、国内QSOには充分な性能。周波数も安定している。強力な放送波の通り抜けがあるので、アッテネータをONにする必要があった。アッテネータは2~3段階にすると使い勝手が良くなる。電源ON時にメータが振り切れてしまい驚いた。フィルターは良く切れ、通常はちょうど良い位の帯域になっている。ただ、AGCはもう少し早い方が聞きやすい。VXOに目盛がない。
一応及第点らしいのですが、ちょっと甘いかもしれません。この試用に対して私のコメントですが、VXOは直線目盛にはなりませんので、時間をかけてじっくりと微調整を行ってから記入すべきでしょう。メインダイアルは、もう少し右に置くべきでした。このままではSメータのネジが邪魔になり、周波数の目盛の記入に支障があります。
アッテネータは裏面に付けてしまいましたが、前面の方が良かったかと思います。
TA7792Pの6ピンと電源間に470μFを使っていたため、AGCが長めになっていました。前月の回路図では22μFにしてありますので、多少は改善されています。もう少し短い方が良いとか、AGCを切るとかは今後の課題かと思います。また、電源ON時のSメータ振り切れもかなり改善はされています。
7.おわりに
この受信機を発展させトランシーバーにするのも良し、オールモード受信機にするのも良し、と思います。これで終わるつもりはありませんし、まだまだアイデアは出て来るかと思います。
TA7792PのようなICを使うと、入手不能になった時にどうしようもなくなります。しかし、その欠点も今のところは便利さで充分にカバーできると思います。