エレクトロニクス工作室
No.56 ラジオくん
1.はじめに
このBEACONの記事も、ずいぶんと長期間になってきました。振り返ってみると、自作初心者の方に対するものがほとんど無い事に気が付きました。CQ誌やかつてのMH誌のような総合誌も同じでしょうけど、入門用からベテラン用の幅広い記事があるからこそ、全体が生きてくるものと思います。昔の「ラジオの製作」や「初歩のラジオ」もそうでした。
そこで今回は自作入門用という事で、写真1のようなAMラジオのキット「ラジオくん」を紹介します。ケースやネジ等の部品を別に集める必要がない完全キットで、エレキットのものです。
写真1. このようなAMラジオです。
2.ラジオくんについて
ラジオくんにはAMのキットとFMのキットがあります。今回は、とりあえずAMのキットを作ってみました。型番はTK-728で、定価は1995円となっていますが、秋葉原あたりでは、もう少し安く入手できます。また機会があれば、FMのキットも作ってみたいとは思っています。
写真2のようなキットで、極めて細かい取り扱い説明書が入っています。用意するものは、ハンダごて、ニッパ、ドライバー等のような工具だけです。部品も写真3のように纏められてきますので、何の心配もなく作る事ができるようになっています。私が能書きを書くよりもずっと上手に説明されていますので、安心してチャレンジできるものと思います。電子部品は一覧になっていますので、迷う事なく取り付けができると思います。ただ、ネジは分けられていませんので、サラビスM2.6×4だけで解るのかはちょっと疑問です。
写真2. 梱包されたキットの「らじおくん」です。
写真3. 電子部品は紙に貼られていますので、安心でしょう。
さてこのラジオくんはICを2個使ったラジオで、図1のような構成です。このようなラジオをストレートラジオと呼びます。分離が悪い、感度が悪い等の欠点はありますが、簡単であるため教材用には良く使われます。
図1. ストレートラジオの構成です。(※クリックすると画像が拡大します。)
これに対し、図2のような構成がスーパーヘテロダイン(略してスーパー)と呼ばれ、分離や感度等で有利になります。しかし構造が複雑になってくる事と、調整が必要となるため初心者向けでは無くなります。普通に売られているラジオは、ほぼ間違いなくこのスーパーヘテロダイン方式になっています。
図2. スーパーへテロダインの構成です。(※クリックすると画像が拡大します。)
なお、ここで使われているLA1800は、AM/FMラジオ用のICです。そのAMラジオ用の部分のみを使っています。ここで何でストレートラジオ?と思ってデータシートを見ると、外付けで周波数変換部を付けるように書いてありました。つまりこのICのIF部分だけを使い、ストレートラジオにしている事に気が付きました。FMが主目的のようなICですので、機能の1/4程度しか使ってない事になります。また、ストレートラジオにはAGCは付けないのが普通ですが、IC内部でAGCが効いているように見えます。
3.作成
説明書に従い、まずは抵抗から取り付けました。なお、ハンダこては18〜23W位が適当かと思います。こて先はこて台付属のスポンジを濡らすか、濡れた雑巾を用意します。使う直前にはこて先を拭くようにし、常に光沢のある状態で使います。ハンダ付けは写真4のようにツヤのある、富士山のような山ができればOKです。コツとしては、基板にコテ先をあてて、充分に暖めてからハンダを流し込みます。流し込んだら、サッとコテを離します。この呼吸は、やはり慣れが必要となってきます。このあたりはキット付属の小冊子「はんだ付けトラの巻き」に詳しく書いてあります。写真5がICまで取り付けたところです。そのハンダ面が写真6です。ポリバリコンは写真7のように、あらかじめ基板にハンダを付けておきますと、楽にハンダ付けができます。
写真4. ハンダ付けは富士山のような形にします。この後で不要な線はニッパで切ります。
写真5. 抵抗とICまで取り付けたところです。
写真6. 抵抗とICまで取り付けたハンダ面です。
写真7. ポリバリコンなどは、あらかじめハンダを乗せて置きます。
説明書には書いてない事ですが、ポリバリコンやボリュームは、ダイヤルを押さえてネジを回すようにします。回し過ぎた時に、部品を壊さないようにするためです。電池ボックスの固定方法にはちょっと問題がありそうです。写真8のようにヤスリで少し穴を広げないと、ネジが入りませんでした。また、少しネジを回すと写真9のように電池ボックスにスペーサーが食い込んでしまい、水平に固定できません。仕方なしに写真10のように平ワッシャーを追加しました。このあたりは、少し部品を吟味し直した方が良いようにも思います。スピーカには+と-がありますが、基板との接続については説明がありません。実際はどちらでも構わないのですが、何らかの説明がないと迷ってしまうのではないでしょうか。
写真8. ネジが入らない! で、ヤスリで少々加工をしました。
写真9. 電池ボックスのもう一方側ですが、スペーサーが食い込んでしまいました。
写真10.手持ちの平ワッシャーをこのように入れてしまいました。
ゆっくりと組み立てても、数時間もあれば充分かと思います。部品の取り付けが終わったら、良くチェックしましょう。部品の間違いは無いか。方向の間違いはないか。ハンダ不良はないか。時間をかけて充分にチェックします。
チェックが大丈夫なら電池を入れます。写真11がその様子です。スイッチを入れると、サーっとノイズが聞こえてくるはずです。そしてチューニングを回すと、何局が放送が聞こえて来るでしょう。ストレートラジオなので調整はありません。これで完成です。後はお好きな番組を聴くだけです。
写真11.これで完成です。
4.終わりに
このようなラジオをたまに紹介するのも良いかと思います。私の住む那須塩原市は、関東の北辺にあり、決して電界強度は強くありません。それでも何局かは強力に受信する事ができました。何回作っても、ラジオから音が聞こえて来る時はうれしいものです。このような経験はしてみないと解りません。
このようなラジオのキットは貴重な存在です。最近ではエレキットもメカものが主流になっているように思います。並大抵の苦労ではないでしょうけど、このようなラジオについてもロングセラーを続けるよう、お願いしたいです。