エレクトロニクス工作室
No.39 GigaStのスペアナキット
1.はじめに
雑誌等でも紹介され、作られた方も多いと思いますが、GigaStのスペアナキットを作りましたので紹介します。
私は20年近く前にアドバンテストのスペアナを購入し、今も使っています。しかし、すでに修理期間は過ぎてしまっている状況で、次にどうしようかと思案中です。ジャンクで探しても良いのですが、実験室が狭いのであまり沢山買い込みたくはありません。
そこで、以前より気になっていましたGigaStのスペアナを作ってみる事にしました。つい最近リリースされたVer.4の最新版で、なんと7GHzまで測れるというものです。写真1のように作成しましたので紹介します。
写真1: これが作ったスペアナ。TG出力もあります。
2.このスペアナについて
詳しく知るには、GigaStのサイトの方がずっと良いでしょうから、まずはじっくり読む事をお勧めします。そして、購入は、まずメールから始まります。後は指示どおりにするだけですので、それほど面倒なものではありません。ただ、現在のところ休止中のようです。次の案内を待つ状況ですので、頻繁にGigaStのサイトを確認して下さい。
キットは写真2のように送られて来ました。写真3はRF関係のユニット2個です。これは組み立て済みとなっています。写真4はメインの基板で、写真5がその裏面の様子です。他に必要となるのはケースと配線材料くらいだと思います。もちろんパソコンがないと使用できません。
写真2: 箱を開けると、このような部品が出てきました。
写真3: 左がSPユニット、右がTGユニットです。
写真4: メインの基板です。
写真5: メイン基板の裏側です。
3.作成
まずは基板の作成をします。高周波の部分はユニット化されて完成しています。作成するのはCPU周辺と232C関係の部分が主になります。個人的には高周波の部分も作ってみたいところですが、校正等の問題があるのでしょう。ほとんどがチップ部品のハンダ付けになります。慣れないとちょっと厄介なハンダ付けかもしれません。
部品は写真6のように紙に貼り付けられて来ますので、間違いなく取り付けができます。しかし私の場合、0.1μFを一個紛失してしまいました。付属するNF-SGを後回しにする事としましたので、とりあえずは問題ありません。ちなみに、これはまだ完成していません。
写真6: チップ部品はこのように貼り付けられていますので、値が読めなくても大丈夫です。
部品の取り付け後は写真7のようになりました。この状態でバラック配線でパソコンと接続して、動作を確認しました。ソフトもインストールしてありましたので、支障はありません。軽く動作だけを確認して、次はケースです。前述のように入出力にはBNCコネクタを用いました。タカチのYM180に押し込もうとしましたが、どうしてもコネクタがケースにぶつかってしまいましたので、YM200を使う事にしました。
写真7: 基板のハンダ付けが終わったところです。9ピンD-SUBコネクタは、直接基板にハンダ付けする事もできます。
写真8は使用した内部のBNC-SMAケーブルです。ケースの内部のレイアウトを考えている様子が写真9です。ケースの穴あけが済んだところが写真10です。これに基板や部品を取付けたところが写真11になります。写真12はこの段階でパソコンに接続してチェックしているところです。
写真8: SMA→BNC-Rのケーブルを作りました。
写真9: ここで無理のないレイアウトを考えました。
写真10: 穴あけをしたYM-200です。
写真11: この組み立てはすぐです。
写真12: ここでパソコンにつないで、再び動作チェック。
7GHzは私の自作する範囲を大きく超えています。スペアナ入力とTG出力はSMAコネクタが基板上のユニットから出ており、これを直接使う製作例が示されています。せいぜい500MHzまで測れれば充分の私に、SMAコネクタは逆に使い難いものです。そこでケースにはBNCコネクタを用いて写真13のようにケース内の配線をしました。ただ、「もしかすると」という考えもありますので、ケースを開ければ容易にSMAコネクタも使えるようにしています。
写真13: ケーブルはこのように再び接続すると、7MHzでの再確認が必要です。
4.調整
まずは動作が正常かを確認する事が第一でしょう。ちゃんと測定結果1のようにスペアナの画面を見る事ができれば第一の関門は突破です。
測定結果1: パソコンを立ち上げると、このようなデフォルトの画面が出てきます。(※クリックすると画像が拡大します。)
次にレベルの正しいSGを用意し、これを測定し補正用データを作成します。同じファイルになりますので、立ち上げる時に使用します。このポイントは、10MHz、100MHz、200MHz・・とありますので、私は500MHzまでを補正し、後はパスしました。というよりも正しいSGがありませんし、使うのは500MHzまでです。
また、16MHzの発振周波数を測定し調整します。但し、周波数カウンタを接続する端子がありませんので、ピックアップループでも作り受信機で受信するのが手っ取り早いと思います。これでスペアナの表示周波数はピタリと合わせる事ができます。
5.測定
測定結果2が自作トランシーバーの出力を測定したものをアドバンテストのスペアナで測定したものです。測定結果3はこのスペアナで測定したものです。もちろん、直接入力してしまったのでは、スペアナを壊してしまいます。そこで外付けのアッテネータを入れています。これで入力レベルを-10dBm(0.1mW)とちょうど測定しやすいレベルに下げて測定します。この結果多少クセはあるものの、概ね同様の波形として読むことができました。ノイズフロアが10dB位高い事と、あまりレベルを高くすると内部でスプリアスが増えるようです。外付けのアッテネータは必須でしょう。
測定結果2: アドバンテストのスペアナで測った、7MHzトランシーバーの出力です。周波数表示は完全にずれています。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果3: 自作したスペアナではこのとおり。(※クリックすると画像が拡大します。)
もう少しスプリアスのある発振器で比較したのが測定結果4と測定結果5です。これは自作SGの5MHzの出力です。SGを50MHzにしたのが測定結果6と測定結果7です。220MHzと280MHz付近に余分なスプリアスが出ています。SGを止めても測定結果8のように残りますので、内部で作られているものと思われます。気にはなりますが、判っていれば何とかなるでしょう。何か対策ができないものか、対策を考えているところです。
測定結果4: 5MHzSGの出力です。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果5: このスペアナではこのとり、少々ノイズに隠れています。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果6: 50MHzSGの出力です。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果7: ここでちょっと余分な表示が‥(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果8: 入力をなくしても、このように出てしまいました。このクセには注意が必要でしょう。(※クリックすると画像が拡大します。)
また、入力レベルを変化させた時のスプリアスを測定したところ、入力としては-10dBm程度を上限として測定すると歪が少ないようです。
6.おわりに
多くの方がこのスペアナを製作されています。大変面白いキットですので、使い方を工夫し大いに自作の役に立てる事ができるかと思います。
TGも付いていますので、フィルターの通過特性の測定もできます。また、方結やリターンロスブリッジを併用する事で、リターンロスつまりSWRを測定する事も可能です。