エレクトロニクス工作室
No.57 電子音叉
1.はじめに
今回は無線をちょっと離れ、エレクトロニクスの作品を紹介します。CPUで動かす写真1のような電子音叉です。ギターやオカリナのチューニングには音叉を用います。最近では楽器店で電子音叉や電子メトロノームを売っていますので、これを買えば良いのですが、そこはそれ。こんなのは作れる、で作ってしまった電子音叉です。
写真1. ギターやオカリナの音合わせに使う「電子音叉」です。
2.回路
図1に回路図を示します。単なるAFの発振器とは言え、音階どおりの周波数を正しく発振させる必要があります。このような発振器の場合、DDSを使っても作れますが、あまりにコストがかかり過ぎます。そこで、No.23でも紹介しましたが、CPUに8ビットのD/Aコンバータを繋げてソフトで発振させる方法としました。D/Aコンバータは12kΩと24kΩの抵抗を使っています。この値である必要がありませんが、2倍の値を使う必要があります。出力は1MΩを通して10kΩのVRで受けるようにしています。これで歪的にも音量的にも全く問題ありません。
図1. 回路図です。(※クリックすると画像が拡大します。)
それをAFアンプで音をスピーカから鳴らせます。これなら部品代は数百円程度で、1000円札でおつりが来るでしょう。D/Aコンバータに8ビットを使うと周波数の微調整が難しくなるのですが、それは仕方なしとしました。
ロータリー式のDIPスイッチでソフト上のループを変える事で音程も変えています。4ビットですので0〜Fの16ステップまでは可能なはずですが、使ったスイッチは10ステップでした。そこで、ド〜ドレミまでの10音階としています。また、このスイッチには内部にプルダウン用の抵抗が入っていました。これはスイッチがオープンとショートではなく、Hレベルの時に kΩでアースされるため、このままではHレベル時の電圧が全く上がりません。結果としてHレベルと認識できず、常にLレベルとなってしまいました。Hレベルの電圧を考えると、もう少し小さい値でも良いと思います。普通のディップスイッチなら不要なものです。
3.作成
ずいぶん前に購入したモービル用のスピーカをケースに用いました。要はスピーカボックスの中に基板を入れただけの構造です。電池には006Pを用い、裏側に電池ボックスを設けました。最近なら、パソコン用のスピーカ等を転用する方法が良いかと思います。
基板はジャノメ基板をカットし、写真2のように作成しました。部品側は写真3のようになります。LM386のアンプは、VR一体型のアンプを使っています。これは可変抵抗の3端子にアンプの基板を直接ハンダ付けしてしまおうというアイデアで、写真4のようなものです。ずいぶん前ですが、モービルハム誌90年8月号に記事を書きましたので参考にして下さい。基板が残っているため使っただけですので、ジャノメ基板の中に入れてしまっても何ら問題はありません。この時の記事で、「今後10年間使えるようにLM386を使った・・」と書きました。しかし、20年経っても使っている事に気が付き、思わず笑ってしまいました。この記事の頃でもポピュラーなICでしたから、相当に息の長いICと言えるでしょう。このような基板を使ってみたい方は、サイテックで似たような基板が入手可能です。
写真2. 内部の基板はこのように作っています。
写真3. 部品側になります。
写真4. VRに基板を付けた「VR一体型アンプ」です。
内部は写真5のようになっています。CPUの基板はケースに固定せず、ロータリー式のDIPスイッチとの配線でケースにぶら下がっています。多少は振動で揺れが生じても問題が起きないように、抵抗等の部品はプラスチックに部分しか接触しないように気を使って実装しています。
写真5. 内部の様子です。
006Pはケース内に入れず、写真6のように電池ホルダーを使って外付けにしています。この方が便利ですし、気が付いたら液漏れという不始末も減る事と思います。
写真6. 電池ホルダーはこのように外付けにしました。
4.調整
10MHzのTCXOを使っていますので、同じ周波数なら調整は不要です。調整は周波数カウンタを接続して測りながら、一音ずつソフトのループ数や「NOP」の数を調整して合わせました。この様子が写真7で、ゼロプレッシャーソケットを仮に使っています。もちろん、ソフト上の1ステップにかかる時間から計算し、ソフトを組むのが正道です。私の場合は横着な方法をしているだけです。その結果、表1のような音階となりました。仕上げに写真8のようなシールを貼っています。
なお、ソフトはここにソースを置きます。
写真7. ソフトの調整をしているところです。
表1. このような音階になりました。理論的な事は??ですので・・
写真8. 仕上げに音程のシールを貼っています。
5.使用感
発振周波数も、オカリナの先生の音叉と全く変わらない音程です。しかし、実は0.1Hz単位でズレているところもあり、ソフトでは追い込めない部分です。最初は、D/Aコンバータに4ビットを使っていましたが、あまりに歪みが多いので8ビットにしました。目的からしても、周波数にこだわるべきですが、歪みで使い難いのでは仕方ありません。高い周波数の場合だけ、正弦波1サイクルのステップ数を半分程度に減らすという方法もあると思います。周波数カウンタの精度に比較すると人間の感覚は遥かにアバウトですが、可能な限り誤差は少なくしたいものです。
水晶つまり「クォーツ」を、コンピュータチップで制御して・・云々だけで感心してくれます。ついでにメトロノームも、とこき使われていますが・・