1.はじめに

このトランシーバキットは、2019年9月に行われた第6回北海道ハムフェアで見つけたものです。50MHzのDSBトランシーバで、基板と主要部品が入っていました。トランジスタや抵抗、コンデンサは入っていませんが、通販で入手が容易なものばかりです。部品の問題は無いと思います。なお、今年のハムフェアでも頒布の予定だそうですので、これからでも入手は可能のようです。

基板を作製してケースに入れ、写真1のようにまとめましたので紹介します。

 

写真1 このようにケースに入れてまとめたトランシーバキットです。

2.回路

 図1のような回路になっています。この回路図は、設計者であるJI3BSB山本さんに送って頂いたものです。送信は2SC3355をファイナルとして約10mWの超QRP出力です。受信はダイレクトコンバージョン方式という、DSBトランシーバとしては一般的な作り方なのでしょう。全体の構成としては、No.120のHAYABUSA6にちょっと似ています。

 

図1 山本さんから送って頂いた回路図です。

 

RFアンプやミキサーには、2SC1815を3個使ったカスタムICのBSB7045が使われています。これは東芝のTA7045Mをモジったのでしょう。TA7045MはRCAのCA3028の東芝によるセカンドソースで、1970年代に良く使われていた記憶があります。私も少しだけ使いましたが、赤い表示が印象的でした。図1ではブラックボックスになっていますが、このカスタムICを小型の基板に作ります。

3.部品の収集

写真2のような主要部品の入っているキットです。入っていたカスタムICとコイル、水晶が写真3です。メインの基板が写真4で、そのハンダ面が写真5です。

 

写真2 このような主要部品と基板が入っていました。

 

写真3 入っていたカスタムICとコイル、水晶です。

 

写真4 基板になります。

 

写真5 基板のハンダ面になります。

 

作製の前に手持ちの部品を確認し、足りない部品を集めることから始まりました。前述のように入手は容易ですので、手持ちにない部品は通販で手配しました。なるべく手持ちの部品を使おうとしたので、部品表とは若干の相違があります。まずE12系列から外れている2kΩと3kΩは回路図を確認した上で大きな問題はなさそうと判断し、それぞれ2.2kΩと3.3kΩを使いました。このあたりはざっと見ただけで、細かくシミュレーションしたわけではありません。自己責任で行いました。またパスコンの0.01μFは積層セラミックではなく、普通のセラミックを使用しました。これも手持ち部品の関係です。50MHzですので、0.001μFか0.0022μF程度でも良いかと思います。半固VRは恐らく写真6のタイプがイメージかと思いますが、これはディスコンのためか入手できませんでした。良さそうなものを探したのですが、穴の位置がピッタリと合うものがありませんでした。仕方なく多少無理をして写真7を使っています。足が簡単に曲がるので何とか使うことができます。この半固VRのVR3はキャリアヌルに使いますので、調整しやすい(回しやすい)ものが良いと思います。回すのが固い安物だと調整に苦労しますし、とても合わせ難くなります。MICゲインのVR4は、全くシビアではありません。回し難いものでも、それ程の支障はないと思います。

 

写真6 このような半固VRを使うのだと思いますが、入手できませんでした。

 

写真7 少々無理をして足を曲げて使った半固VRです。

4.作製

 作製は、カスタムICの部分は別基板になっていますので、これを2階建ての2階部分として作ります。この基板を作ったところが写真8です。これは全部品が3組分入っていました。各コイルを巻いたところが写真9の下側です。バラけることの無いように、マジックハンダで固定しています。上側はキットに入っていたFCZコイルです。

 

写真8 カスタムICを先に作りました。

 

写真9 巻いたコイルと入っていたFCZコイルです。

 

基板のハンダ付けを途中までしたところが写真10です。少々部品番号に間違いがありましたので、メモ代わりに写しています。C99が沢山あり、全てパスコンの0.01μFです。この考え方は面白いと思います。最後にコイルとカスタムICを取り付けました。このカスタムICは、間違って取り付けると致命的です。基板から外して調べるのが大変な作業になりますので、取り付けの前に良く確認をするのが良いと思います。もちろん取り付け方向も同様です。基板の完成したところが写真11です。

 

写真10 途中までハンダ付けしたところで、少々部品番号に間違いがありました。メモ代わりに写しています。

 

写真11 一応ハンダ付けが終わった様子です。

 

