エレクトロニクス工作室
No.65 袴をはいた「あゆ40」
1.はじめに
CQ誌2009年7月号の付録に7MHzのCW送信機の基板がありました。作られた方も沢山おられる事かと思います。この基板で手持ちの部品を使って、外観的には写真1のように平凡な感じにまとめてみました。
受信機にはIC703を用いる前提で考えてみましたが、もちろんどのような受信機でも大丈夫です。
写真1. このようにまとめた、「あゆ40」です。
2.部品
普通は回路の説明からなのですが、既に知られた回路として、まずは部品探しから始めます。2SC1815を使うつもりでトランジスタのパーツボックスを開けたところ、何となく2SC372が「使ってくれ〜」と言っているような気がしました。同じようなものですし、そのまま使う事としました。そして2SA・・はと思い、袴をはいた同じタイプの2SA495を使う事にしました。つまり写真2のようなトランジスタの「あゆ40」というという事になりました。もちろん、同じようなトランジスタなら使用可能ですので、手持ちの部品をどんどん使えば良いでしょう。もちろん、近年では部品も入手難ですから、マルツで一式揃えてしまうのが一番良いのかもしれません。
写真2. 左側が2SC1815と2SA1015で、右側が2SC372と2SA495です。
自作をした年代にもよると思いますが、2SC372というのは結構思い入れのあるトランジスタです。この後に2SC945に移り、今では2SC1815となっていますが、いずれもパーツボックスには残っています。ちなみに2SC458はあまり使っていませんでした。
LPFは少しだけ値を変えました。チェビシェフ型として、高調波をカットしやすくしています。1.2μHのチップ型のインダクタを用いました。これは1個10円程度でいろいろな値が入手できますので、QRPのトランシーバや送信機にはこの方が安くて良いかと思います。チップだと小型で高周波的には良いかと思いますが、Qは低いと思います。LPFにしたとき、トータル的な性能がどうなるのか今後確かめてみたいと思いますが、今回は間に合いませんでした。なお、電流的には mAですので、1W発射時にショート状態になっても十分に耐えられる計算にはなります。680pFも手持ちの関係でチップ部品にしてしまいました。基板の裏面にハンダ付けし、写真3のようなLPFになりました。
写真3. 基板裏面のLPFです。
また、OSC段のコイルには470μHのコイルを用いました。これもチップで十分と思いますが、これは手持ちにありませんでした。そこで割りと大型のマイクロインダクタを使いましたが、この位の値なら大体使えるかと思います。
ファイナル出力のバイファイラ巻きのトランスは、写真4のようなフィルタ用と思われるコイルを流用しました。最近は良く使う部品で、数年前のハムフェアで入手したものです。当時は使い道の無い「猫またぎ」的な部品かと思いましたが、このようなバイファイラ巻き、1:1のトランスなどに、便利に使っています。
写真4. バイファイラ巻きのトランスはノイズフィルタ用?のジャンクを流用しました。
抵抗類は全て1/6Wの手持ちを使っています。ダミー用の抵抗を必要とするのであれば、もう少し大きい方が良いでしょう。コンデンサ類はLPFを除いてセラミックです。
水晶は昨年のハムフェアの時にラジオ少年で購入した写真5の7005,7010,7015の3個を使う事とし、固定にしては寂しいので丸ピンのICソケットを分解して写真6のように水晶用のソケットを作成しました。水晶のリード線を少し短くすると、写真7のようにソケットにピッタリと収まります。
写真5. 使用予定の水晶3個です。
写真6. ICソケットを分解して作った水晶用のソケットです。
写真7. このように見事に収まります。
3.回路
基本的に回路はCQ誌を見て頂ければ良いのですが、スタンバイ回路が結構複雑で解り難くなっています。電源に電池を使う場合は、アンテナの切り替えにトグルスイッチを使えば良いのですが、どうも基板的にはすっきりしません。そこで何とかしようと考えました。
元の回路はフルブレークインを使う場合には、CALスイッチが使えない回路になっています。リレーは使わずにトグルスイッチで切り替える事も考えました。リレーでアンテナだけ切り替えて、フルブレークインはやめる方向で進んでいました。しかしこの場合、TX-ONにしないでKEYに触れたとき、アンテナが切り替わらないのに送信してしまうということになります。このような不始末だけは避けたいところです。そこで図1のように、ダイオードでバイパスしてリレーを動かす事にしました。つまりフルブレークインになります。従って、TX-ONを操作すると手動切り替えとなりますが、TX-ONしない場合はフルブレークインになるという2段構えとなりました。
図1. 元はCQ誌の回路ですが、このようにまとめました。(※クリックすると画像が拡大します。)
4.作成
部品が集まりましたら取り付けを始めます。この位の規模ですので、どこからでも同じです。ところが、私の場合はLPFにチップ部品を使ったため、どう考えてもここを先に取り付けるべきです。何を考えたのか最後にしてしまったため、傾いた銅箔の上に米粒を押さえ込む事になってしまいました。これは大失敗というより、大失態です。このようなドジをしなければ問題もなく、部品の取り付けはすぐに終了するでしょう。写真8が部品をハンダ付けしたところです。次に写真9のようにバラックで動作をチェックしました。
写真8. 基板が完成したところです。
写真9. まずはバラックのままで動作チェックをしました。
なお、図1は元の回路とは基本的に同じです。基板の端子名が一部でダブっていますので、間違えやすく解りにくくなっています。異なる端子ですので、回路を追って正しい端子を探す必要があります。
ケースにはタカチのYM-130を使用しました。決して小型化を狙わず、普通に押し込みました。なぜかと言うと、小型化を目指すなら基板をもっと小さく作る事は簡単だからです。ケースだけで小型化を考えるよりも、作りやすい相応のケースで作りました。それが基板のパターンを設計された方の思想かと思いますので、その考えどおりにゆったりとケースに入れています。写真10が穴あけを終わったところです。
写真10. ケースの穴アケをしたところです。
写真11が内部の様子です。KEYのジャックには大型のものを使っていますが、IC703と同じにしているからです。ここは使いやすいタイプにして下さい。
写真11. 内部の様子です。
5.使用感
まだまだ作ったばかりですので、これからです。
受信機への出力、つまりRX-ANT端子には保護用のダイオードに1N60を2個入れています。ふと思ったのですが、一番危険な事は、アンテナ端子とRX-ANT端子を間違えて繋いでしまう事でしょう。そうすると、一番高価な受信機のトップを壊す事も十分に考えられます。十分に注意する必要があります。逆にトランシーバを受信機として使うつもりで接続し、うっかりトランシーバから送信すると保護用ダイオードを壊す事になります。そのような意味では専用の簡単な受信機があると良いのかもしれません。このBEACONでも随分受信機を紹介しましたが、No.51,No.59,No.61などでも良いと思います。