1.はじめに

自作をしているとLつまりインダクタンスを測定したい事があります。以前モービルハム誌にも写真1のようなSGを使って、外部に直列共振回路を付加したLメータを紹介した事があります。しかし、このSGもあまりに大きいので邪魔者扱いとなり、今では倉庫で眠ってしまいました。

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写真1. Lメータに使ったSGです。55〜130MHzの欄外にインダクタンスの値を記入しています。

その後ですが、ミニコミ誌のFCZ誌276号に7N3WVMみのわさんのLメータが掲載され、一時はキットもありました。しかし、最近は入手できないようです。そこで、ないものは作るしかありませんので、写真2のような1〜5μH程度を測定するLメータを作る事としました。大体7〜18MHzのコイル用になります。この他に0.1〜1μH程度の小インダクタンス用と、5〜30μHの大インダクタンス用を別に作成する予定です。

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写真2. 今回自作したLメータです。

2.回路

私が最初に作ったのはSGの発振周波数を動かして、ディップ点を探すという方法でした。みのわさんの回路はジャンクのクリスタルオシレータを使い、ポリバリコンでディップ点を探すというアイデアです。これは私には考えられなかったものです。ただ、並列共振ではなく、直列共振を使っています。FCZ研究所のキットもそうですが、直列共振の方がピークにあわせ易くなります。その代わり、Qの大小については解りません。回路をいろいろと試したところ、図1のようにしました。ラジケータの振れ具合は1kΩの抵抗で調整します。

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図1. 回路図です。簡単な回路です。(※クリックすると画像が拡大します。)

みのわさんの回路は、クリスタルオシレータを切り替えて測定範囲を広げるという方法を使っていますが、私は1レンジとしました。写真3が実験している様子です。クローズアップすると写真4のようになります。ポリバリコンに目盛はありませんが、このままでも充分に測定は可能です。今回は発振器には16MHzを用いる事にしました。中間周波数近辺で使うコイルのインダクタンスを測るのが便利な感じになります。

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写真3. 実験の様子です。

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写真4. このように基板上に直に半田付けして試しています。

この回路では、アナログのラジケータを使って針を振らせていますので、回路的には極めて簡単なものです。これでちょっと無理をすれば、もっと測定できる幅を広げる事は簡単ですが、初めから3台は作るつもりですので、全く無理はしませんでした。コイルの周波数であれば7〜18MHz用で、インダクタンスなら1〜5μHになります。もう少し広く測定する事は簡単ですが、ディップ点が取り難くなるため、あまり欲張らない事としました。1台で多レンジを共用する事もできますが、ディップ点の取りやすい値があります。16MHzのクリスタルオシレータならこの近辺のコイルが測りやすいようです。

3.製作

ケースを使わずに、アルミ板を使って簡易ケース?を作ってみました。あまりピッタリとした市販のケースが見当たらない事もありますし、このようなツールには結構合うと思います。写真5のようにアルミを用意し、写真6のような穴あけを行います。この裏側に銅のテープを貼りグランドとして直付けで作成しました。銅のテープを貼った状態が写真7です。

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写真5. ケースは100mm×150mmのアルミ板を切断して自作しています。

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写真6. 穴あけをしたところです。

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写真7. 銅のテープを貼り付けてアースにします。基板を貼り付けても良いかと思います。

次にパソコンでケースの顔を作り、シールに印刷して写真8のように貼り付けます。そしてカッターで不要部分をきれいにカットし、写真9のようにします。また、パソコンでは写真10のようにメータの目盛も作っています。専用のソフトを使っているわけではありません。ワードを使って地道に書いているだけです。それを両面テープでラジケータに貼り付けます。貼り付けようとしているのが写真11です。ラジケータはクリアーなものが見やすいのですが、手持ちの関係からアクリル部分はグリーンが濃いものを使っています。200μA程度の一般的な特性です。逆に言えば、クリアーなものであればトランシーバなどに使い、ちょっと見難いものでもこのような測定ツールには充分という考えです。昨年のハムフェアで仕入れたものと思います。メータを固定するため、エポキシ系の接着剤で固定したのが写真12です。

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写真8. パネル面に文字を印刷したシールを貼ったところです。

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写真9. こちらが表側で、穴はカッターで切りました。

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写真10. ラジケータの目盛は何でも良いのですが、一応こだわりを持ってコールサインを入れています。目盛自体にはあまり意味はありません。

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写真11. これをグリーンのラジケータに貼ります。

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写真12. ラジケータとポリバリコンを取り付けて、エポキシ系の接着剤が固まるのを待っています。

主な部品の位置を決めて半田付けして行きます。クリスタルオシレータとコイルが大きい部品ですので、優先的に位置を決めます。そしてグランドの銅テープにアースを取って行きます。写真13が回路を作成した状態です。このくらいの回路ですので、プリント基板で作るよりもずっと早く工作ができます。写真14のような状態になりましたら、まだ目盛はありませんが一応動作が可能となります。

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写真13. 回路の組み立てはすぐに終わります。

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写真14. これで本体は完成です。

4.校正

測定器、と言うほどのものではありませんが、一応は測定用ツールですから、校正が必要です。校正というより、目盛作りとした方が適当かもしれません。

コンデンサの容量から計算してインダクタンスの値を求める事もできます。他のインダクタンスメータを基準として作る事もできます。市販のマイクロインダクターを基準にする事もできます。私は全ての方法で行いましたが、最終的にはエイヤッの世界になりました。

写真15がポストイットを貼り付けて、メモを作っているところです。パネル面と目盛は別に作るという方法としました。このようにしないと、実際の配線での目盛が作成できません。誤差を少なくしようとした苦肉の策です。図2が作成した目盛りになります。FCZコイルの可変幅を記入してみました。インダクタンスの絶対値よりも、実はこの方が役に立つかもしれません。カラーの部分がFCZコイルの可変できる幅になります。これが結構役に立ちそうです。

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写真15. 目盛用のメモをポストイットで作りました。早い話が位置確認をしているところです。

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図2. 目盛はワードで作成し、JPGにした後でワードに貼り付けて大きさの調整をしました。(※クリックすると画像が拡大します。)

インダクタンスの値が小さくなるほど、ちょっとしたワイヤーの影響が気になってきます。その点を充分に考えて、可能な方法を動員して多角的に校正できれば良いと思います。当然誤差もありますし、それほど正しいとは思えません。このLメータの精度としては、その程度と考えた方が良いのですが、それでもあると無いとでは大きな違いとなります。

校正の方法は一つではありませんので、可能な方法をたくさん駆使して、信頼できそうな方法を探せば良いのです。工夫次第です。

5.終わりに

このようなLメータは、あるととても便利なものです。インダクタンスを測る難しさはありますが、目安だけでも解ると大変便利なものです。これだけでは不便ですので、次々回あたりには5〜30μHのLメータを紹介したいと思います。