次に、写真12のようなバラック状態で、動作のテストを行いました。ここで一つ目のトラブルがありました。まずVXOが発振しません。電圧をテスターで測るのですが、どうもしっくりとしません。何も考えずに3端子レギュレータを絵のとおりに差し込んでいたのですが、これが落とし穴でした。ここは逆に入れるべきと気が付きました。しかし、それでも発振しませんし、電圧も良く解りません。パターンを良くチェックしたところ、VXO回路内のアースパターンが他の回路と途切れていることに気が付きました。写真13の赤丸の部分です。つまりアース側が接続されていませんでした。テスターで電圧を測る度に、値が出たり出なかったりしたのですが、アース側を取る位置で状況が異なったようです。もしかすると、金属製のカラーでアルミケースに固定していると気が付かないかもしれません。ここはレジストを削り、スズメッキ線を使ってアースをつなぎました。これで無事に電圧も加わり、VXOは発振しました。

 

写真12 このようにして動作のチェックを始めました。

 

写真13 この赤丸のところでアースが途切れていました。ワイヤーを使って接続しました。

 

ところが発振はしたのですが、同調が取れずにレベルのピークが取れません。最初は全く解らなかったのですが、スペアナで出力を確認したところ、同調が外れているように感じました。L5とL6の巻き数からインダクタンスの値を計算し、共振周波数を計算するとずれています。C17とC19は15pFではなく47pFで同調させることができました。巻いたトロイダルコアによっても相違があるのかもしれません。少しずつコンデンサをパラに入れてみるのが早いかもしれません。これで出力が最大になるように調整できました。また、VXOは異常発振をしてしまいました。私の場合は水晶を手持ちの50.2MHzに交換したところ問題が無く発振しましたので、これで良いことにしました。

これらの問題点は山本さんに伝えてあります。このような記事によって周知をして下さい、との返事を頂きました。なおこれ以外に、レギュレータは3.3Vよりも5Vが良いそうです。使う電源にもよりますが、6Vを使う場合は低ドロップタイプの5V 100mAか500mAにして下さい。VXOの異常発振については、VXO用コイルとパラに10kを入れて下さい、というコメントがありました。私の場合は、元々周波数がちょっと高いと思ったこともあり水晶を交換していますので、10kは入れていません。これらの修正の一部は図1の回路図に反映されているようです。

受信については直ぐに調整できて受信可能となりました。送信については私のミスで少々手間取りましたが、10mWの出力が出るようになりました。このように、全体的にはVXO関係で随分と手間取ってしまいました。

 ケースにはタカチ電機工業のCU-2Nを使うこととし、穴あけを写真14のように行いました。部品を取り付けて、パネル側だけ配線をしたところが写真15です。6Vで動作しますので、単3×4本の電池ボックスをリアパネルに取り付けています。DC電源を使わない前提で作りましたので、DC入力は付けませんでした。

 

写真14 CU-2Nの穴あけを行ったところです。

 

写真15 ケース側から配線を始めました。

 

今回はパネル側から配線を行い、基板を固定してから基板の配線を行いました。ケース内にあまり余裕が無かったからです。配線の様子が写真16です。電池ボックスが邪魔にならないように、写真17のようにカラーにゴム足を付けました。少し不安定なのですが、立ててホイップアンテナが使えるように考えました。

 

写真16 完成した内部の様子です。

 

写真17 裏面に電池ボックスとカラーでゴム足を付けました。

5.調整

ケースに入れ終わって、再度調整を行います。既にほとんど調整されていますので、最終確認ということになります。出力のスプリアスを測ったところが測定結果1です。山本さんの測られた結果が測定結果2です。違うようにも見えますが、ノイズレベルを良く見るとほぼ同じと解ります。測定結果3がVXOの出力だそうです。

 

測定結果1 出力のスプリアスを測ったところです。

 

測定結果2 山本さんの測ったスプリアスです。

 

測定結果3 同じく山本さんの測ったVXOの出力です。

 

スピーカから出る音量が少なく、感度は測っていません。良いというわけではありませんが、ダイレクトコンバージョン受信機とすればこの位なのでしょう。ノイズが少ないのでヘッドホンを使う方が良いかもしれません。もう少し音量があった方が使いやすいかもしれません。

6.使用感

マイクのレベルには注意する必要があるかと思います。出力は10mW程度ですので、あまりメータを振らすような話し方をすると送信の帯域が横に広がるだけです。LPFとコンプレッサの付いたマイクを使うのが良いと思います。まあ、これはスタンバイ回路を考えると少々難しいと思いますので、内蔵してしまう方法もありそうです。

簡単で面白いキットと思います。このように主要部品のみのパッキングというのも、ひとつの方法なのでしょう。使う部品に自由度があるのは確かです。但し私も手持ちの部品があるとは言っても、秋月電子の通販でトランジスタ等をかなり集めることになりました。これも楽しい作業ですので、良いと思います。

最後に、楽しいキットを頒布され、また記事にすることを承諾して下さった山本さんに感謝致します。