エレクトロニクス工作室
No.50 AD9851テストボード
1.はじめに
最近ではAD9851を使ったDDSの自作について、製作例も増えてきました。基板の入手も容易です。私もDDSを使ったSGの記事をCQ誌に書きました。しかし、SGも一台では不便です。そのためもSGに使用する事ができ、その他にも様々な発展をさせる事ができる、写真1のような多目的の実験用ボードを紹介します。
写真1. このようなDDSの実験用ボードです。
基本的には、DDSユニットとCPUを接続し、ロータリーエンコーダで制御するだけのものです。しかし、このままでも簡易的なSGになりますし、トランシーバなどに発展させるためのソフト開発やハードの開発に便利なものです。DDSの作成で一番面白いのは、実はソフトの開発です。そこで、このようなボードを作り、自分の使い方に合わせてソフトを細かくチューニングする事が、このボードの目的の一つになります。
2. 回路
図1と図2に回路を示します。図1はDDSの回路です。これはテクノラボの基板を使用していますので、図1の回路は基本的にはテクノラボの基板の回路です。入手し難い部品は置き換えたり、ソフトによって使わない機能もありますので、若干の相違があります。オリジナルの回路はテクノラボのHPを参考にして下さい。入手もこちらで可能です。部品を集めたりするのは大変ですが、秋月電子のDDSキットよりも安価で性能が良いものができます。
図1. DDS基板の回路です。(※クリックすると画像が拡大します。)
図2. ボードとしての回路です。(※クリックすると画像が拡大します。)
図2は制御回路として、AT90S2313を用いた部分です。この回路はPICでもH8でも、使いたいCPUに置き換えて下さい。もちろん、ピン接続も使いやすい方法にして下さい。図1が良い見本ではありませんし、今後の発展を見越して作っておくのが良いと思います。もっとも先が見越せずに、修正に次ぐ修正を重ねている私ですが・・。
基準には32MHzの発振器を用いています。スペック的には30MHz×6の180MHzが限度なのですが、実験したところ多少のオーバークロックは可能でしたので、なるべく高い周波数に設定しています。試したところ、42MHzでは周波数によって使えなくなってしまう事があります。下げて来ると使えない周波数が少なくなり、35MHzで大丈夫という感覚でした。そこで、若干の余裕を見て32MHzとしました。
また、なるべくなら6倍モードを使わない方が良いので、200MHz程度の発振器が入手できればその方が良いと思います。ところが、探しても適当なものは見つかりません。簡単に動作させるには、どうしても6倍モードを使う事になってしまいます。今後は工夫する必要がありそうです。
3.製作
一番入手のネックになるのがDDSのICと基板かと思います。DDSのAD9851BRSは、インターネットで検索すると扱っているところが解ります。基板は前述のテクノラボで入手しました。
写真2は基板上にレイアウトをして部品の取り付けを行ったところです。写真3は部品の仮付けをし、様子を考えているところです。このときの裏面が写真4です。写真5は仮配線を行ってみたところです。このままではショートの危険もありますので、写真6のようにアルミ板の加工をして台としました。
写真2. 基板の穴アケをしている最中です。
写真3. このように載せ、イメージを確認します。
写真4. 裏側の様子です。銅のテープはアース面で、一応DDS基板の下側にベタに貼っています。
写真5. この状態で動作チェックします。
写真6. 固定用アルミ板の穴アケをします。
田舎に住んでいますと、部品の入手には悩みますので、写真7のように一度作っておいて、最終的には若干の修正をしています。これも、一応は効率良く自作するための、手順になります。部品はまとめて買出しに秋葉原に行きますが、全てを一度に済ませる事は困難でしょう。ゼロプレッシャー式のICソケットと電池ボックスは後から取り付けました。写真8が後で写したICソケットです。
写真7. 一応完成しました。
写真8. 後から入手したゼロプレッシャーソケットをICソケットの上から載せました。
製作上で一番のネックになるのはICのハンダ付けでしょう。このICはDIPでなく写真9のような28ピンのSSOPパッケージです。表面実装タイプですので、慣れないとちょっと大変です。しかしこの手のICはこれが普通ですし、殻を破らないと先には進めません。決して難しいものではありません。
写真9. 使用したAD9851BRSです。
まず、端の一箇所を仮ハンダで止めます。位置合わせの感覚で止めて下さい。ピンの位置がピッタリするまで修正します。納得できたなら反対側もちょっと止めます。これで位置が合いました。次にICに位置がズレないように、全部のピンにざっとハンダを流します。この時にショートを気にしてはいけません。むしろショートさせる感覚でたっぷりとハンダを流し込みます。最後にソルダーウィックを使って余分なハンダを吸い取ります。ルーペを使ってショートが残っていないか確認します。ハンダを吸い取ってしまうと、基板とピン間のハンダまで無くなりそうですが、今まで何回行っても大丈夫でした。写真10のように、何枚かバージョンを変えて作っていますが、一枚だけハンダブリッジで悩まされました。それでも全て問題なく動作するようになっています。
写真10. 基板はこのように試作しました。全部このボードで動作試験をしました。
4.調整
高周波的な調整はありません。しかし、発振周波数を測定し、ソフトで微調整する必要があります。ソフト的には基準に32MHzの発振器を用いて6倍モードで使うようになっています。このなかで、4分の1の周波数を書き込んで発振周波数を合わせるようになっていますので、48MHzが設定値となります。実際に発振させると誤差がありますので、その補正をする必要があります。これは簡単に書き込む事ができます。
5.ソフト
楽しいソフトの開発ですから、不得手と仰らずにチャレンジして下さい。と言う私も相変わらずアセンブラばかりで進歩がないのですが・・。ソフトができれば、トランシーバにしたりSGにしたり、思いのままに作り分ける事ができます。その第一歩がこのボートというつもりです。
光学式とメカニカル式のロータリーエンコーダを用いましたので、両方を使って周波数を変える事ができます。トランシーバの開発等でスイッチを使いたい場合には、No.2で作ったボードと組み合わせれば良いと思います。
なお、このソフトのソースとヘキサコードを置いておきますので、参考にして下さい。
6.使用感
こんなボードですが、簡易的なSGとしても充分に使う事ができます。出力は-8dBmと少々低いのですが、簡易型としては充分です。また、レベルの変動も若干はあります。
ソフト開発をしていて、思ったとおりにDDSを動かせるのは、何とも言えない快感でもあります。私が動かせるのはDDSだけ、という事もあるのでしょうけど・・
これを使って、DDSの開発が進みそうです。まずはゼネカバ受信機のソフト、そしてオールバンドトランシーバのソフトと、どんどん世界が広がって行きます。