1.はじめに

このような製作記事を書く時に、まず気にするのは部品の入手です。読んで作ろうとする方にとっては大事です。しかし、100%入手可能な部品ばかりを使っていると、時には面白味に欠ける事もあるかとは思います。

そこで、今回は絶対に近いくらいに入手困難なレアな部品を使い、写真1のAFレベルメータを作ってみました。そのまま追試する事は無理として、似たような部品が入手できた場合の参考として下さい。

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写真1: このようなAFレベルメータです。

2.AFレベルメータについて

通常アマチュア無線の自作をしていると、当然ですが高周波の工作が主となります。ところが、人間の感知する周波数は低周波つまりAFですので、この部分の工作や測定も行います。そこで、AFのレベルメータを作成してみました。オシロでも用が足りると言えばそのとおりですが、レベルとして測定結果を読む事ができると便利です。AFといえば、10Hz〜20kHz程度を指す事が多いようですが、この付近の周波数でフラットな特性が得られ、ある程度正確なレベルが測定できる、このようなレベルメータです。

高周波では一般的にインピーダンス50Ωで測定するのが普通ですが、低周波の場合には600Ωが多く使われます。ここで0dBmというと、600Ωの負荷に1mWを消費する電力になります。このレベルメータでは、アッテネータによって0に合わせる事で-40dBm〜+20dBmが測定できるようになっています。メータの振れを最大限に使った場合には-60dBm〜+23dBmとなりますが、誤差は増えます。もちろん、インピーダンスは600Ω入力としました。

 

3.コアの部品はレアな部品

中心となるVU計には、写真2のヤマキ電気(株)のFYR-22を使いました。新品で購入すると、17000円程度と高価な製品です。このジャンクのメータを入手したので、そのまま用いてレベルの表示を考えたのがスタートです。特にこのメータである必要はありませんが、良く見かける、VU目盛のラジケータなどとは全く違うものです。ラジケータは直流電流で振らせますが、このVU計は、低周波で振らせます。ちなみに1kHzでの特性を測定したところ、図1のような特性になりました。また、周波数特性は図2のように15Hz〜100kHzまでほぼフラットという、素晴らしい特性でした。測定回路は図3に示すものです。

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写真1: 中心となる部品のVU計です。かなり古いジャンクですが、立派な特性でした。

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図1: VU計の入力と表示レベルはこのようになっています。(※クリックすると画像が拡大します。)

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図2: 周波数特性もこのとおり、立派なものです。(※クリックすると画像が拡大します。)

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図3: このように接続して測定しました。(※クリックすると画像が拡大します。)

なお、VU目盛はスタジオ間での信号レベルを規定するもので、0VUが+4dBm(600Ω)になります。測定結果もそのとおりの結果となっています。

もう一つのレアな部品は写真3のアッテネータです。東京光音製のT20KS 600ΩT型 K-112仕様で、1dBステップの20dBアッテネータです。かなり古いジャンクですので多少のガリはありましたが、何回も回しているうちに良くなってきたようで、特に不都合はありません。また、アッテネータには細かい仕様が沢山ありますので、この型番だけでは同じ製品にはなりません。なお、軸の系が4mmと、合うツマミがありませんでしたので、3mm系のツマミをドリルで加工して使いました。別の仕様のアッテネータを探す方が使いやすいかもしれません。東京光音のサイトを探すと沢山のアッテネータを見る事ができますので、とても参考になります。

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写真3: 東京光音社製のアッテネータです。これも素晴らしい特性です。

この他にはレアな部品はありません。といっても、このようにコアとなる部品がレアという事になります。

4.回路

図4に回路を示します。コアとなる部品が優秀ですので、本来であればアッテネータとVU計のみで振らせても充分な性能を持っています。しかし、マイクロホン等のもっと低いレベル測定を行おうとすると、アンプを入れる必要が出てきます。そこで、オペアンプを使って増幅をしています。0,-20,-40dBの表示をしましたが、メータの表示が下がるという意味で、アンプのゲインは0,+20,+40dBです。オペアンプは定番の4558を用いた一般的な回路です。

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図4: 全回路図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

ゲインが正しく合うように、各々の抵抗値の調整も必要かと考えたのですが、普通の5%誤差の抵抗を試用しても、何ら問題なく使用できました。場合によってはロータリースイッチで切替えている抵抗値を調整する必要があるかもしれません。

