1.はじめに

 今年のハムフェアも8月22日、23日の両日に東京ビッグサイトで行われました。私も2日間皆勤し、新製品の動向を感じとったり、各々の方々へ年に一回の御挨拶を行って来ました。もちろん、部品やキットの調達、技術情報等々・・数え切れない位の成果がありました。その中で、写真1のようなデジタルテスターのキットを見つけ、作ってみましたので紹介します。品番M-1006Kの中国製のものです。

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写真1. このような小型のデジタルテスターです。

 ハムフェアの会場で購入する時に確認しましたが、NPOのラジオ少年のホームページからでも購入する事ができます。キットは800円ですが、送料が500円かかりますので、他に何か購入したついでの方が良いようにも思います。800円のキットですので、「簡単なキット」というイメージになるかと思います。私も、今度のテーマは「簡単なキット」かな、と実は思っていました。ところがキットを開けてみてビックリ。WEBでは中学生以上となっている理由が解りました。800円にしては、手ごたえのあるキットです。

2.このキットについて

 最近ではデジタルテスターも安くなり、アナログの方が高いのではと思います。デジタルとアナログでは使い方で向き不向きもあるでしょうが、電子工作をするのであれば、どちらも一台はあると便利です。最近ではデジタルテスターも数台を使い分けるかと思いますので、2台目や3台目に使うためもあって購入したものです。

 写真2のような小型の段ボール箱に入っているキットで、説明書もしっかりと作られています。日本語がちょっと怪しい感じですので、中国製とすぐに解ってしまいます。写真3のようにCR類は分けられ、写真4のように値も表示してあります。これならカラーコードが苦手の方でも安心でしょう。

 写真5のように詳しい原理の解説付きで回路図も載っていますし、トラブル対処や調整方法までが説明されています。トラブル対処はあまり役には立たないと思いましたが、この姿勢は見習うべきと思いました。

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写真2.キットは段ボール箱に入っています。

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写真3. キットの部品です。

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写真4. 抵抗類は見事に分けられています。

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写真5. コピーですがマニュアルもしっかりしています。

3.作成

 作成前の基板が写真6になります。ロータリースイッチの接点側になるのが写真7です。しっかりとした基板ですので、安心してハンダ付けができます。テスターですので、分圧、分流用の抵抗をたくさん使用します。普通のE6系列などでは入手のできない特殊な値を使います。基板上にコンデンサと抵抗をハンダ付けするところから始まります。コンデンサが6個、抵抗が23個ありますので、イメージよりも手ごたえがありました。CR類のハンダ付けが終わったところが写真8です。全てのハンダ付けが終わった状態が写真9になります。

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写真6. 部品取り付け前の基板です。

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写真7. ロータリースイッチの接点側です。

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写真8. CR類を全てハンダ付けしたところです。

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写真9. ヒューズや電源のスナップもハンダ付けします。

 ロータリースイッチ付近は良く解らない機構部品でした。説明書のとおりにグリスを塗ってスプリングを入れてベアリングをセットしますが、どうしてカチカチとスイッチになるのか・・?。また「へ」の字型のバネを6個セットしますが、細かい作業で慣れないと、とても入れ難いものでした。バネですので途中で一個飛ばしてしまい、探すのに苦労しました。慣れると入れられるようになります。

 動作を確認すると、一番下の桁の上側セグメント(LEDでいうa)が表示しません。基板とLCDを接続するジブラでズレか接触不良があると思い、一度開けてセットし直すと表示するようになりました。写真10で薄いピンクに見える部分がジブラで、ゴムにしか見えませんが単なるゴムではありません。基板とLCD間を接続するコネクタになります。

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写真10. 白く見えるのがLCDの裏側で、ピンクのがジブラです。

 仕上げに文字盤を貼り付けます。表面が保護用のビニールで覆われていますので剥がします。写真11は文字盤を貼る前で、何かパッとしません。しかし、完成は写真12のように立派なものになりました。市販の完成品と比べても、何ら遜色はありません。

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写真11. 動作したところです。

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写真12.文字盤を貼って完成です。

4.調整

 説明書には調整方法が書かれています。DC20Vレンジにして他のテスターと比較する方法です。半固定VRを回して同じ電圧表示になるようにします。これは簡単です。

 もう一つは10Aレンジの調整です。ある程度の電源と負荷抵抗がないと調整できません。また、調整にはマンガン銅線抵抗のハンダ付けで調整しますので、結構大変な作業になります。私はNo.28で紹介しました「電源用ダミーロード」を使って調整しました。

5.使用感

 デジタルテスターは誤差が少ないのがあたりまえ、使いやすいかどうかで3台目のつもりが1台目に昇格したりします。その点では使いやすさも申し分ありませんでした。全体的な印象として、良く練られています。ケースなどの誤差など感じませんし、安っぽい部品や作りではありません。中国恐るべし・・です。

 安いテスターですので、もう一台買っておいて何かの測定器の分圧、分流器の抵抗収集用に使おうかとも思ってしまいました。もちろん、そんな無駄な事はしませんけど・・。このようなテスターなら、キットでなくても完成品で同じような値段で入手する事はできます。しかし、作る楽しさが(大変さも)たくさん詰まっているキットです。