エレクトロニクス工作室
No.51 Planet40
1.はじめに
写真1のようなサイテックのキットで7MHzのSSB受信機、Planet40を作成しましたので紹介します。Planet40は受信機のキットで、局発は別に用意する必要があります。VXOでもDDSでも良いのですが、レベルが+7〜10dBmで、周波数が16〜16.1MHzであれば何でも構いません。もちろん、安定度とスプリアスが少ない事も重要になります。ここでは、サイテックのキットで、PLL-VFOを使っています。PLLとVXOを組み合わせているキットです。ドリフト防止機能の付いた、AFC-VFOを使っても面白いと思います。
Planet40のキットは、基板にトランジスタやCRの部品が思い切り並んでいます。やたらとICを使った設計では、ICの入手が不可能となった時点でキットの寿命が終わってしまいます。このPlanet40は、何時になっても通用する部品を使っていますので、恐らく10年後に部品を集める事も可能でしょう。当然ですが、部品はやたらと多くなりますので、それなりの覚悟でハンダ付けする必要があります。キットも様々な設計思想があるものだと感心しました。
写真1.このような7MHzの受信機です。
2. 回路
図1にPlanet40の回路を示します。入力にマイクロインダクターを用いた鋭いフィルターを使っています。この部分をスミスチャートのソフトを使って解析してみると図2のような特性となりました。なかなかの特性です。7MHz付近を拡大すると図3のようになりました。当然部品には誤差がありますので、ピッタリこのようにはなりません。多少の誤差によるロスがあっても気にせず、後のアンプでカバーするという思想で作られています。
図1.Planet40の回路です。
図2.入力フィルターの計算上の特性です。
図3.更に7MHz付近を拡大したところです。
IFアンプにも調整するコイルが一個しかありません。これも多少のズレは気にしない無調整の発想からです。それで感度は別に悪い事もありません。IFアンプにはフォワードAGC用のトランジスタを使用しています。ここは一般的な2SC1815等に置き換える事はできません。
図4はPLL-VFOキットの回路です。PLLを使用して16〜16.1MHzを発振させるキットです。この部分に関しては、AFC-VFOキットを使う方法もありますし、VXOを自作する方法もあります。また、秋月電子のDDSを使っても大丈夫です。入力のレベルを合わせるアンプ等は考慮しておく必要があります。
図4.PLL-VFOキットの回路です。
3.製作
写真2がPlanet40のキットの様子です。このように沢山の部品が入っています。写真3が基板の様子です。このように部品数の多い、手応えのあるキットです。急いでも仕方ありませんので、少しずつ地道にハンダ付けして行きます。写真4が途中の様子です。ハンダ付けは全く苦にならない私ですが、指先はちょっと熱くなってしまいました。慣れないと拷問かもしれません・・。写真5が全部の部品を取り付け、単体での動作を確認しているところです。
写真2.Planet40のキットの様子です。
写真3.このような基板です。
写真4.部品を取り付けている最中の様子です。
写真5.基板単体の状態で動作チェックします。
次に写真6がPLL-VFOのキットの様子です。これは部品がそれ程多くありません。トリファイラコイルを巻く必要がありますので、説明書に従って巻きます。写真7は基板が完成し、単体での動作を確認している様子です。
写真6.PLL-VFOのキットの様子です。
写真7.同じように単体でのチェックを行います。
さて、ここで一度動作チェックをする事としました。ケースに入れてからでは大変だからです。ざっと動作がわかれば良いので、写真8のようにVR類も直付けで全体の接続をしました。既に単体での確認はできていますので、PLLと受信機の再調整を行い、一発で動作が確認できました。
写真8.基板間の接続も行い、全体での動作を確認します。
次にケースの選定を行います。ケースにはタカチのCU-14を用いてみました。写真9のように穴アケを行っています。普通は内部の配置と前面パネルを同時に決めていますが、内部の配置が微妙に思えたため前面パネルの穴あけを行い、その後から内部に基板が入るように位置決めをしました。それでも若干のドジをしてしまいました。上からフタを被せようとすると、フタの補強用のLアングルが基板を固定するカラーと接触してしまいました。仕方なくLアングルをちょっと削っています。という事もあり、理想の配置には程遠い感じになってしまいました。
写真9.ケースに穴アケをした様子です。あんまり上手でない感じになってしまいました。
スピーカは写真10のようにゴム系の接着剤G17を用いて固定しました。ネジ止めをサボっただけとも言えます。
写真10.スピーカ固定の様子です。
Sメータは、元VU目盛のラジケータです。メータの目盛作成用ソフトを購入して使ってみました。今まではワードで地道に作っていましたが、専用のソフトを使うと楽に綺麗に作る事ができます。USAのTonne SoftwareからMETERというソフトを購入して使っています。写真11のように綺麗に作成できました。くすんで見えるのは、アクリルの汚れです。発展性がありますので、ワードで作るよりずっと良さそうです。
写真11.専用ソフトを使ってメータの目盛を作成しました。
4.調整
調整はPLLの発振周波数と、受信部のコイル一箇所になります。既にざっと調整していましたので、簡単に済みました。AGCとSメータの調整だけです。
PLL-VFOの方が面倒です。と言っても簡単です。PLLがあロックして正常に受信できる事を確認しながら、ロックする範囲を確認するだけです。但し、補間するVXOは10kHzをカバーせず、ちょっと狭かったのでVXOにLを追加しました。
簡単な調整でも、時間をかけてジックリと行いましょう。少なくとも慌てる必要はありません。
5.使用感
PLLですので10kHzステップはデジタル感覚で合わせるのですが、10kHzの間はVXOです。アナログとデジタルの感覚が混ざった、妙な感じのチューニングですがすぐに慣れます。慣れるとこれは結構面白い感じです。もちろん、連続的に動かす事はできませんので不便なのですが、思った程の違和感はありませんでした。
フィルターがSSB用の帯域ですのでCWはちょっと厳しいと思います。SSBはバッチリと快適に受信できます。