なお、初段のアンプは全体のレベル調整のため、若干ゲインを持たせています。入力に過大なレベルが入った時に、メータが振り切れる事があるのは止むを得ないとしても、2段目のアンプに余力があり過ぎるとメータを壊してしまいます。そこで、そのような場合にはなるべくアンプが飽和する領域に近づくように、全体のレベルを調整しています。とはいっても極めて感覚的なものですので、あまり深く突っ込まないで下さい。そのためメータとシリースに入る抵抗は、大きめになっています。

5.作成

いつもは回路(つまり基板)を作成し、動作をチェックしてからケースの穴あけを行うのですが、今回はケースの穴あけから行いました。基板がケースに収まらないとは考えられませんので、パネル上にVUメータのレイアウトをどうしたら良いかを優先的に考えました。ケースにはリードのPS-3を使用し、写真4のように穴あけを行いました。

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写真4: ケースに穴アケをした様子です。

なお、VUメータの目盛はVUを消し、dBm表示に作り変えてあります。写真5はオリジナルのメータと印刷した新しい目盛です。前述のように0VUは+4dBmですが、VUメータ入力の抵抗値を調整する事で0dBmに合わせる事としました。アッテネータに使用するツマミの加工もしておきます。

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写真5: 基本的に目盛はそのまま使う事ができますが、単位をdBmとするため作り直しました。下の目盛がパソコン印刷したものです。

図4の回路のうち、点線内の部分を基板上に作成しました。これが写真6になります。基板の実装図を図5に示します。この基板をロータリースイッチの後ろ側に取り付けました。直接ケースには固定せずに、写真7のように亀の子方式で取り付けています。ネジ等での固定はせずに、ロータリースイッチとの間の抵抗等でぶら下げました。電源スイッチにはロータリースイッチの一回路を利用し、パネルのスペースを省略しました。写真8がこの基板を取付けた様子です。

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写真6: オペアンプのユニットです。

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図5: ジャノメ基板の実装図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

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写真7: このようにロータリースイッチの後ろにぶら下げています。

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写真8: ケース内にこのように入れました。

パネルの表示には透明のプリント用シールにパソコンで文字を印刷し、貼り付けました。写真9が最初に印刷したものです。ところが、INPUT(600Ω)と書かなくてはならないところ、OUTPUT(600Ω)と間違えてしまったため、即ボツになったものです。この方法は簡単で面白い方法です。綺麗に印刷できますし、アッテネータのステップ表示やロータリースイッチの表示も簡単です。この部分はテプラでは難しい表示です。このようにして、全体は写真10のようになりました。

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写真9: パソコンで作ったパネル面に貼るシールです。

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写真10

6.調整

基準となる正しい出力があると簡単です。アッテネータも正しいので、それを基準に全てのレンジが合わせられます。まず、アッテネータを0dBに、アンプのゲインを0dBにします。0dBmの出力を入力し、メータの振れが0になるようにVRを調整します。次に-20dBmを入れアンプのゲインを-20dBにしたときに、0を指す事を確認します。同様に-40dBmでも確認します。

このようにすれば良いのですが、普通は基準となる出力などありません。そこで、オシロを試しました。600Ω負荷で0dBm(1mW)は0.7746Vになります。という事はピークとピークの値では2.19Vになります。これをオシロで見ながら発振器をこの値に合わせ、0dBmの基準としました。この後で校正されたAF発振器で再校正をしたところ、0,-20dBmのレンジで0.7dB高く、-40dBmのレンジで0.7dB高く表示しました。そこで、0,-20dBmのレンジで合うように再調整しました。従って、-40dBmのレンジでは0.3dB高く表示しますが、この程度は良しとしました。オシロでも1dB程度の誤差には調整できたという事です。

これでメータの読みとレベルが一致するはずです。一致しない場合には、アンプのゲインを調整する必要があります。ロータリースイッチで切り換えている抵抗の値を調整し、ゲインが合うようにします。このような調整は、測定器に命を吹き込む事ですので、何回もトライし、試せる事は試し、納得の行くまで調整しましょう。

7.終わりに

無線関係の製作では、オーディオ信号の発生器はたまに見る事があります。しかし、レベル計の類はほとんど見かけません。私も始めて作りましたので、回路的にはこなれてない部分もありそうです。

このようなレアな部品の組合わせも楽しいものです。ハムフェアやジャンク屋では、このような部品を日頃から探してストックしておくのも楽しみの一つです。あまり多くコレクションし過ぎるのも考えものですが・・