[1.はじめに]

紹介する順番が反対というよりも、作った順番自体が反対なのですが、TA7792Pを使った実験用のボードを作りましたので紹介します。

今までTA7792Pは、短波ラジオ、7MHzCW受信機等をBEACONで紹介しましたが、その度に写真1のような実験用基板を作っていました。今後もまだ使うのであれば、この部分を実験用のボード化しておくと次の実験に便利です。

そこで作ったのが写真2のような実験用ボードです。このICがいつまで入手できるのか解りませんので、意味があるものかは?です。

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写真1. 今までは、このように生基板上に実験回路を全て組んでいました。

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写真2. そこで作成した実験用のボードです。

[2.回路]

回路は如何にユニバーサルに使えるかを考えて作ってみました。7MHzで使う時も、50MHzで使うときも、すっと簡単に入れなくてはいけません。そこで図1のような回路とし、ジャンパーピンを使って内部のIFアンプを入れたりパスしたりする事ができます。また、外部のフィルターはコネクタで容易に切替えができるようにしました。これで概ね要求をカバーできると思います。

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図1. 回路図になります。なるべく多くの事を実験できるように考えましたが、何か作る度に変更の嵐になってしまいそうです。(※クリックすると画像が拡大します。)

IFには455kHzを使う事を考えていますが、世羅多フィルターを使う場合もあります。455kHzからずれる事も想定し、幅広く同調できるように、コイルに入っている180pFは取り外し、代わりに外付けで100pFと100pFトリマーをパラに入れています。これで、この付近の周波数には概ね対応できるでしょう。最初は10Kタイプの10M455を使っていましたが、どうもゲインオーバーになってしまいます。インピーダンスのマッチングにはズレると思うのですが、7M450に変更しました。この方が安定して受信できます。

入力の周波数は7〜11MHz程度が考えられると思いますので、7MHzのコイルとトリマーを使って幅広く合わせられるようにしました。7MHzの受信機でも、9〜11MHzのIFにも対応できるわけです。2SK241アンプを使用するかしないかは、ジャンパーピンで選びます。ここでアンプを使って7MHzの受信機にすると、完全に入力オーバーとなります。この場合はRFのアッテネータを使う必要があるでしょう。

LOCAL発振は内部のLC発振と外部入力をジャンパーピンで選びます。外部入力には、そのまま秋月電子のDDSキットを接続する事ができます。もちろんVXOでもOKです。内部のLC発振を選ぶと、ポリバリコンとコイルのコアを回す事で、6〜11MHzの幅で発振しました。ポリバリコンの後ろのトリマーによっても変ってきます。

キャリア発振は、SSBやCWの時に使います。世羅多フィルターを使う場合に、セラミック発振子の表示周波数より低く発振させなくてはならないため、ジャンパーピンでコンデンサを選ぶようにしました。これでちょうど良いくらいには合わせられると思います。

電源は1.5V×4本としています。この部分であれば3Vでも動かす事は簡単です。しかし、他とのインターフェースや発展性を考えて6Vとしています。逆にいえば理由はそれだけですので、3Vでも何ら支障はありません。TA7368Pも2Vから動作しますので問題はありません。Sメータ回路は工夫が必要かと思います。

[3.作成]

このような実験用のボードですので、作った後の変更や追加は当然ありうる事です。既に変更の嵐が吹き荒れてしまいました。写真3,4は作成しながら写したものですが、完成後の写真5とは若干異なっています。写真6は完成したところです。基板はなるべく広めに使い、部品配置も部品面から見て首を傾げる事のないようにしました。基板は部品面が前面アースになっている、サンハヤトのICB−96DSEを用いています。外部との入出力には、基板用のBNCコネクタを使っています。図2が実装図になります。

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写真3. このように電源ラインには銅のテープを貼っています。

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写真4. Sメータ等の穴アケも先に済ませます。

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写真5. 結果は、このように写真3とは若干変更されています。

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写真6. 完成後の部品面です。

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図2. 部品面、つまり上から見た実装図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

キャリア発振にはセラミック発振子を使う事を前提としています。ここにはソケットを使う事が便利ですので、ICソケットを分解し写真7のように加工して使っています。ラジオペンチで金属部分を引き抜き、後は金ノコとヤスリで仕上げました。

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写真7. ICソケットを使ったセラミック発振子用のソケットです。

基板のままでは機械的に丈夫ではありませんので、19×17cmのアルミ板の上に固定して使うようにしました。このような用途ですので、基板の裏面にゴムシートを貼ったりすると、後々の変更が困難になってしまいます。

[4.調整]

これだけで使う事も考え難いのですが、一応作ったからには動作を確認しておく必要があります。写真8のようにして第18回の短波ラジオの追試になります。青く見えるのはセラミックフィルターです。写真9のようにして第32回の7MHzCW受信機の追試になります。ここではNo.20のDDSホワイトVFOを使用しています。順序が反対なので、このボードで追試しても仕方ないのですが・・。フィルターは、480kHzと455kHzのセラミック発振子を使用したものを写真10のようにBNCコネクタにマウントし、いつでも使えるようにしています。5素子のCW用とSSB用フィルターです。

写真11は、7MHzSSB受信機の実験をしているところです。ここで問題になるのがキャリアの周波数で、このままではLSBの周波数を発振させる事は困難でしょう。もう一工夫は必要そうです。

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写真8. 短波ラジオの追試です。

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写真9. 7MHzCW受信機の追試です。

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写真10. このようにフィルターは各種揃えてみました。世羅多フィルターについては、CQ誌2006.5のJA9TTT加藤さんの記事を参考に作成しました。

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写真11. 7MHzSSB受信機の実験です。

あとは、どのような付加回路をつけるかで色々と発展が考えられます。コンバータを付ければ18〜50MHzのAM受信機にもなります。AM,SSB,CWの3モード受信機へ発展させられる可能性もあるという事になりますが、さすがに簡易型では腰が引けてしまいます。

[5.終わりに]

完成というよりも「提案」で終わってしまった感じですが、実験用ボードの製作としては完成です。TA7792Pを骨まで使い果たすつもりですが、実はこのICはFMの受信も可能です。このボードに余裕があるのは、後からFMの部分を付け加える事も視野に入れているからです。