エレクトロニクス工作室
No.34 EasyFC
[1.はじめに]
ちょっと変わった写真1のような周波数カウンタを作りましたので紹介します。この周波数カウンタは「VFOドリフト自動測定記録システム」で、サイテック(http://sug.dip.jp:8080/tokushima/cytec/)より出ている基板キットです。LC発振のVFOのドリフト試験をする時に、とても便利なものです。
写真1:完成したEasyFCです。
パソコンに接続して使います。今まではストップウォッチとエンピツを持って数分毎に周波数を読むのが普通でしたが、結構大変な作業です。これを自動的に行い、データをまとめてしまうのが、このEasyFCです。制御と表示、データの保存にパソコンが必要で、単体で使う事はできません。注意して下さい。
[2.回路]
図1に回路を示します。PIC16F873と周辺のICを用いているだけの簡単な回路ですが、パソコンでのソフトと組合わせると、このように世界が広がってきます。ところでキットにはPIC16F876が入っていました。回路と異なりますが、上位互換品が入っている事もあるそうです。
図1:サイテックに要確認 全回路図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)
サイテックの内田さんからのコメントですが、232Cのドライバ−ICは一般的な物でもOKと連絡がありました。入手しやすいICを使えば良いと思います。
なお、パソコンとのインターフェースには、9ピンのD−SUBコネクタを用いましたので、オリジナルの回路とはちょっと異なっています。この部分を図2に示します。
図2:9ピンのD−SUBを使ったため、ちょっとオリジナルの回路とは違っています。
[3.作成]
キットは写真2のようになっていますので中を確認し、基板から作成します。この位の部品数ですので、基板は1時間程度で終了すると思います。写真3は基板が完成したところです。写真4はハンダ面になります。ケースはタカチのCU−2を用いています。穴あけをしたところが写真5になります。保護用のフィルムを剥がし部品を取付けていると、「しまった!D−SUBの穴忘れてた」と気が付きました。そのまま再度穴あけ……。従って、内部に基板を入れたところが写真6ですが、穴が追加されています。このような「しくじり」をすると、何とかなったとしてもケースに余分な傷を付けたりします。
写真2:キットはこのような内容でした。
写真3:基板の部品はこれだけですので、すぐに完成します。
写真4:その基板の裏面の様子です。
写真5:穴あけ終わり!と思ったのですが・・
写真6:内部の配線を行ったところです。
内部はこのようにガラガラですので、もっと小さいケースでも充分に入れる事ができます。同じケースを使った方が棚に並べた場合の具合が良いため、CU−2を使っています。理由はそれだけですので、都合に合わせて選択して下さい。ちなみに、私の場合はこのCU−2を使ったシリーズと、FRMSのYM−180のシリーズが机上を占めています。写真7が完成後にCU−2のシリーズを並べたものです。
写真7:同じケースは並べやすくなります。右上がこのEasyFCです。
次にソフトのインストールです。私が使っているのは、かなり古めのWINDOWS2000のマシンですが、何ら問題なく簡単に完了しました。まず、CD−Rに入っているソフト「EasyFC Ver1.2」をフォルダーごとコピーします。これでEXEファイルをクリックすると動くのですが、CD−Rからコピーした段階ではEasy.iniファイルが「読み取り専用」になっています。このままではCOMが変更できませんので、プロパティを開き「読み取り専用」を解除します。本来はソフトの方からCOMの変更ができるようになっているのですが、このように解除しないとCOM1固定になってしまいます。ちなみに、17行目がCOMの指定のようです。直接書き換えても変更はできます。
パソコンと本機との接続はストレートケーブルで行います。最近のパソコンにはUSBしか付いてない場合が多くあります。私の場合も同じでUSBをハブで4分岐し、それぞれにUSB→シリアル変換器を取り付け、FRMS2台、AVRライターと本機と使っています。ちなみに変換器には秋月電子で1400円のものを4台使っています。このソフトのインストールの方が面倒かもしれません。実はここでトラブルがあり、写真8のようにRS232Cのテスターを使って信号をモニターしながら、パソコンの設定を変更して試していました。
写真8:パソコンとの通信は、このようにチェックしました。
[4.調整]
入力ICの半固VRは、最大感度になるように回します。スレッシュホールドの位置ですので、ほぼ中央になるはずです。
カウンタは測定器ですので、通常は発振周波数の調整は必須です。しかし、このような変動を測るカウンタでは、それ程絶対値が重要という事はないでしょう。従って、これで終わりとしても充分です。しかし、絶対値の気になる方は、12.8MHzのTCXOのトリマーを回して基準が12.8MHzになるように合わせるか、外部の基準を測って正しく表示するように合わせます。このようなTCXOは、あらかじめ12.8MHzに調整されていますので、下手をすると逆に誤差が大きくなる事もあります。また電源の投入から、しばらくは初期変動がありますので、充分に時間が経過してから調整をします。これらを理解の上、注意して調整して下さい。
[5.測定]
使い方は簡単で、単に入力に信号を入れて、ソフトをスタートするだけです。グラフの体裁などは、状況に応じてソフトが勝手に作ってくれます。全く何も考えずにスタートだけすれば測定できるわけです。測定時間も、自分で平衡したと思って止めるのも良し、まだまだと感じて続けるのも良しです。それも全てソフトでフォローします。もちろん、最初に設定する事も可能です。
測定の前に、本機を充分に暖めてから開始します。LC発振よりもはるかに安定ですが、水晶とはいえども初期変動はあります。特に測定する対象が安定している場合には、念入りに暖めるべきでしょう。
試しに、No.32の7MHzCW受信機のVXOを測定したのが図3です。さすがにVXOは安定です。それでも無理やり引っ張っているため、それなりに動いている様子が解ります。但し、写真9のように測定したため、ケース内の温度変化が実際とは異なってしまいます。No.18の短波ラジオのLC発振を測定したかったのですが、発振回路がICの内部で測定できませんでした。図4はLEADERのオーディオ発振器を測定してみたものです。図5は恒温層に入った10MHz発振ユニットです。さっと動いて安定する様子が良く判ります。
図3:7MHzCW受信機のVXOです。けっこうダラダラと下がり続けてしまいます。
写真9:7MHzCW受信機のVXOを測定しているところです。
図4:リーダーのAF発振器を測ってみました。
図5:さすがに恒温層入りは、さっと動いて見事に安定しました。
[6.終わりに]
VFOの測定がこれで楽になります。楽になるというよりも、面白くてやたらと測りたくなってしまいます。これが測定も趣味ということでしょう。
本機の安定度との兼ね合いもあるのですが、20Hzステップではなくもっと細かく測定できると良いのですが・・。図3,5のように水晶発振でも充分に測る事ができます。VFOの調整も最終段階になってくると、1Hzステップで測定したい場合もあるかと思います。