1.はじめに

7MHzのミニホイップアンテナを作ってみました。モービル用に作るのであれば、機械的にガッチリと作る必要がありますが、今回は簡単に屋外や室内で使うアンテナとして、全長1m12cmの写真1のようなアンテナを作ってみました。

部品は入手可能な市販のロッドアンテナ等を流用しています。写真2のように分解が簡単ですので小型軽量で持ち運びには便利でしょう。

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写真1:このようなアンテナは写真では良く見えないのですが、このような短縮した7MHzのホイップアンテナです。

 

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写真2:このように4つに分解できますので、持ち運びには便利で組み立ても一瞬です。

 

2.構造

図1のような構造になります。エレメントは長い方が、電気的に有利な事は間違いないでしょう。しかし、この場合BNCコネクタ上で自立できる程度の機械的な強度がないと、無用の長物になってしまいます。従って、丈夫に使える範囲で短縮する、という矛盾した要求が出て来ますので、妥協の産物という結果になります。 エレメントにはジャンクで入手したホイップアンテナを用いています。私の使ったのは70cmでした。おそらく、ラジカセに使われるFM用の受信アンテナと思われます。分解、組み立てが容易にできるように、3mmネジの出ているものを選びました。

次に考える事は、短縮コイルとコネクタ間の長さです。ここも長い方が有利ですが、機械的な強度による制約もありますので、30cmと決めました。

BNCコネクタ側にはインピーダンスマッチング用のLCを入れました。コンデンサは固定として、アクリルボビンに巻いたLで調整する事にしました。

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図1:このような構造になります。

 

3.作成

写真3は、今年のハムフェアで入手した100円のジャンクのヘリカルホイップです。周波数

144〜150MHzのようですが、この場合どうでも良い事です。このビニール部分を取り除くと写真4のようになります。絶縁部分から分離できるようになっていますので、写真5のように分解します。写真6はヘリカル部分のハンダ付けを温めて取り除いたところです。これでコネクタ部分の準備は完了です。ジャンクですので、同じものの入手は不可能としても、構造はほぼ同じですので同様に分解は可能のはずです。

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写真3:BNCコネクタには、このようなジャンクのヘリカルホイップアンテナのコネクタを使います。

 

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写真4:まず、カッターでゴムの部分を外します。

 

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写真5:回すとBNCのピンまで抜けてきます。

 

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写真6:ハンダコテで熱してヘリカルの部分を取り去ります。

 

次に写真7のように、20mmφのアクリルボビンを50mmに切断します。内側にピッタリ入る両面基板を用意します。両面基板は写真8のようにして中央をカッターなどで削り、両端の間を裏表共に絶縁しておきます。写真9が削り終わったところです。次にカラーを差し込む幅の切れ込みを入れて、カラーをハンダ付けしたのが写真10です。コイルはインダクタンスの計算を行うと83μHとなりますので、20mmφのアクリルボビンに101回巻きになります。0.26mmのUEW線を用いて多少は多めに巻きましたが、あまりに多過ぎて正確に数えられなくなりました。多めに巻いて減らす方法で調整します。コイルは必ず調整が必要になります。このコイルの内部に基板を入れて、エポキシ系の接着剤で固定したところが写真11です。

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写真7:短縮コイルのアクリルボビンと生基板です。

 

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写真8:生基板はカッターで中央を削ります。

 

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写真9:裏表共に綺麗に中央をカットします。

 

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写真10:カラーをハンダ付けし、コイルは多めに巻きます。

 

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写真11:コイルの内部に基板を入れ、エポキシ系の接着剤で固定します。

 

短縮コイルとマッチングコイル間は30cmですので、黄銅のパイプ(直径5mm)を30cmに切断します。接続部分は写真12のように3mmネジを中に入れ、ハンダ付けしました。

BNCコネクタ側のマッチング用コイルは、短縮コイルと同様に作ります。写真13は基板に切れ込みを入れてハンダ付けの準備をしたところです。写真14はハンダ付け後の両面基板です。コイルのボビンを被せる前に、マッチング用の220pFを取付けておきます。このコイルは6回巻きとなりました。

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写真12:5mmの黄銅パイプに3mmネジをハンダ付けします。

 

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写真13:ハンダ付けするものに合わせて切れ込みを入れます。両側からハンダ付けをした時にガッチリと固定できます。

 

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写真14:マッチング用のコイルも同様に作ります。但し、BNCコネクタの金具に合わせて切れ込みは大きめになります。

 

4.調整

まず写真15のように仮組みします。FRMSにリターンロスブリッジ、あるいは方向性結合器を使い特性を測定します。この測定方法は、第8回目を参考にして下さい。

調整は短縮コイルから行います。SWRの最小点がどこにあるかを探します。7MHzよりかなり低くでると思いますので、巻き数を少しずつ減らして行きます。減らしすぎると元に戻せませんので、あくまでも多めにしておき、あとはコイルの間隔を広げて調整するようにします。

ある程度決まったところで、次はマッチング用コイルを調整します。これは短縮コイルほどシビアではありません。大体合ったところで再び短縮コイルを調整します。これを何回か繰り返します。調整後には73回巻きになっています。これはコイルの幅を40mmで想定していたものが、実際には30mm程度で収めてしまった事が大きいと思われます。人や他の物体の影響を受けますので、実はあまりシビアに調整しても意味はありません。図2は測定した結果です。良いところで画像を取り込んでいますので、実際にはもっと悪化するのが普通でしょう。

コイルは調整後に、写真16,17のようにマジックハンダで固定します。ホットボンドでも十分と思います。そして熱収縮チューブを被せて、更にコイルが動かないように固定します。30cmの黄銅パイプ部分にも熱収縮チューブを被せておきます。

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写真15:仮組みしたところです。エレメントは伸ばしていません。

 

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図2:FRMSで測定したSWRです。

 

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写真16:短縮コイルをマジックハンダで固定したところです。この後で熱収縮チューブを被せます。

 

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写真17:マッチング用のコイルも同様に作ります。

 

5.おわりに

当然100Wも入れれば燃えてしまう事でしょう。QRP専用のアンテナですが、持ち運びも組み立ても簡単な簡易(安易)アンテナです。CWやSSBでの交信がガンガンと入ってきました。

後から考えてみると、短縮コイルを交換すると他のバンドに変える事ができそうです。マッチング用のコイルは・・。これも交換できるようにすると面白かったと思います。